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異世界ボウケン日記  作者: トンポゥポゥ
1/2

過ち


 ─これはヤバイ

 

 肉が、いや内蔵が、頭をちらり所ではない程にその姿を右腹から覗かせる。

 

 胃は右手で支えられ、他の内蔵も各指で何とか、しかし今にもヌメった赤色の体液のせいでこぼれ落ちそうな危うさがある。

 

 先程目の前に経つナイフを持った男性が刃を振るった瞬間に痛みは無かった。

 いや、痛み自体は、正確に言うならかすり傷や擦り傷、切り傷なんかで感じる痛みは感じなかった。

 

 感じるのは自分の内蔵に直接触り、触られる不快感と嘔吐感による自身の精神の痛み。

 

 血はもはやこの廊下の橋まで届き、少しめくれた床のシートと壁の間の隙間にさえ届きそうなほど。

 

 背中には冷たく硬いコンクリートの壁があり、俺にもう逃げ道が無いことを理解させる。

 

 目の前に立っている、俺の元友人であり、俺を殺した張本人、桜坂 颯海 はいつもは低めの声で笑ったりしていたのが常だったのに今は耳が痛くなるほどの高い声で叫び、あらぬ方向を血走った目で見つめる。

 

「篠﨑さん……いや!篠﨑!やっと、やっとお前を誘惑する人の皮を被った悪魔を倒したよ……。初めてあった日からずっと一目惚れしていたのに、僕は……、帰り道に待ち伏せして告白したし、靴箱に僕の愛の1部を分け与えた手紙を毎日入れ続けた……でも君は1度も僕に振り向いて、僕の大好きな笑顔を僕に向けずに、こんなクズでノロマで馬鹿で、おまけに人の皮を被った悪魔に!その天使の如き笑みを向けいたのか、ずっと分からなかったんだ……。僕はこんなやつより君を愛している。僕の方がこいつより君を幸せにできるって、でもさ、気づいたんだ、本当は篠﨑さんは僕に救いを求めていたんだって。僕の愛がお前なんかに負けているのかって1回不安になったんだ、いや、本当はそんな気持ちを持っちゃいけないのは分かってる。でもあまりに君が僕のことを見てくれないから、そんな時に昔テレビである事件が報道されてたのを思い出したんだ、毎日机の中に手紙を入れて、断ったのにまだ入れて、さらに家までついて行って、それが通報されて捕まった……えー、どこだっけ、ま、いいやそんな会社の上司と部下の事件。それを思い出した時に、ようやく篠﨑が僕に言いたいことが分かった。僕は毎日篠﨑の靴箱に、いや実は家のポストにも毎日手紙を入れてたし、断られても何度も一緒に家に帰った、他にも色々してさ、それの全部に対して嫌がってるような顔をしてた……それも可愛かったけどさ、やっぱり僕には笑顔を向けて欲しかった。……ハ!話が逸れちゃったね……まぁ、それで思ったんだ、本当に嫌がってるならもう通報とかしたんじゃないかって、でも、僕の周りにそんな話は流れてなかった。

 桜坂が篠﨑に告白したとか、嫌がってることをずっと続けてる、なんて話は1度も流れなかった、お前の口からも、だからさ、篠﨑は本当はこう思ってたんじゃないかな、私を救ってって、じゃあ誰から篠﨑を救えばいい?親か?友人か?教師か?学校か?習い事か?いや、いや、いやいやいやいや!違う違う違う違う!それはお前だよ、蓮、ずっとその悪魔たる力、それこそ魅惑や誘惑の魔眼とかで、その力で俺への愛からお前への愛に変えたんだろ?でも篠﨑は自分の力だけじゃその力から抜け出せなかった。だから俺から告白された時本当は天にも昇るほど嬉しかったんだ、でも今自分はお前に操られているからその愛に応えることが出来ない、お前に言葉や行動を操られているから、だから何度も挑み続ける僕に、その全部を断り、だけど周りには伝えないという自分にできる唯一の方法で僕に助けを求めた。

 そして、篠﨑はこの賭けに勝ったんだ、僕にその願いが伝わったんだ、……たしか、お前と篠﨑の付き合ってた期間は10年……だっけか、その間、誰にも言うことが出来ず、苦しかっただろう、怖かっただろう、嫌だっただろう!」

 

 

 

 ─何を言ってるんだ?

 

「僕が今」

 

 ─言葉の脈絡が合ってない、それに颯海のやったことは実際に起きていない事のはずだ。

 

「この悪魔を殺して」

 

 ─篠﨑から他の奴のストーカーの相談は受けたけどこいつのはない。

 

「君を救って上げる」

 

 ───そういや、1回だけ篠﨑の靴箱に何か入ってたな……たしか

 

「……ねぇ、人が話してるってのにさ、そんなとこ見てないで……あぁ、もう意識無いのかな」

 

 ─そう、たしか、白の封筒に

 

「念には念を、しっかり首を落とさないとっね!」

 

 ─白色の白紙の紙が、大きさが数センチだったし特に何も書いてなかったから靴に張り付いてたのかと思ってたけど、あれがそうだったのだろうか。

 

 

 

 スッッッ……

 

 痛みを忘れていたはずの脳に肉が切られ、新たな痛みを感じる感覚が伝わる。

 

 温めたナイフでバターを切るようにスっと切られた首、最後に見たのはどこに残っていたのか、あれ程の血を流してなお、盛大に血飛沫を上げる頭が無くなった首だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして

 

 

 最初に見えたのは

 

 周りを海に囲まれ、空は黒く雷をほとばさせる、そして、目の前には大きな、7回建てのマンション程の大きさの建物が、大きな扉で威圧するようにしている、そんな光景だった。

やっぱり初手キチは定番なのかな……


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