光球
大きな石の建物、床についている手に伝わる感触からして恐らく石と思われ、床と建物の壁が同じ見た目であるので恐らくそうと思われる建物の前で、俺はどのくらいの間、座っていたのだろうか、5分か1時間か、1日か、時間は分からない。
なにせ周りの景色は一向に変わっていない……はずだからだ、目の前の石の建物も、波の1つも立たない海も、黒く空を覆う時々雷鳴を唸らせる黒雲も、初めに見た時から何も変わっていやしない。
その間、同じことをずっと考えていた。
手も、そこにあった。
首を切られていたのに、
手はナイフで切り裂かれた辺りに
首を切られた瞬間、いや、腹を切られた瞬間からあった死ぬと言うのを受け入れた感情が。
右手は首の辺りに、左手は右腹の辺りに
そして、目の前に立っていたあの狂った目をしていた狂人に。
そのどれもに恐怖を抱いた。
首を切られたというのに生きているという人間の、ではなく生命の冒涜を自信が犯してしまったことの本能の恐怖。
生きているものとして認めていいはずのない死を脳が受け止め、許してしまった自身の理性への本能。
そして1から10まで理解不能の未知からの恐怖、そして狂ったものが自身に及ぼす事に対しての恐怖。
頭の中の脳はどれくらいだったか分からないほどの時間が終わるまで恐怖という恐ろしい程に堅牢な檻に閉じ込められていた。
檻の鉄格子にヒビが入り、割れたのはある人を思い出してからだった。
桜坂の、なんであいつが俺にあんなことをしたのか、その理由について考えていた時だ。
篠﨑 夕美、俺の幼馴染で現恋人の俺の憧れと、そして皆から慕われた女の子。
確かに彼女は魅力的な女性でそんな人と付き合う男子は嫉妬の対象になるだろうけど……
「だからってあそこまでやるかね、普通……あ、いやあいつ見るからに普通じゃなかったわ」
彼女の事を思い出したからだろうか、少し軽口を言えるまでに心に余裕が出来た。
ずっと下げていた頭を、視線を上に向ける。
ここの来てから何も変わらず、佇み続ける大きな扉、目の前の建物、この形状だと塔と言うのが1番形容された言い方だろうか、それに1部だけ異質に張り付いている居るような統一された石の建物に似合わない木製の扉、その両扉に力を込め、押す。
開かない。
扉を引く。
開かない。
上へ上げる。
やっぱり開かない
助走を付けて扉へと体当たりをする。
扉は案外軽かったようですんなりと開いた。
扉の種類は忍者屋敷にあるようなどんでん返しだった。
……ここの設計者は性格ねじ曲がってるのねは無いだろうか。
ご丁寧に扉にはドアノブが付いていた。
あれでどんでん返しだと思う人は設計者か全部の扉をどんでん返しだと思ってる人しか居ないだろう。
しかしこの扉はどんでん返しだった、そして助走まで付け、勢い良く突っ込んで、扉は意外と軽かった。
それはつまり、
「いったぁあ!」
膝と右頬の皮が少しめくれた。
ジンジンと痛む傷の場所を手で押さえながら周囲を見渡す。
目立つのは目の前に伸びていて、上に上り、そのあと奥に向かう1本の階段、そしてその左右2つづつ伸びている通路。
石壁にどうやって付けたのか分からない籠に入り、周囲を照らす松明。
「こういう左右どっちに向かうのか決める時に使える理論があるんだよな」
迷っていたり未知の道を行く時は左を選びやすいという、
「だからここは右へ行こう」
まぁだからって何が変わる訳でもないが、迷ってる時間が惜しかったから聞いた事のある話に乗っ取っただけで。
その通路は数メートルで終わった。
後ろを振り返れば先程入ってきた広間が見える。
通路の先は部屋になっていた。
天井に青い光を放つ玉みたいなのが付いていて、部屋の中はドームのような形状でタンスや箱、瓶や短い縄。
なんと言うか、作業が行われていたような部屋だった。
他の3つの部屋も似たようなものだった。
天井の色が1つ目の部屋から順に赤、緑、黄だったこと以外は。
4つの部屋から中身がない瓶だけ持って広間に戻る。
「まさかこの4つの部屋どの瓶にも中身がないとは……ゲームとかだと序盤にHP回復ポーションとかあるでしょ」
愚痴を零しながら階段を上がっていく。
それぞれの部屋は瓶の中身を含め、タンスの中も、箱の中も、何かを縛っていた様な結び目と切り口をしている縄も、全部の中に何も無かった。
ドラクエ風に言ってしまうなら序盤のダンジョン的なとこでツボや木箱を全部壊して薬草1つさえ貰えなかったような感じ。
なんと言うか心もとない。
今のところ命の危険はないと言っても差し支えないがいきなりよく分からない所にいる以上これからも安全が保証されている確証は無い。
瓶を撮ってきたのはガラスの様な見た目だったので割ったら凶器に出来そうだったのと、大きな音が出ればこんな静かなとこに居るやつは驚くのではないか、という現実感半分望み半分という気持ちだ。
瓶を持ってきた必要性に付いて考えていると階段を登ろうとする足がスカッと空振る。
ゾッと冷や汗が吹いたが、それはもう次に上る階段が無かったからだった。
1分ほど上がった階段は地上から数メートルあり、ここから無防備で落ちたら床の材質的に尻が骨折していたかもしれないので良かった。
階段の先には通路があった。
その通路はさっきの広間から部屋に向かう通路の様な数メートルではなく、10数メートルほど、壁に松明がかかっていたため足元は大丈夫だったが、これが迷宮とかだとやばかったな、と思う。
通路を抜けた先には広間な3/1程の部屋があり、そこに4つの部屋の天井にあったものと同じようなものが浮かんでいた。
右のこちら側に青い光球
右の向こう側に赤い光球
左の向こう側に緑の光球
左のこちら側に黄の光球
部屋に合ったのと違う点はそれぞれの光球に手を押した様な黒色の跡が付いていた。
試しにそのその跡に合わせるように自身の手を置く。
日本でこのような機械があった気がする。手を跡に合わせて載せるとなんかしらガシャンガシャンする感じの。
安易な考えで手を合わせた瞬間。
手に、いや手を中心として全身に激痛が走った。
「あがあぁぁあぁ!?!?」
手首を押さえ、床をゴロゴロと転げ回る。
しばらく暴れていると手の痛みが引いていく。
触れた青色の光球を睨み、他の光球にも目を向ける。
他の3色どれにも跡があった。
「跡じゃないとこならなんか起きるかもしれない」
赤色の跡がついていない所に触れた。
触れた場所から先程の青い光球に触れた時と同じようなものが痛みが発生し、その痛みが身体に伝わり、全身を痛みで狂わせる。
数分たち、落ち着いた所で結論を出す。
「これ触っちゃダメなやつだな、うん」
この話、実はですね、尊い漫画を読みながら書いているんです……
内緒ですよ?




