表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/87

5、魔界

「キャーーーー!!!!」


 落ちるっ、落ちてる、イヤーーっ。

キャー、キャーキャー。

もう、ダメっ、死んじゃうーっ。

と思った瞬間、私の体がピタリと空中で止まり、そっと地面に着地した。


「アンナは、煩いわい、耳がもげると思ったわい」


「テリア様、ごっ、ごめんなさい⋯⋯。だってまさか落ちるとは思っていなくて」


「魔界は人間界の下にあるんじゃ、落ちるのは当然じゃろう」


「もっと、緩やかにというか、坂道みたく、くだって行けるとばかり思っていました」


「それでは、魔界にたどり着くのが遅くなってしまうわい。それより、周りを見てみろ、魔界じゃ、アンナが来たがっていた魔界についにきたぞ」


 そうだ、私は魔界に着いたんだっ。

私は立ち上がり、辺りを見渡した。


「わぁぁ、キレイ。なんて美しいんだろう」


 辺りは確かに薄暗いけど、私の遥か真上に広がる天上には色取り取りの光が輝いている。

まるで夜空に、大量の宝石を散りばめたよう。

その宝石の光が、魔界をほのかに照らしている。

また、紫色に光輝く蝶らしき魔物が、群れを作り、優雅に空を舞っている。

魔界には花も木々もあり、自ら発光している。

とても幻想的。


「そうじゃろう。魔界は魔界で美しい」


「それで、守人が住むお城はどこですか?」


「あそこじゃ」


 テリア様が指差す方向を私は見る。

その方向に、確かに銀色に輝く城があった。


「テリア様、随分遠いように思えます」


「城の領地は、広大なんじゃ。確かここからちょっと先に門がある。そこまで急いで歩くぞ」


「はい」


 私はテリア様の重い水が入ったリュックを背負いながら、一生懸命に歩く。

早く歩いているつもりだけど、明らかに、遅い歩み⋯⋯。

一歩、一歩が重い。

息も上がってきて、ゼエゼエ、フウフウ言い始める。


「アンナ、もっと早く歩くのじゃ」


「フゥっ、こっ、これでも、精一杯早く歩いているんですっ」


 私が必至に歩いていると、ようやく門らしき2本の柱が見えてくる。

その時、大きな影が頭上を横切り、バッサバッサと言う大きな羽の音が聞こえた。


「竜じゃ、それも火竜じゃ。アンナ、急いで門の所まで走るのじゃー」


 火竜は、もの凄く大きく、私よりも10倍くらいある。

皮膚は浅黒く、目は金色、口の中には鋭い牙がいっぱいある。


「ハァハァっ、テリア様、ハァっ、竜を追い払えないんですか?」


「唯一苦手なのが火竜なんじゃー」


「ええっー。でも水の魔法使えるんじゃないんですかっ」


「バカモンっ。火竜の炎は全てを焼き尽くす。水さえも一瞬のうちに消し去るわい」


 テリア様はそう言うと、私を一人置いてビューンっと先へ、門へ行ってしまった。

私も大急ぎで走るが、やっぱりというか、お決まりのように転んだ。

盛大に転んだ。

その次の瞬間、火竜の脚の爪が私目掛けて迫る。

しかし、セイフィード様のお父様が私に掛けてくれた防御魔法のお陰で、火竜が寸前のところで跳ね返された。


「たっ、助かった⋯⋯」


 私は急いで立ち上がり、門の所にいるテリア様の後を追う。

門に着くとテリア様は何かの魔法陣を発動させていた。

その門は2本のダイヤの柱で出来ており、高さは20メートルぐらいありそう。

扉とかは特に無いのに、私達はその門を通れないでいる。


「この門、通れないんですか?」


「門が、門の防御壁の魔法陣が以前と違っておる。解読するまで少々時間がかかる、なんとか耐えるんじゃ」


 って言われても、火竜の数⋯⋯、増えちゃいましたけど⋯⋯。

もう4匹もいる。

その火竜が次々と、私目掛けて襲ってくる。

しかし、私の腕輪の防御魔法も次々と発動し、4匹とも跳ね返した。

4匹とも跳ね返したけど、火竜は無傷でこちらの様子を見ながら旋回している。


 今の襲来で、私の腕輪にかけられていた防御魔法も全て使い果たしてしまった。

私にはもう後がない、次、襲われたらやられてしまう。


「おかしいっ。火を吹いてこんわ。どうやら殺す目的ではなくアンナを捕らえようとしておる」


「ええっー、なんでですかっ」


「もちろん、食べるためじゃろう」


「何とかして下さい、テリア様っ」


「もう少しじゃ。もうすぐで門を通り抜けられる」


 しかし、またすぐに火竜が4匹、私に襲い掛かってきた。

私は逃げることも出来ず、火竜の脚の大きな爪が、私の体を捕らえ、飛び上がる。


「テっ、テリアさまっ、助けて下さいーっ」


 火竜に捕らわれた私は、グングンと空高く舞い上がる。


「アンナっ、待っておれーっ」


 テリア様は火竜を追って来てくれたが、火竜がテリア様に向かって炎を吹き出す。

その炎の威力は凄まじく、遠く離れた地面にまで到達し、そこら一帯を黒焦げにした。

テリア様はその炎を避ける為に少し離れた場所に転移していて、無事のよう。

そしてすぐに、テリア様は追いかけてきてくれたが、私はどんどん、門からもテリア様からも離れていく。


 いやだっ。

やっと、魔界まで来たのにセイフィード様に会えないなんて。

会いたいよ、会いたいよ⋯⋯、セイフィード様。

せめて火竜に食べられる前に一目でもいいから、会いたかった。


 私が諦めかけた時、遠くにある銀色の城から、何か物凄いスピードで迫る7つの物体が見えた。

その7つの物体は、王冠を被ったフクロウ、闇の精霊のストラスだった。

火竜に追いついた7匹のストラスは、4匹の火竜に体当たりする。

そしてすぐにストラス1匹が私を捕まえている火竜の脚に噛み付く。

噛み付かれた瞬間、火竜は唸り声をあげ、私を離した。


 当然、私は落ちる。

さっき落ちたばっかりなのに、また真っ逆さまに落ちる。

今度こそ、本当に死んじゃうっと思った瞬間、またもや私の体がピタリと空中で止まった。

そして今回は地面ではなく、優しい手が、いつも私を優しく包んでくれていた手が、私を受け止めた。


 私を支えるその手はセイフィード様の手だ、セイフィード様が助けに来てくれた。

セイフィード様が私を抱きかかえている。

私は感極まって、ぶわっと涙が溢れ出た。


「セイフィード様、会いたかった、会いたかったです」


 セイフィード様は私をチラッと見ると、私を下ろしてくれた。

私はセイフィード様に会えてとても嬉しいのに、セイフィード様は全く嬉しくなさそう。

それどころか、厳しい表情をしている。


「アンナ、門まで走れ。もう通れるようになっている」


「はっ、はい」


 私はセイフィード様に言われた通り、門まで走り、門をくぐり抜ける。

テリア様も同じく、門を通り抜け、私の側に来た。


 その間、闇の精霊ストラスと火竜は戦っていた。

火竜は、火を吹いてストラスを撃退しようとするがストラスのスピードが早く全て避けられてしまっている。

逆にストラスは稲妻を伴った竜巻をおこし火竜を攻撃する。

その竜巻が4匹の火竜に襲うと、火竜はけたたましく唸り声をあげ、よろめいた。

その時を狙ってか、セイフィード様は呪文を唱え、空中に魔法陣を出現させた。

その魔法陣から、鋭い矢のような水が吹き出し、火竜の羽や脚を貫く。

かなり負傷したはずの火竜だったが、落下することなく飛び続けている。

しかし、火竜は私達を再び攻撃することなく逃げて行った。


「流石、守人じゃわい。超人的な魔法を使うわい」


「そうですよね、そうですよねっ、セイフィード様って凄いですよね」


 私はすぐにでも、セイフィード様に抱きつきに行きたかったが、門から出たら怒られそうなのでじっと待機していた。

そしてセイフィード様が門を通り抜けると、私をふわっと優しく抱きしめた。

私は嬉しくて、嬉しくて、ギュッとセイフィード様を抱きしめ返す。

あ、セイフィード様の胸の鼓動が聞こえる⋯⋯。

なんて、安らぐんだろう。

しかし、その安らぎを壊すかのように、セイフィード様は冷たい口調で私に言葉を発した。


「城に転移する」


 一瞬のうちに、門から城内へと転移した。

転移した場所は、大きな空間がある広間だった。

その広間は温かみある暖色系でまとめられている。


 転移しても、なおセイフィード様は私を離そうとしない。

私も嬉しいので、そのまま抱きついていたが、無言のまま、あまりに長く抱きついていたので、チラリと私はセイフィード様の表情を伺った。


 セイフィード様、やっぱり嬉しそうじゃない。

どちらかと言えば、さっきよりも辛そう。

もしかして、これは⋯⋯、逃げなきゃいけないパターンかも。

おそらくまだ、メデオ日は明けていないはず。


「バカアンナ⋯⋯」


 セイフィード様がボソッと呟いた。

やっぱり、これは逃げなきゃ、メデオ日が明けるまで逃げなきゃ人間界に送り返されちゃう。

私は、力の限り、セイフィード様を跳ね除け、遅いながらも走り出す。

我ながら走るの遅い。

それになんだか、お尻の辺り、ズキズキする⋯⋯。


「アンナ、どこにっ⋯⋯」


 セイフィード様が私を止めようと手を伸ばしたが、すぐに引っ込めた。

私は気になり、走りながら、セイフィード様を見る。

セイフィード様は自分自信の手を見つめ、青ざめている。

そのセイフィード様の手には血がべっとりと付いていた。


 私、出血してたんだ。

さっき、火竜の爪に掴まれた時、負傷したのかもしれない。

確かにズキズキするけど、走れるし軽傷に違いない。

そんなことより、今は逃げ切らなきゃっ。


「アンナっ、どこにいく。アンナは怪我をしているんだっ、動くなっ、アンナーっ」


 セイフィード様は、そう言うと私を追いかけてきた。


「私は、人間界に絶対に戻りませんっ。だから絶対に捕まらないんだから」


 私は力の限り走った。

セイフィード様から逃れるため、一心不乱に走った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ