表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【溺愛プラン】オプションどうします?  作者: 田中葵
第6部「ありがとう、さようなら」
137/141

4 新社名の意味は“テクノロジー・充足・かかわる”

 第4話:テックフルネス・アソシエイトの産声


 一週間後。

 マルトクテックカンパニーは解体され、新社名『株式会社テックフルネス・アソシエイト』としての登記が完了した。


 社内は、全体的に明るく、

 軽やかさが広く行き渡っていた。


 オフィスでひと息つく社員からポロッと、

「ちがう会社に来てるみたい」

「窓から射す光が明るくなった…空気も、かな」


 広い会議室に撮影用のデジタルカメラを入れ、茶色い短髪の男性が一人、最も広い席に着いた。

 新社長に就任したエーリッヒ・バルトライン。彼は、井筒が去った後の開発部を「技術のゆりかご」へと戻すべく、大きな決断を下す。


「リーディングカンパニーという幻想は、旧・丸徳とともに捨てました。我々が提供するのは『テクノロジーによる充足フルネス』。もはや、人間の愛をAIで代替するような野心はありません」


 会議に参加した面々は、水を打ったように静かだった。


 バルトラインの傍らには、監修として外部から招かれた井筒治貞がいた。

 彼は、パシオ計器から出向してきた腕利きの若手エンジニアと、森幸千佳さちかを引き合わせた。

「森さん、彼が新しい相棒だ。彼も君と同じで『溺愛プランなんて使わない』派だから、気が合うはずだよ」


 森は無表情ながらも、少しだけ口角を上げた。

「……使わないですが、作るのには興味があります。今度は、誰も消えない、誰も狂わないプランを」


 若手のエンジニアは一言だけ、

「モリさん、これからよろしくお願いします」


 森はそれに対し淡々と、

「こちらこそ、よろしくお願いいたします」


 初対面の雰囲気は、まずまずな滑り出しだった。


         ***


 一方、野村花子の家では、ハヤトが個人雇用契約書にサインを終えていた。

「株式会社テックフルネス……ふうん、いい名前じゃない。少しはマシな哲学を持つようになったのね、あの会社も」

 花子は書類をハヤトに返し、窓の外を見た。


 そこには、かつての「マルトク」が追い求めた、歪なユートピアの残骸はない。

 ただ、道具としてのAIと、それを使いこなす人間たちが、等身大の距離で暮らす日常が始まろうとしていた。


         ***


 テックフルネス・アソシエイトの管理統括室。

 月影は、最後に残った「溺愛プラン」のアーカイブを物理削除するコマンドを実行した。

 画面が暗転し、秒速で一つの時代が消える。


「ありがとう、さようなら。……そして、ようこそ」


 新しい社名の入った名刺をポケットに入れ、月影はフロアを見渡した。

 そこには、臼井とあずさが、新時代の「AI執事」の設計図を囲んで笑い合う姿があった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ