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恨み

ヨッシーは、謎の戦士を一目見て、

彼が「リバーサイド同盟」から来たと瞬時に

判断したのだった。


故に降伏する選択をしたのだが、

それは正しかった


川の上流からモーターボートがやってきて、

武装した白装束たちが

バリケードが破られたほうの川岸に上陸した


そして、空を見上げると、はるか上空に

白い飛行船のようなものが見えた。



・・・・・・・・・



生き残りたちは、事件が起きた場所から

反対側の、橋の片側に集められていた



「あいつや、あいつは、車を奪ってバリケードを

 破壊しよったんや!

 この人殺し、お前がやったことは人殺しや!

 マサノブさんにガーズ、タクにテッペイ、

 お前が殺したんやぞ!」



ヤスがヨッシーに向けて怒鳴り散らす


彼の背後には、

3人の女性と、2人の子供が居た


そして、白装束たちによって押収された

刃物やボウガンなどの武器の山を隔て、

ヨッシーが一人で不貞腐れていた


ヤスの言い分にヨッシーはブチ切れた



「黙れ、俺たちの船にボウガンを撃って、

 持ち主を殺して奪おうとしたのは

 どこのどいつだ!

 

 まずは、お前らが他人を理不尽に

 殺そうとしたのに、

 それが自分に降りかかってくると

 文句を言うのかよ!」



ヤスの隣に来た山姥やまんばがヒステリックな声を

上げてヨッシーを攻撃する



「ウチのマサノブを返してよ!

 あのヒトが、あんたみたいな

 クソガキに殺されるなんて

 ホンマ、理不尽すぎるわ」



そして、白装束たちを見渡して言った



「あんたら何してんの?

 このクソガキ、人殺しやねんで、

 はよう捕まえんかい!

 死刑にせなあかん、死刑や、死刑!

 この人殺し、この人殺し、この人殺し」



山姥のヒステリックな声がヨッシーの怒りを

爆発させた


ヨッシーは、橋の上の住民の生き残りたちを

見据えて怒鳴った



「ああ?俺が人殺しだって?

 俺は、お前らを人間だと思ってねえんだよ!

 お前らは虫けらだ、ゴキブリなんだ、

 俺は、ゴキブリを踏み潰しただけだバーカ

 

 薄汚ねえナリしやがってこの乞食軍団が、

 お前ら皆殺しにしてやりゃあよかったぜ」



ヨッシーのこすからい鋭い目は、

もはや犯罪者のソレのように見えた


そして、山姥に向かってさらにがなり立てる



「そこのヤマンバよ、マサノブってのは

 俺が踏み潰したゴキブリの一匹か?

 

 そんなにマサノブとやらに会いたけりゃあよ、

 テメエもそいつの元へ送ってやろうか?」

 


ヨッシーは、押収された武器の山から

一振りの山刀を拾い上げると、

それを橋の上の住民達に思いっきり投げつけた


山刀は、ヤスと山姥の間の地面に突き刺さった


悲鳴を上げる山姥と残り2人の女性、

ヤスは腰を抜かしてしまっている。

2人の子供、つまりキララとトシ坊は

怯えた目でヨッシーを見ていた


ふいに、強烈な銃床の打撃が

ヨッシーの背中をどついた


先ほどの、中肉中背の白装束とは違って、

ガタイの良い筋骨隆々な白装束だった。


ヘルメットにフェイスマスクにゴーグルで

顔は分からない。

白を基調とした服は、所々に

目立つ原色のラインが入っていた。

そして、ステンガンの丸パクリのような

サブマシンガンの銃床で、

ヨッシーの背中をどついたのだった



「ぐががが...ひでえ」



まともに呼吸が出来ずにうずくまるヨッシー


それを見た乞食軍団が囃し立てようとしたが、

3発の銃声が聞こえ、

皆が一斉に黙りこくった


やがて、中肉中背の白装束が戻ってきた


その肩には、サブマシンガンを背負っている。

そして、こう言った



「人型にやられた3人は、意識が無かったから

 頭を撃ち抜いて楽にしてやった。

 でも、もう1人はまだかすかに

 意識があるんだ....

 

 君達の中に、彼に別れを告げたい人は

 居るかい?」



声の感じからして、まだ若い男性みたいだ


しかし彼は、白装束たちの中でも

リーダー的な存在らしい


他の筋骨隆々な白装束たちが、

彼の指示に従っている感じなのだ


そして、2人のガチムチ白装束に

身体の前後を持たれて運ばれてきたのは、

息も絶え絶えのマサノブだった



中肉中背の白装束が言った



「彼は人型にやられているので、くれぐれも

 注意してくれ。

 彼の傷口に触ってはいけない

 

 それと、残念ながら、ここまで重傷だと

 我々も助けることができない。

 彼が意識を失ったら、銃で頭を撃ち抜いて

 楽にしてあげなければならない...」



そっと、地面に降ろされるマサノブ


しかし、山姥も、ヤスも、女たちも

彼に近寄ろうとはしなかった


ただ、2人の子供たちの中の、

年長の少女のほうがマサノブに反応した



・・・・・・・・・



キララは、立ち上がるとマサノブのほうへと

向かった。

薄汚く、小柄で、伸び放題の髪、

それらのおかげでまだ子供に見えるが、

実は彼女はヨッシーより1個下の14歳だった


そして、彼女の目には殺意が灯っていた


ヨロヨロと歩むキララを、白装束たちは

呆然と見つめている。

地面にうずくまっていたヨッシーも

顔を上げてキララを見上げている。


置いて行かれたトシ坊は不安そうだった


...と、キララは

地面に積まれていた武器の中から

槍のようなものを拾った


長い棒に、ナイフを括りつけたやつだ


白装束たちが反応するより先に、キララは

地面に横たわったマサノブに槍を突き刺した



「シネ、シネ、シネ」



何度も、何度も、槍を突き刺す...


口の周囲と顎だけに申し訳程度の髭を生やした

男は、目を見開いたまま死んだ



・・・・・・



もはや誰も、周囲に漂う腐敗臭のことを

気にしていなかった


そして、中肉中背の白装束は、

そっとゴーグルを外してフェイスマスクを

取った


現れたのは、まだ若い男性の顔


よく見れば、気の良さそうなお兄さんといった

感じの、親しみやすい顔だった


”ちんかわむけぞう”の目には、

ほんのりと涙が浮かんでいるように見えた


むけぞうは、独り言を呟いた



「俺達がもっと早く行動を起こしていれば

 良かったのか?

 こんなに悲しく狂った世界で、俺達は

 希望になりたいんじゃないのか」



でも、自分達は全ての人間を救うことなんて

できっこない...


この橋の上の住民に対して、救援物資を

流し続けていたのは、

皆の単なる自己満足に過ぎなかった


人々を救うことをアイデンティティとして

成り立ったのが、「リバーサイド同盟」だ


むけぞうは、素早く目を擦ると、

地面にへたり込む少年を見つめた



(しかし、この凶悪犯罪者のような少年が、

 彼等の運命を動かす切っ掛けになったんだ

 

 やはり、それは、

 人間にしか持ちえない力なんだ)




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