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夢幻への再臨  作者: 柴光
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04 黄昏〜ラグナロク〜

転移者、25歳、男

前世の死因、溺死

 




 この世界に転移してから三年は経った。

生きて行くので精一杯な世界だが、元居た場所よりは充実な人生を送っている。


「この招集さえなければ」


 冒険者として食い扶持を繋いでいる俺は、所属している国から時折臨時招集がかかる。

 今回集められた理由、それは隣国との戦争だ。

魔物を倒すのはとうに慣れてるけど人は別。

そりゃあ人型の魔物もいるけど。

 倫理観のない世界だが、俺はどうしても俺自身の正義を捨てきれなかった。


「この間までは…か」


 前回防衛戦に参加した際に思いしらされた恐怖と守りたい者がいる信念の強さを。

 街には俺の大切な人がいて、気が付いた時には自分がやらなければという衝動で敵国の兵を屠っていた。

やらなきゃ殺られるんだと自分に言い聞かせて。


「今回も敵軍の数に圧倒されますね」


 そう話かけてきたのはパーティメンバーの魔法使いだ。


「そうだね…本音を言うと怖くて仕方ないよ」

「僕もですよ。それでも逃げられない。逃げたら街が奪われる。それだけは避けなければなりません」

「もちろん分かってるんだ。ただ、君にはこの怖さを伝えておきたかったんだ」

「嬉しいですね。いつも頼もしくモンスターと戦ってる姿を見ていますから、弱音を聞けて同じなんだなって思いました」


 恥ずかしそうに言う魔法使いを見て、こっちまで赤面して気付くと口許が緩んでいた。

 そうこうしているうちに号令の合図が鳴り響き開戦の火蓋が切られた。

 前線を鎧姿の正規兵が盾と槍を手に駆け出し、一歩後ろの弓兵が矢を引き、後衛の魔法使いが各々の攻撃魔法を飛ばす。

 それは敵側も同じで、既に最前線では互いに得物を交えていた。


「俺も気合入れないとだね」


 そう呟き、召喚口上を唱える。

 剣士兼召喚士である俺の相方、指環竜『ニーベルングドラゴン』を召喚して共に前線へと上がる。

 ニーベルングは小さい部類の竜種だけど補助魔法に優れており、周囲の味方の魔力、体力、攻撃力を引き上げ、回復魔法までも使いこなしてしまう万能っぷりだ。

 自身も光属性のブレスを吐き出して敵を一掃してくれる力を持つ。


「今日も頼むよ、相棒」

「ガァーッ」

「お気を付けて」

「ありがとう。君もね」


 仲間の魔法使いに見送られて前へと駆け出していくと、周りからも魔法陣が浮き上がり数体の召喚獣が顕現した。

 怪鳥タイプ複数体に正規軍最強の巨大召喚獣『フルメタルゴーレム』が加戦する。

 敵側も単眼巨兵『サイクロプス』と亜竜のワイバーンを召喚し始めた。

 怪獣と亜竜は空でぶつかり合い、走りだしたサイクロプスは前線の兵を薙ぎ払おうとするも、フルメタルゴーレムの拳とニーベルングのブレスによって一体また一体と倒されていく。

 駆け出したものの、俺は見ている事しか出来なかったけど、敵軍に新たな召喚魔法陣が浮かび上がったのが目についた。


「ニーベルング!新手が来る!」


 最後のサイクロプスを倒した相棒に語り掛けた瞬間、飛翔した無数の剣によって突き刺されてニーベルングは落下しながら光りの粒子となって消えてしまった。

 何が起きたのか混乱している中、剣や魔法でなんか傷付かないフルメタルゴーレムが見るも無惨にバラバラにされて散らされているのが見えた。


「何が起きた?」


 敵陣を見やると、空には一人の人間いや、人型の召喚獣が無数の剣とともに宙に浮き上がっている。


「黄昏…『ラグナロク』だ…」


 誰かが黄昏とう呟く。

 そこからはもう戦争ではなく虐殺へと変わった。

 空から降る数えきれない剣の雨。

 上がる悲鳴と血しぶき。


「まるで…地獄じゃないか……そうだ、仲間は!?」


 勝敗は決したけど絶望してる場合じゃないと、女神から貰った剣を振って鉄の雨を掻い潜り仲間の元へと走りだし、息を切らしながらようやく見つけたのが仲間らしきモノの死体だけだった。

 間に合わなかったのだ。


「ご、ごめん…ごめんな…さい」


 膝から崩れ落ちた俺の口からはその言葉しか出ず、背中に熱い感覚が走ったのが最後の記憶として残された。



 味方軍の全滅で勝敗は決し、隣国と接していた街はその手中に収められた。

 国は初めから外域鎮台としていたこの街を見捨てる方向であった為、その後の奪還作戦などは一切ない。





『ニーベルングドラゴン』

召喚獣

体力B 攻撃力B+ 速力A

全長8メーターの小さめの竜種。

 指環竜とも呼ばれ、補助魔法に長け、ブレスによる攻撃も他の竜種に引けを取らない。


『フルメタルゴーレム』

召喚獣

体力S 攻撃力A 速力D

全長12メーターのゴーレム。

 フルメタルの身体は剣も魔法も通さないとされる…いや、されていた。


『サイクロプス』

召喚獣

体力B 攻撃力B 速力C

全長15メーターの一つ目の巨人。

 デカさは力を体現した召喚獣だが、戦闘力の高い人間なら一人でも倒せる木偶の坊。


『ラグナロク』

召喚獣

体力? 攻撃力S以上 速力?

 黄昏とも呼ばれる身長1.6メーター程の白い翼の生えた女性型の召喚獣。

 無数の剣を自在に操り、目に映る範囲は攻撃可能だと思われる。







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