親友兼幼馴染としての勘
朝、晴翔と一緒にマンションの廊下で朝日奈が来るのを待っていた。
幼稚園の頃から、ずっと一緒の俺たちは、小学生の頃から一緒に登校していた。
それは高校生になっても変わらず、マンションの廊下で集合して一緒に行くのが日課になっている。
「そうそう、晴翔。お前に渡さないといけないものがあるんだ」
俺は鞄から昨日、後輩から渡されたラブレターを取り出し、晴翔に渡した。
「昨日の放課後、姫乃琴弓って後輩からお前にラブレターを渡して欲しいって頼まれたんだ」
「そうなんだ。ありがとう」
「あんまり嬉しそうじゃないな」
「これから断らないといけないと思うとね」
もう断ることが決定してるのか。
もしかしたら、彼女のことを知っていたのかもしれない。
「あんな可愛い後輩の告白を断るなんて、やっぱりモテ男は違うな。ほんと、一体誰ならお前の心を動かすんだ?」
「さぁ、誰なんだろうね。」
前に似たようなことを聞いた時もこんな感じの返答だったが、今回は何故か腑に落ちなかった。
何で引っかかるのだろう。
親友兼幼馴染としての勘みたいなものが、こいつが嘘をついているっていってるのか?
まさか、晴翔には好きな人もしくは付き合っている人がいるというのか。
「もしかして好きなやつとかいる?」
「どうなんだろうね」
何故かは分からない、分からないのだけど晴翔に好きなやつがいる気がする。
もし、俺の勘が当たってるなら、めっちゃ気になる。
いや、でも、それ以上に思うことがある。
頭脳明晰、運動神経抜群、容姿端麗というだけでも羨ましいのにその上、彼女がいたりするのなら、いくら幼馴染とはいえ羨ましすぎて嫉妬しそうになるね。
まったく、何故同じ人間なのにここまで差が生まれるのだろう。
晴翔を見ているとこの世界の不平等さ、理不尽さを簡単に知ることができる。
もしこの世界が物語の世界なら、晴翔は主人公というより、公式チートだな。
こんな化け物に一体誰が勝てるというのか。
世界に祝福されているとしか思えん。
そんなつまないことを考えていると晴翔に話しかけられる。
「朝日奈、遅くない?」
『確かに朝日奈のやつ、遅いな』と思い、スマホで時間を見ると、いつもの集合時間から10分過ぎていた。
いつも遅れない朝日奈が遅刻とは珍しい。もしかして寝坊したか。
「チャイム鳴らすか?」と晴翔に聞こうとした時、朝日奈の住む住戸からドアの開く音が聞こえた。
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