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老いらくの恋?

ヨッシーは、ショッピングモールの

従業員エリアの会議室に居た


そこには、カナエとジジイとウメさんと

ちんかわむけぞうが居る


大きな長テーブルの椅子に座っているのは

スーツ姿のカナエと、釣り人風のヨッシー、

他の3人は立ったまま

目の前の巨大なモニターを見ていた。


ビーグル社製の会議ソフトを起動させていて、

巨大なモニターの中の分割ウィンドウに

大勢が映っている


その数あるウィンドウの中に、

マッシュルーム眼鏡の技術者が居た


分割ウィンドウの中の一つには、

例のボフォース船の写真が表示されているが、

それについて技術者が意見を述べた



「この、底引き網漁船に無理やり

 ボフォース砲を乗っけている奴なんだけど


 僕から言わせてもらうとコレはハッタリだね!


 通常、ああいう砲を装備している

 現代の軍艦ってのはね、

 高度な射撃統制システムってのを持っててさ。


 つまり、高性能なレーダーと

 高性能なコンピューターで、

 目標を探知して捕捉して追尾して分析して

 適切な使用火器を選んでっていう

 一連の動作を自動で行うんだ


 でも、見ての通り、この漁船に

 そんな高度なシステムなんて無いのは

 一目瞭然だ。


 多分、このボフォース砲は

 人力で照準を合わせて撃つんだと思うよ」



ジジイは、立ったまま腕を組んで壁に身体を

もたれかけていたが、

フンッと鼻を鳴らすと言った



「でもよ、ご立派な射撃統制システムとやらで

 制御されていようが、

 人力でえっちらおっちらと狙って撃とうがよ


 十数キロもの射程のある57ミリ砲弾を、

 一秒間に3発ぶち込めるって事には

 変わりねえだろ?

 

 そんだけの破壊力に対して島には

 一切、成すすべもないってのが問題なんだよ」



巨大モニターの中の

マッシュルーム眼鏡の技術者は、

そそくさと佇まいを正すと

人差し指で眼鏡の位置を直して言った



「うん、まあ....

 あなた方の置かれている状況に関しては

 僕もとても同情しているよ。

 

 でも、つまり、あなた方にとって

 最大の脅威であるボフォース砲は、

 射手である人間の目で捉えられるくらいに

 近くに寄らないと

 ”標的には正確に当てられない”可能性が

 大きい。


 それに多分、船体サイズ的に考えて、

 あの砲を連射してしまったら

 反動で船が大きく揺れてしまうだろう。

 だから、連射での射撃はほぼ不可能だと

 思われる。

 揺れが収まるまで待たないといけないからね

 

 要するに、ボフォース57ミリの

 表向きのスペックを

 十分には発揮できないんじゃないかな。

 

 つまり、船体サイズも適切で

 射撃統制システムを持っている軍艦だと

 100パーセント引き出せる性能も、

 それを無理やり積んだ漁船だと

 発揮できないってこと!


 だから、そこに僕たちが付け入る隙が

 あると思うんだ。


 ....もしも、

 こちらから攻撃を仕掛けるとしたらね」



長身で、禿頭で、鋭い目付きで、白い髭に、

腕を組んで壁にもたれるジジイ


そんな姿を、ウメさんが熱っぽい目で見ている


ヨッシーは、そんなウメさんをちらりと

横目に見ながら思った



(もしかして、彼女が俺に取り入ったのって、

 ジジイが目当てだったんじゃねえのか?)



そういえば、初めて会った時に、

ジジイのことを”なかなかいい男”と

言っていたような気がする



(くっ、例えジジイがウメさんの

 ド直球だったとしてもだ、

 俺にもジジイの外見が遺伝しているから。


 特にこすからい鋭い目とか...


 だから将来、きっと

 ウメさんのお眼鏡に叶う男になれるはず....


 って、なんで俺はそんなことを

 考えているんだ!

 なんで俺はそんなことを考えているんだ!)



と、ちんかわむけぞうが発言した



「だから、こちらから攻撃を仕掛けるんだろ?

 たった今、俺達には心強い仲間が

 2人も加わった。


 まずは、ウメさん


 皆も良く知っての通り、十文字流の師範代で

 銃の腕もピカ一という

 まさに、戦闘マシーンだ

 

 そして、ウメさんのお眼鏡に叶ったこの少年


 そう、我らがヨッシー君だ!


 俺もウメさんも知っているが、

 彼は瞬時に決断が出来る男だ。

 そして何よりも、史上初めて

 俺達のリーダーに一発食らわした傑物だ。


 俺はこう見えて運命を信じる男でね、

 この二人がここに加わったのは、

 運命の導きだと思っているんだよ」



派手な原色のラインが入った白装束姿の

ちんかわむけぞう


ウメさんは、

テーブルの上に載った空の紙コップを掴むと、

それを、むけぞうに投げつけた。

そして、腕を組んで仁王立ちの姿勢で言った

 

 

「ちんかわ君、私はともかくとして

 ヨッシー君を焚きつけるのは辞めてね!


 彼には、危険なことは

 私が代わりに引き受けるって

 約束したんだから」



と、ジジイが壁から身を起こして

ウメさんのほうを向いて言った



「本当に、うちの孫が色々とすみません....

 

 でも、島の事は出来るだけ自分達の力で

 解決したいと思っています。

 色々と協力を願い出ている身で恐縮ですが、

 それでも、最後の勝負だけは

 自分達でやり遂げるつもりです!

 

 我が身はともかく、

 例え孫を危険に巻き込んだとしてもです。


 ....孫は、すでに覚悟が出来ておりますから、

 止めたとしても無理でしょう」


 

そう、ジジイもちんかわむけぞうも、すでに

諦めていた。


そして、白髪にセーターにジーンズ姿の

小柄な老婆であるウメさんはあたふたとした



「で、で、でも、小島総一郎さん...


 前途洋々たる若人を危険に晒すなんて、

 いけませんことよ....

 そのことについては、後でじっくりと

 二人だけでお話ししませんこと?

 

 ま、ましてやヨッシー君は、総一郎さんの

 大切なお孫さんでいらっしゃるのでしょう?

 先ほども申し上げた通り、私が彼の代わりに」



空気を読まないマッシュルーム眼鏡が発言する



「さて...攻撃する手段は?


 小島さんが提案されたという

 船での特攻作戦は、論外だと思うよ。

 

 相手はボフォース砲だけでなく、小銃でも

 武装しているし、

 当然ながら自分で動くことも出来るんだ。

 見晴らしのいい海上で、

 撃破される前に肉薄できるとは思えない


 大型ドローンを使った空爆は....

 いや、ドローンが撃ち落とされたら

 こちらは大ダメージだ


 うちで量産しているサブマシンガンは

 対人型用で、射程も威力も

 海賊たちの持つ軍用銃とは比較にならない

 ほど低い....


 AK74は、まだ数丁程度しか生産してないから、

 喪失する恐れのある任務には貸し出せない。

 宝堂さんのブローニングM2もそれは同じだ」



ちんかわむけぞうが、ポツリと呟いた



「そうだな、せめてこちらも、

 ”大砲”でも持っていればな....」



ヨッシーは、ハッとして、

むけぞうのほうを向いた。そして、言った



「大砲?....今、大砲とおっしゃいましたか?

 

 大砲...大砲...

 どこか、俺の心に引っかかるものがある」



唐突に発言したヨッシーを、

会議室に居る全員が注目する。

そして、

巨大モニターの分割ウィンドウに映る大勢も、

ヨッシーに注目したのだった





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