第6話:ミミック
---人食い箱”ミミック”。
×日。アグナの”遺跡内”にて遭遇。『お宝だ!』と不用意に近づいた仲間の1人が開いた箱の中に飲み込まれてしまった。近づく生き物は見境なく喰い殺す、生き物か定義できるか分からない怪物。数日間、調査を行ったが近づいて来たゴブリンや猛毒のトカゲといったものを見境なく喰っていた。また”獲物”が近寄るまでは排泄行為はないどころか一切微動だにすることはなかった。何年もアグナ遺跡を調査してきた中で初めて見る生物であったが、先日聞いた伝承から”ミミック”と名付けることにした。
その”伝承”通りであるなら、あの箱は厄災を呼ぶものらしい。さらに調査を行いたいが、食料が底をつきそうであったため、1度打ちきることにする。また、この場所に戻ればこの奇怪な生物と出会えるのだろうか?
×5日 アグナの角にて。えぇと、マロー・マロー著…」
「…ミミッ、ク?」
説明文と共に描かれた絵にはピタリと口が閉じた箱とぱっくりと大きく口を開いて人間を飲み込む様を描いたものが記載されていた。ハコミはふと、クライブの顔色が変わったことに気が付いて口を開こうとしたそのとき、クライブはびくりと身を震わせる。
「あ…」
「…あっ、僕は叔父さんのところの様子を見てくるね」
そういうとクライブはハコミから逃げるようにその場を後にする。
ハコミはクライブの様子の変化に驚きながらも、手に持った本を小脇に抱えるとクライブの後を追うように外へと出る。
「…ビンべさんのところは大丈夫か、これ」
地震の影響で街の至る所が崩壊し、家の屋根が落ち、レンガ造りの道路は凸凹になっていた。
混乱する人込みをかき分けて宿へと戻ると、そこには床に落ちて割れた皿を集めるビンべとソフィーの姿があった。そしてその横でその片づけをするソフィーと、一足先に戻ったクライブの姿があった。
「…っ!」
クライブはハコミの姿を確認すると、足早に部屋を出ていき自室へと行ってしまう。
その急な変化にハコミは首をかしげながらも、床に散らばった皿の破片などをビンべとソフィーとともに手伝うのであった。