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第23話 シアと新しいベット

 


「では! これにて失礼いたします!」


「ありがとうございました」


 ペコリとお辞儀をしながらお礼を言って、ベットを運んできて設置してくれた業者の方たちを見送る。


 手際よく大体三十分くらいで設置してくれて、なかなか丁寧な接客対応だった。あの人たちには星三つを授けよう。シアもそう言ってたしね。


 そんな謎の上から目線ブームをかましながらベッドの置かれたシアの部屋に行くと。


「うお~っ! あははははっ! うおぉぉ~~っ!」


 両手両足を投げ出してベットの上でぽわんぽわん跳ねているシアがいた。‥‥‥コイキングかよ。


 まぁ、新しいベッドとかホテルのベットに飛び込みたくなる気持ちはわからなくはないけど。


「ほらシア、せっかく部屋綺麗にしたのにそんなことしてると埃が舞うぞ」


「あっ! 天斗! せっかくだから天斗も飛び込んでみますか?」


「俺はそんなガキじゃないぞ」


「そんなこと言ってぇ~、本当はうずうずしてるんでしょう?」


「‥‥‥」


「ほらほら! ひと思いにどうぞ!」


 シアが分かってますよと言わんばかりにベットから降りて飛び込むスペースを開けてくれる。


 ‥‥‥ぐぬぬ。確かに『雲の上で寝ているような!』って謳い文句で買ったからちょっと飛び込んでみたい気持ちはあるけど‥‥‥。


 ええい! これはシアのために買ったベットだけど元は俺の金なんだ! 何も遠慮する必要は無い!


「じゃあ、遠慮なく」


「はい! 思いっきり飛び込んでください!」


 吹っ切れた俺は少し後ろに下がって、シアに勧められるまま思いっきりジャンピングベットをする。


「うおぉっ!」


 思わず勢い余って結構な高さから飛び込んだのだけど、流石は最強マットレス。


 俺の身体を柔らかく受け止めてくれて、ほとんど衝撃も来なかった。


 そのままローリングサンダーゴロゴロとぐるぐる寝返りを打ってみれば、身体に合わせて細かくマットレスが変形してくれるからかまったく負担がなくて、これならベットに入ればすぐに眠ることができるだろうと思える。


 ったく、こんなに寝心地がいいなら俺の方がこっちのベットを使いたくなってくるぜ。俺のより良いのを買いおってからに。


 そんなことを思いながら心地よさに少しウトウトしていると‥‥‥。


「シア、いきま~~~すっ!!」


「え? ——ちょっ!」


「天斗! 受け止めてくださ~いっ!」


 シアがベット、というより明らかに俺に向かって飛び込んで来ようとしていて。


 助走をつけたのか俺より高い位置からシアが落ちて来た。


 俺は慌ててシアを受け止めようと腕を広げて、そのまま身体のど真ん中にシアタックルを受けて勢いよく倒れこむ。


「——うぐっ!」


 きっとこれまでシアが使っていた布団だったら俺はつぶれていたし、俺の部屋にある自分のベットだとベット自体が壊れていたかもしれない。


 それくらいの力強さだったものの、やっぱり流石は最強マットレス。その圧倒的な低反発により俺が少しうめくくらいの被害で済んでいた。


 これからは『雲の上で寝ているような!』じゃなくて『吸血鬼のタックルにも耐えられる!』って謳い文句に変えたほうが良いと思う。


「‥‥‥お前なぁ」


「えへへっ、あまとぉ~」


 俺の腕の中、飛び込んできたシアに抗議ジト目を向けるけど、シアは緩み切った表情で俺のお腹に頬ずりをしてくる。‥‥‥猫みたいだな。


「えへへっ、じゃなくてベットがあるとはいえ人が寝てるところにいきなり飛び込んだら危ないだろうが」


「天斗なら受け止めてくれると思って! 現にそうしてくれましたし!」


「それは咄嗟に動いちゃったからで‥‥‥てか、頬ずりやめろ! くっつくな!」


「いやです! 私、ずっとこうしたかったんですよ! 新しいベットも来たんですし、これからは毎日一緒に寝ましょうね!」


「いやいや! お前これ買う時に言ったこと忘れたのか? シア用のベットを買うからそっちで寝ろよって言っただろ」


「はい! ですから天斗も一緒に寝ましょう!」


「それじゃあベットを買った意味がないだろうが!」


「えぇ~‥‥‥でも、天斗が一緒に寝てくれないならダブルサイズを買った意味が無くなっちゃいますもん」


 ちょっとそうかもしれないとは思ってたけど、やっぱりそういう理由でダブルサイズのを選んだのか‥‥‥。お嬢様なシアは大きいベットじゃないと寝れないとかだと思いたかった‥‥‥。


 俺は「はぁぁぁ~~~~」と、特大のため息をつきながら、もう何度目かもわからないシアの説得を試みようとして——。


「ねぇ、天斗」


「——っ!?」


 気が付いたらいつの間にか俺のすぐ隣にシアが寝そべっていて、いわゆる添い寝。


 お互い吐息すら聞こえてきそうな近さにシアの綺麗な顔があって思わず息を飲んでしまった。



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