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高慢

ヨッシーの放った素人パンチは、

リバーサイド同盟の”高慢な指導者”の頬に

見事に命中した


ライトグリーンのトレーナーに

パステルのロングスカート姿のカナエは、

後ろ向きにのけぞりながらもなんとか

踏ん張った。

片手には、鞘に納めた日本刀を持っている。

その顔は横向きのまま俯き、

乱れたブラウンの前髪が顔にかかって

表情は見えない。


・・・・・・・


そして、ほんの一瞬の静寂の後、

様々なことが続けざまに起こった


ヤキタコのタックルがヨッシーを突き飛ばした


地面に伏せていたジジイが起き上がって

ヤキタコに掴みかかろうとした


そのジジイの背中を、ちんかわむけぞうが

サブマシンガンの銃底で殴りつけた


タックルで吹っ飛んだヨッシーを、

白装束2人が取り押さえた


再び床に崩れ落ちたジジイを、ヤキタコと

むけぞうが取り押さえた


しかし、それだけでは終わらない...


なんと、ソファーに座っていたスミレが

参戦したのだ。

スミレは、テーブルの上の銀色の盆を

両手で持ち上げると、戦場へと向かっていった


銀色の盆の打撃が、

ジジイの上にのしかかるヤキタコの

焼け焦げたスキンヘッドを襲う



バガンッ、バガンッ、バガンッ、バガンッ



リナとリサは、ソファーに座ったまま

話し合いを始めた



「ねえ、この人たち何をやってんの?」


「うん、お姉ちゃん、明らかに私たちの

 立場がヤヴァイような気がするんだけど、

 逃げ出すことも出来ないよね」


「小島一家、アホウだとは思ってたけど、

 ここまでとは思わなかったわ...」


「そうだね、とりあえず私たち2人は、

 我が身の保身のことを考えるとしようか」



スミレは、ふと、ヤキタコの隣で同じく

ジジイを取り押さえているちんかわむけぞうに

気が付いた


スミレの盆が、交互にヤキタコとむけぞうの

頭部をぶっ叩く



バガンッ、、バガンッ、、バガンッ、、



プラスチック製とは言え、一応はヘルメットを

被っているむけぞうは耐えていたが、

剥き出しのスキンヘッドのヤキタコは辛そうだ


....と、2本の手がスミレの両肩を掴んで

彼女を二人から引き剝がした


結局、スミレも、リナとリサによって

取り押さえられたのだった


こうして、小島一家は全員が取り押さえられた



『はああああああ、一件落着!!!!』



....とは、ならなかった。


カナエはしばらく固まったままだったが、

大したダメージもないはずなのに

ヘナヘナと床にへたり込んだのだ


重たい日本刀が、ガタッと大きな音を立てて

床に落ちる。

乙女座りのような恰好になったカナエは、

両手で自分の顔を覆った


そして、弱々しくつぶやいた



「私は...ジジコンだから...

 つまり、祖父コンプレックスだから.....

 もしも、想定以上にジジイが強くて

 パンチを貰ったとしても、本望だった。


 でも....こんな、訳の分からない少年に

 殴られるなんて...

 親父にだって殴られたことがないのに...


 こんな、訳の分からない少年に...

 私の初めての...」



ヤキタコとむけぞうによって無様に床に

押し付けられながら、ジジイが言った



「しかし、十文字さん...推測ですまないが、

 あなたは、恐らくは、今の時点でもすでに

 あなたのご祖父様よりも

 偉大な事を成し遂げておられるはず

 

 ジジコンだったとは意外ですな」



両手で顔を覆ったままカナエは答えた



「ええ、祖父は、どうしようもない男尊女卑で

 最期まで私を認めてくれなかった。

 彼は、苦労もせずに先祖の財産を受け継ぎ、

 男が男だというだけで

 偉そうにふんぞり返っていられた

 幸運な時代を生きただけの人物だった


 能力では私のほうが断然に上でしょうね。

 でも、小島さん、あなたが私に

 一発食らわせたいと思ったのと同じように、

 感情だけは、どうも制御しがたいものね」



二人の筋骨隆々の白装束たちに万力のような

力で固定されながら、ヨッシーが言った



「これからはボーイコンになるかもしれねえな、

 指導者様よ!」



カナエは床に落ちた日本刀を掴むと、

スクッと立ち上がった。

再び、姿勢の良い直立不動に戻り、

無表情で乱れた髪を片手でササッと直す


そして、ヨッシーを両側から取り押さえている

二人の白装束たちに合図を送った。

握りこぶしを突き出して親指を立て、

さらにクイッと上向きに動かしたのだ


白装束たちによって立たされるヨッシー



「いいパンチだったわよ坊や...」



カナエは笑顔になった


しかし、その片手には鞘に納められた日本刀を

持っていて、目は笑っているようには見えない


ヨッシーは歯を食いしばって

カナエを睨みつけていたが、

みぞおちに日本刀の柄頭が食い込んで

気を失ってしまったのだった



//////////////////////////////////////////



ジジイとカナエは、ヤキタコの運転する車に

乗って、どこかへと行ってしまった


残されたのは、ヨッシーとスミレとリナとリサ


ソファーの上で目覚めたヨッシーを迎えたのは、

ちんかわむけぞうの笑顔だった



「全く、たいした少年だよ君は...

 橋の上での事に、今回の事も

 

 でも、十文字さんに気に入られたみたいだぜ

 

 君達は、このリバーサイド同盟の地を

 自由に見学できることになった。

 さらに、お小遣いも与えられる


 この地で流通している通貨は

 全て電子決済だから、

 君にこのスマホを貸与するよ


 ちなみに、通貨は使用期限があって

 1か月でその価値は消滅するんだ。

 まあ、今の君達には関係ないことだし、

 その理由はまた話すかもしれないけど、

 買い物を楽しみたまへ

 

 それと、リバーサイド同盟内では出来るだけ

 武装していることが好ましい。

 あ、住民が危険なのではなく、人型の侵入に

 常に備えておくという心掛けみたいなものだ


 だから、これを君に返すよ」



ヨッシーは、スマホと

スミス&ウェッソンのM360リボルバーと

プラケースに入った予備弾薬を受け取った


ヨッシーは目をパチパチとさせて言った



「お小遣い?買い物?マジっすか!

 十文字さん、最高っすよ」




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