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川島式直接排除型除霊工法  作者: いけたらいく
§2.異世界出張
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出港

この作品は、フィクションです。作品に登場する人物名・団体名・その他名称などは架空であり、実在する人物・団体・その他名称などとは一切関係ありません。


船を出す出さないで、ひと悶着あった。もう夕暮れだから、明日にしよう、という大半の意見を蹴って、川島は、直ぐに船を出すよう、強く主張した。


「今から船を出せ。」


日が暮れれば、夜になる。夜に船を出すのは、危険だ。それは、川島も承知している。しかし、川島は、()()()に長くいない方がいい、という気持ちを強くしていた。自分に課せられた用事だけを果たし、早々に元の生活に戻った方がいい。休みが残り少ないというのもあるが、()()()にいる時間が長くなればなるほど、()()に巻き込まれてしまうという予感がある。それも避けたい。


このような手合いの物語は、古今東西、フィクションの世界では、あふれている。神話、伝説、小説。漫画、映画。巷で人気の()()()()()のことではない。それらの物語の伝統的な構成では、主人公は、現実世界で悩みを抱えている。何か鬱屈していたり、難儀な状況に陥っていたりしている。そして、違う世界に足を踏み入れ、そこで()()に巻き込まれ、困難に立ち向かい、悟りを得て、人間的成長(レベルアップ)を遂げる。そして、元の世界に戻り、持ち帰った経験値で、現実世界で自分の置かれた状況を打破する。


川島は、仕事の悩みは、仕事でしか解決しない、と考えている男だ。だから、現実の悩みは、現実でしか解決しない、と考えている。()()で、人間的成長を遂げるような出来事はない、と断じる。


そもそも、生きていく上で、なりたい自分になり続ける、あるいは、自ら定めたルールに則って行動する。その蓄積で、人となりは構築されていく。よく、三十を超えたら性格は直らない、という。直らないのではなく、直さないのだ。今更、直せないのだ。それまでの生きてきたやり方で構成された、自分という人間は、変えられない。もう変えようのないところまで来る。その大体の年齢が、三十前後である。三十をこえて、それまでの自分を捨てて、自らを変えることができる者は、ごく限られた者たちだ。


老境に至り、諦観によって、変わる者もいるだろう。丸くなる、という表現がそれかもしれない。また、何か、例えば大病を患うとか、人生設計においてイレギュラーな衝撃があって、世界が変わる者もいるだろう。


だが、川島はまだ、丸くなっていないし、血圧が少し高いくらいだ。()()で何を経験するのかは、未知数だが、そう簡単に、性格は変わらないだろう。


()()では、人間的成長(レベルアップ)よりも、人間的解放(アンリミテッド)があるのではないか、と懸念している。


()()での自分の行動の節々に、現実世界では考えられない言動が混ざっていることを、川島は認識し始めた。()()に長く居てはいけない。タガが外れる前に、早々に現実世界へ戻った方がいい。


だから、詰め寄った。


「いいから早く船を出せ。」


ほら、こんな語気の荒い言葉を、初対面でそう簡単に、川島は投げない男の筈だった。


川島は、言い直した。


「頼むから、船を出してくれ。」

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