4、報告
私とセイフィード様が、チァリティーイベント会場に戻ると、第二王子とシャーロットが待ち構えていた。
第二王子は、さっきとは打って変わって険しい表情をしている。
「セイフィード、魔法を使ったようだな」
「はい。それに関して報告があります」
セイフィード様がそう答えると、私達4人は場所を移動した。
イベント会場の少し離れた所に、テントが設置してあり、そこに私達は入り、席に着いた。
それにしても、セイフィード様、報告って何を報告するんだろう⋯⋯。
オリヴィア様が私を邪魔に思ってることって⋯⋯、第二王子には関係がない気がするけど。
「で、報告とは?」
第二王子が席に着くなり、セイフィード様を詰問した。
「この会場に、顔に傷がある黒猫がいました。その動向を探るため魔法を使いました」
「なっ、傷がある黒猫だと⋯⋯⋯、まさか⋯⋯⋯」
「はい、恐らくその黒猫は、ゲリーです」
「ええっーー!!!!」
えっ⋯⋯⋯、黒猫がゲリー⋯⋯⋯。
嘘でしょ⋯⋯⋯、
私は黒猫がゲリーだと言うことを聞いて思わず立ち上がり、第二王子とセイフィード様の会話に割り込んでしまった。
すると、皆んな一斉に私を見て、まぁまぁ、落ち着いてという表情をした。
私は恥ずかしくなり、慌てて席に着き、顔を伏せた。
第二王子は一呼吸し、セイフィード様と話を続けた。
「⋯⋯⋯まさか、ゲリーがロキ一族の生き残りとはな⋯⋯。見つからないはずだ」
私、ロキ一族って、本で読んだことがある。
確か、獣化できる一族だったはず⋯⋯。
カラスや黒猫、黒い犬、黒色の獣に変幻できるって書いてあった。
ただ、獣化できるために、忌み嫌われ、迫害され、滅ぼされたって⋯⋯。
「はい。黒猫の跡をつけたところ、オズロー男爵のご令嬢オリヴィア様と、知らない男1人で会話をしていました」
「オズロー男爵か⋯⋯⋯。確か貿易業で成功してたな⋯⋯。どんな会話をしていた?」
セイフィード様は第二王子に会話の内容を話した。
すると、第二王子は深く考え込み、しばらくの間、私をじっと見つめた。
な、なんで⋯⋯そんなに長く私を見つめるんだろう。
緊張する⋯⋯。
そして第二王子は一瞬、セイフィード様をチラ見し、再度、私の方を向いて口を開いた。
「アンナ、頼みがある。囮になってほしい」
えっ⋯⋯⋯⋯。
囮って、何?
何の囮???
私が何も返答さずに固まっていると、第二王子はさらに話を続けた。
「オリヴィアにとってアンナは邪魔者だ。だから、オリヴィアはゲリーを使って邪魔者であるアンナを始末させるよう依頼したはずだ。そして今、ゲリーはアンナを始末する機会をうかがっている。その機会を俺が作り出し、アンナを囮にして誘き寄せる」
「ダメだ。絶対にダメだ。囮なんてアンナには無理だ」
「ええ、そうですわ。アンナに囮なんて無理ですわ」
セイフィード様は私が囮になることに、強く反対し、第二王子に抗議した。
シャーロットも、同じく反対し、珍しく声を荒げた。
セイフィード様が言うように、私に囮なんて、できなさそう。
自分で言うのもなんだけど、私って間抜けな部分あるし。
いざって言う時、剣も魔法も使えないから、私⋯⋯⋯役に立たないし。
それに、ちょっと怖い⋯⋯。
セイフィード様もシャーロットも反対してるし、断ってもいいよね⋯⋯。
第二王子はセイフィード様とシャーロットの反対する声を無視し、私だけを見つめ、話を続ける。
「アンナ、君も、奴隷にされる恐怖を味わっただろう。もうこれ以上、そんな辛い思いをする犠牲者を出したくないんだ。これは君にしか出来ないことなんだ、頼む」
ずるい⋯⋯、王子自ら頼むなんて言われたら断りずらい。
それに、実際は奴隷にされなかったけど、それでも十分過ぎるほど恐怖を味わった。
こんな思いを、また誰かがすると思うと、心が痛い。
⋯⋯⋯本当に私にしかできないことなのかな。
私でも⋯⋯、少しは役に立つのかな。
「⋯⋯⋯⋯私、囮、頑張ってみます」
私がそう答えると、セイフィード様は、わなわなと体を震わしながら立ち上がり、私に怒鳴った。
「ダメだ、アンナ、もう無茶なことはしないって約束したはずだ」
「セイフィード様、わっ、わたしも何か役に立ってみたいんです」
「ダメだ、囮なんて危険すぎる」
「でっ、でも」
「でも、じゃない。アンナが囮なんてしなくてもいい」
その時、第二王子は低い声で、私達の会話に割って入った。
「セイフィード、アンナを守り切れる自信がないのか」
「⋯⋯⋯⋯」
「セイフィード、アンナが囮になることは決定だ。これからはどうアンナを守るか、考えるんだ」
「わかりました」
セイフィード様は静かに答えた。
けど、セ、セイフィード様⋯⋯⋯、すっごく怒っている。
私を思っ切り睨んでる。
こ、怖い。
「それでだ、アンナは、暫くの間、セイフィードとの接触を控えるんだ」
第二王子はニコリと笑いながら、私に言った。
えっ⋯⋯⋯⋯⋯。
なんで、どうして。
どうして、セイフィード様と会っちゃ駄目なの。
ええーーーー。
私は思わず、助け舟をもとめるようにセイフィード様の顔を見た。
セイフィード様は、そら言わんこっちゃないっという顔をした。




