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十文字叶

ヨッシーから見て正面にあるドアから

入ってきたのは、

鞘に入った日本刀を抱えた大男だった。


なんと恐ろし気な風貌なのか...


スキンヘッドで所々に焼け焦げた跡があり、

さらに、その衣装は”作務衣”だった。

いわゆる、寺の坊さんが着る和風の作業着だ


ヨッシーは、異様ないで立ちと風貌な上に、

日本刀を抱えた大男を見て恐怖を感じていた



「ちょっ、ちょっ、まじ、ごめっ」



ソファーから立ち上がって

開いた両手を前に突き出して顔を背ける


と、ヨッシーの背後のドアからも

銃を持った二人の白装束が入ってきた。

ヘルメットを被り、フェイスマスクで顔を隠し、

ステンもどきのサブマシンガンを持った

筋骨隆々の二人の男だ


ヨッシーは前後をキョロキョロと伺いながら

情けない声を上げた



「ほんま、もう、やめましょーやー」



しかし、それでもすでに分かっていた。

本質は、恐ろし気な大男でも、筋骨隆々な

白装束たちでもない...


沈黙のまま立つ”厨房の女性”なのだ


リナとリサとスミレは、ソファーに座ったまま

身を寄せ合っている。


しかし、ジジイは違った



「まあ、そんな気はしていましたよ。

 あなたが、リバーサイド同盟の

 指導者なんですね」



ジジイは、ソファーに座ったまま長い脚を組み

目の前の柑橘ジュースの入ったコップを

手に取った


焼け焦げたスキンヘッドが、凄い形相で

こちらを睨んでいる。

その隣では、”リバーサイド同盟の指導者”が

静かに佇んでいた


しかし、ジジイは余裕の仕草で、

コップの柑橘ジュースをクイッと飲んだ。

そして、ふいに立ち上がると言った



「改めて自己紹介を致しましょう。

 私は小島総一郎と申します、

 島の代表の一人として参りました


 こちらは、孫の洋一と水麗、

 そしてあなたもご存じの通り、

 美月理奈と、理沙です」



そして、ついに指導者が名乗った



「お初にお目にかかります、私は十文字叶じゅうもんじかなえ

 このリバーサイド同盟を率いている者です


 あなた方がこちらへ来られた理由については

 むけぞうから大まかには聞いておりますが、

 これだけは申し上げておきましょう


 我々は、あなた方に対して協力を

 惜しまないつもりです。

 今後、”島”の方々が、我々と

 良き関係を築いてくださるのなら、是非とも

 共に外敵と戦いたく思っています」



カナエの声は、空気を切り裂くがごとく室内に

よく響いた。

ヨッシーはハッとした



(もしかして、アポを取ったときに

 対応してくれた女性の声では?)



ヨッシーを挟んで、カナエとジジイが

対面している


二人とも背が高く威風堂々たる風体だ。


カナエは、先端が内側に反ったブラウンの

ロングヘアに、ライトグリーンのトレーナーと

パステルのロングスカート。

ジジイは、禿げ頭に白い髭、

船乗り風の使い古されたロングコート。

そして、裾から覗く左手は3本指の義手だった


ジジイは、カナエに向けて深々と頭を下げた


しかし、カナエはニコリと笑って言った



「さて、その件については後ほど

 話し合いましょう...


 この者たちが乱入してしまって

 話が中断してしまいましたが、

 先ほどあなたがおっしゃったことを

 私は受け入れます

 

 私を一発殴ることで....」



と、スキンヘッドの大男が言った



「待ってくださいカナエお嬢、

 それはいけません!


 お嬢が殴られるなんて、

 そんなこと俺達が絶対に許しませんぜ」



カナエは、隣のスキンヘッドのほうを向いた



「いい、あなたたちは絶対に手を出さないで!

 私は自分が言ったことを簡単に

 取り消したりはしないわよ

 

 ....あ、彼の名はヤキタコ、私の従者なの」



自己紹介された”従者”ヤキタコは、それでも

ヨッシーとジジイのほうを凄い形相で

睨みつけている。

そして、二人の白装束たちもサブマシンガンを

持っている


すると、白装束が出てきたほうのドアの

奥のほうから、ちんかわむけぞうの声が言った



「おいおい、お客さんたちが困ってるだろ?

 本当にうちの指導者は、時々、

 エキセントリックなことをやらかすから

 困るぜ」



ヤレヤレ風に腕を組みながら応接室に

入ってくるむけぞう。

気が利く性格のむけぞうは、そそくさと

棚の上のラジオのほうへ向かうと、

ラジオの電源をポチっと切った


部屋が沈黙に包まれる....


黙ったまま対峙するカナエとジジイ


ふいに、

ソファーに座って縮こまっていたスミレが

手を上げて言った



「あの、中学生の私でも分かります!

 まあ、中学校に行ったことはないのですが

 

 それでも、こちらから助けを求めて訪れた

 組織のトップを殴るのは、非常識だと

 思います!」



ヤキタコも乗った



「ねっ、お嬢、そちらの中学生の子ですら

 そう思っているわけですし...


 大人気ないから辞めて下さいな」



カナエは腕を組むと、

眉を吊り上げた表情を作って、ヤキタコに

何かを言おうとした。

しかし、それより先に、

ジジイがこう言ったのだった



「いいでしょう、

 私も自分が言ってしまったことを

 簡単に取り下げるわけにはいきませんので


 許可を頂いたということで、十文字さん、

 あなたを一発殴らせて頂きます」



(ああ、マジかよジジイ...)



ヨッシーは苦悩に満ちた表情で俯いてしまった



////////////////////////////////////////



スミレとリナとリサは、ソファーに

座ったままだ。


応接室は相当に広く、

ソファーとテーブルがある場所の横に

都合よく広い空間があった


そして、そこに7人が居た


カナエの少し後ろにヤキタコが控えている。

そして、カナエと対峙するジジイ、

その少し後ろにヨッシー、

さらにその後ろにちんかわむけぞうと、

2人の筋骨隆々の白装束たち


ちなみに、ヤキタコは日本刀を抱き抱えていて、

むけぞうと白装束たちはサブマシンガンを

背負っている



ヨッシーは思った



(結局のところ俺達は、武器を持った相手に

 囲まれているわけじゃねえか!

 本当にジジイが十文字さんを殴って

 俺達は無事でいられるのかよ?)



カナエは女性にしては長身だが、

それでもジジイはカナエよりも

頭一つ分くらいは背が高く、当然ながら

横幅も違う。

両者の力の差は、見ただけでも歴然に思える


そして、ジジイが動いた


さすがに、目の前の美女の顔を殴るのは

気が引けるのだろう。

ボディを狙った一撃を、

右手で繰り出したように見えた



ドンッ!!



ヨッシーは目を閉じて顔を背けてしまっていた


....そして、恐る恐る目を開けた


床に叩きつけられたジジイと、

抜き身の日本刀を片手に持って

彼に突き付けるカナエの姿があった



「は?」



無様な恰好で床に伏せるジジイ....


その頭上に突き付けられた日本刀は

白銀色に輝き、

幅広の刀身と鋭い切っ先を持っていた。


ヨッシーは大声を出した



「護身術と抜刀術か?俺が目を閉じた一瞬で!

 十文字さん、あんたは最初から

 ジジイのパンチを受けるつもりは

 なかったのかよ!」



ヨッシーの全身がプルプルと震える


眼前には、冷徹な表情のカナエと、

ドヤ顔で日本刀の鞘だけを持つヤキタコ。

ジジイは、倒れたまま顔を上げて、

眼前に突きつけられた日本刀を睨みつけていた


空気を切り裂くようなカナエの声が

部屋の中に響き渡った



「例え私が、あなた方に恨みを買うようなこと

 をやっていたとしても

 

 それでも、このリバーサイド同盟を

 率いている以上、

 私は、自分の行いを否定するわけには

 いきません!」



カナエは、空いているほうの手でヤキタコから

刀の鞘を受け取った。

日本刀を鞘に納めながら続けて言う



「私は、今までも、そしてこれからも、

 自分の行いに怯むことはないでしょう


 リバーサイド同盟の地に暮らす

 5万人を超える住人の為に、

 私は、決して振り返ることを許されずに

 前に進み続けるしかないのですから」



カナエは、鞘に納めた日本刀を

ヤキタコに向けて突き返した。


そして、その瞬間を狙って

ヨッシーは行動を開始したのだった



「ジジイの代わりに俺の!」



倒れたジジイのすぐ横を、

握りこぶしを突き出したヨッシーが通り過ぎる


素人丸出しのヘロヘロなパンチだ


しかし、それはまっすぐにカナエのほうへと

向かっていた



一瞬、カナエは呆けたような表情になった



それは、かつて誰にも見せたことがないものだ。

しかし、次の瞬間、

カナエの柔らかい頬にヨッシーの握りこぶしが

めり込んだ。

こぶしは固い頬骨で止まり、

カナエは後ろ向きにのけぞったのだった




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