勘が恐れていた者
「最初に一つだけ聞かせてもらいたいんだ」
なんだ……あの女は。
警視庁超常現象課?
俺も組に入って長いが……そんなもん聞いたことがねぇ。
「君達に協力しているロキの死骸、そいつから手を引く気はある?」
ムカつく目だぜ。
良く分からない力を持っているようだが、その目はオヤジ達を潰したマル暴の奴らと一緒だ。
警察だって権利と金にまみれた碌でもない組織の癖に、自分たちは正義の味方ですって面しやがる。
そんな奴らの言う事なんて、誰がきいてやるかよ。
「馬鹿言うなよ。ロキは俺達ヤクザの希望だ」
今やヤクザの形見は狭くなった。
ネットに強いやつとか、頭の良いやつは闇バイトとか始めてるとは聞くが……俺みたいな頭の悪い、力だけのヤクザにそれは無理だ。
だからこそ、俺はロキの力をふんだんに使った。
正直、あいつの良いように使われているのは薄々感じてるがな……それでも良いんだ。
今や六芒組は勢力を拡大し続けている。
俺みたいな時代に取り残されたヤクザを吸収し、ヤクとロキの運営する闇金でのし上がってきた。
「こんな力、今更手放せるかよ」
「そっか……ならー」
ごくりと。
また女が酒を飲み干した。
「テメェらみたいなカスに遠慮する必要はねぇなぁ!!!」
何だ、こいつ。
口調が?!
「が?」
「な、なんだぁ?」
「あの鎖、どんなけ伸びるんだよ!!」
連れてきた奴らの悲鳴が飛び交う。
クソ!!
次から次へと何が起こってやがる。
「お前ら、うろたえるな」
死体の処理はどうとでもなる。
まずはあの女を撃ってー
「動きが単調で分かりやすいねぇ、ヤクザってのはさぁ」
「は?」
俺の銃を弾き飛ばしたのか?
その鎖で??
馬鹿げてる。
大体、鎖は今も化け物を縛ってる状況だ。
そのうえで、俺達に攻撃を?
「大地に私、空に君。世界を救う盟約の元に、天界への扉を私が開く」
普通じゃねぇ。
この女も、ロキや人食い女と同じか!!
「降臨せよ。我が盟友、クライエル・ユピテル」
女の背後から光?!
今度は何を始める気だ?!
「殲滅は私がする。天使君はあいつらから情報を抜き取って」
「あぁ。任された」
あれは……羽?!
背中から四枚の羽根を生やした……もしかして、天使って奴か?
『生きてた頃の私はもっとすごかったんだよぉ。なんせ羽が7枚あったんだから。天界史上最高記録』
そう言えば、前にロキが言ってたな。
『羽の数は大事だよ。天界の神々は羽の数で強さが決まるんだから』
あの時は話半分だった。
ロキと一緒に作ったヤクで出来る化け物に羽なんて無かったからな。
『浜やんも気を付けなよ。特に四枚羽以上は、もう神の領域だから』
だが、それが今俺の目の前にいる。
四枚の羽根を生やした……天使が。
「あぁぁ……俺はなんてことを!!」
「ここはどこだ?!なんだ、この化け物は?!」
「そうだよなぁ……昔はサッカー選手になりたくて、借金こさえてヤクザなんかに」
「あぁ?何で俺はこんな奴らとつるんでる??」
なんだ?
光を浴びた奴らの様がおかしい。
これは……まずい。
躊躇してる場合じゃない。
早くロキを呼ばねぇと。
「その携帯がロキを呼ぶトリガーね」
「なぁぁぁ?!」
俺は、スーツのポケットからスマホを取っただけだ。
ただの1秒にも満たない、それだけの動作だったのに。
何で、緑の鎖が的確に俺の腕を縛ってるんだよ!!
「ま、まさかお前も勘がどうこうって言うのか?」
「ハァ?そんなわけないじゃん」
鎖が腕を締め付ける。
他の奴らは……クソッまともに動けそうなやつらが居ない。
「トバリ……想像以上に厄介な事になっているぞ」
「みたいだね。悪魔の死体を使った違法薬物に人を化け物にして使役……化け物を量産している工場がすでに4つ」
天使の目がジッと俺を見てる。
やめろ。
その目を向けるな。
「早く動かないと手遅れに……いや、もう遅い……よね」
「間に合わなかったことを後悔しすぎるのはお前の悪い癖だ。トバリ」
「……そうだね。まずはこのクソの記憶を洗いざらい読み取る。切り替えないと今後被害にあう人を助けられない」
クソ!!
今まで順調だったのに。
全部、あの人食い女のせいだ。
あいつが災いを呼んだに違いない。
アイツさえ、いなければ!!
「あぁ。早く取り掛かろう……私達の信じた平和な未来の為に」
何だ?!
天使の光が。
何だよこれ。
何な##れ!!
俺の中#野望が、#の求めら未来#。
消えてい#。
消え##く。
####。
####。
「クソ!!俺はこんなところで!!」
#######。
#######。
#######。
#######。
「そうだよ浜やん。こんなところで終わったら面白くないでしょ?」
とんと。
誰かの指が俺を小突いた。
さっきまで、モヤモヤしていた頭がすっきりしてる。
「お前、どっから湧いてきた」
「え~。浜やんが危なそうだったから~、結構無理してきたのに。その言い草はないんじゃな~い」
ロキ!!
どんな手を使ったが知らねぇが、間一髪できやがったか!!
「にしても……ほ~んと厄介なのに絡まれてんねぇ」
「ッツ、ロキの死骸?!どうやってここに」
あの天使がうろたえてやがる。
というか、逆になんでサツの女は平然としてんだよ。
「探す手間が省けたじゃん、天使君。今ここでロキの死骸を殺せば全部解決だよ!!」
「アハハハ!!死骸を殺すだってさぁ、怖いったらありゃしないねぇ」
甲高い金属音が響く。
サツの女は緑の鎖を。
ロキはいつの間にか取り出したノイズまみれの斧を。
二つの狂気が何度も何度も打ち合っては音を鳴らす。
とてもじゃないが、入り込む余地がねぇ。
「ねぇねぇ、私って君に何かしたかな?あ、もしかして生前の私?」
「うっさい。黙って私に殺されろ!!」
「話通じないねぇ、これ」
ロキが興味無さそうにため息をこぼす。
瞬間、あいつが持っていた斧が纏うノイズが増大する。
「禁斧#####・レプリカ」
次の瞬間、サツの女が使ていた鎖がノイズに飲まれ始めた。
そして、派手な音を出してぶっ壊れた。
「馬鹿な?!グレイプニルは全ての異能を無効にする鎖だぞ」
「勉強不足だねぇ、そこの天使は。この斧はなんでも切れるんだよ、そう言う代物なの」
ま、一回きりの切り札だったんだけどとロキがぼやく。
見れば、さっきの斧は粉々に砕けてる。
どうしたものかとロキは手を掲げてう~ん、う~んとうなり始めた。
「浜やん、先に謝っとくね」
「あぁ?!何が?!」
「こっから逃げるんだけどさぁ、その為に工場二つ潰すね」
「おい待て。それはー」
俺が止める前にロキが指を鳴らす。
すると、空から無数の化け物が降ってきた。
「これは」
「君たち強いからさぁ。こいつらデコイにして逃げるから」
「逃がすとでも?」
「こっちに構ってて良いのかなぁ。ここに呼んだ化け物の総数は60匹だよぉ?一匹でも逃したら大変な事になるんじゃないかなぁ」
ぐにゃんと、空間が歪む。
そして俺の体はロキの思うがままに、地面へ落ちていく。
「うおぉ?!」
「ハイハイ、逃げるよ~浜やん」
なんて事だ。
今日は厄日だ。
「トバリ。ここら一体に結界を張る。その間に」
「クソッ……天使君。今何時?」
「深夜1時だ」
「OK、一時間で終わらせる」
マジかよあいつ等。
あの量の化け物を一時間で処理する気か。
とんでもねぇ奴に目を付けられた。
おまけにユーフォも逃がしちまった。
「あんの、人食い女め」
あいつに。
あの時あいつに出会わなければ、ここまでの被害は受けなかったんだ。
早く。
早く対策を立てねぇとな。




