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ファンタジーな世界に転生したのに魔法が使えません  作者: 花が咲く
第4章<アンナ特製魔方陣ノート>
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11、告白


「ご機嫌よう、セイフィード様」


 私はいつものように挨拶した。

今日は図書館ではなく庭園にあるガゼボに、セイフィード様がいる。

ただ、セイフィード様の周りには、いつもにも増して本が山積みになっていた⋯⋯。

何か調べ物をしてたのだろうか。


「なんだ、アンナ。ケーキ持ってこなかったのか、俺、結構、頑張ったはずだけどな」


「ご、ごめんなさい⋯⋯」


 やっぱり、ケーキ手作りするべきだった⋯⋯。

次回は作って来よう⋯⋯、って次はないかもしれない。


「まぁ、いいや。座れよ」


 セイフィード様は、自身が座っているすぐ隣の場所をトントン叩き、そこに座るよう催促した。

私は素直に従い、セイフィード様と触れるか触れないかの距離に腰を下ろす。


「わっ、わたし、今日は3つ、セイフィード様にお話しすることがあります!」


 私は威勢良く、セイフィード様に宣誓した。


「奇遇だな、俺も3つある」


「えっ⋯⋯、なんでしょうか⋯⋯?」


「俺から話していいのか?」


「えぇ、どうぞお願いします」


 もしかして⋯⋯、いきなりオリヴィア様のことだろうか⋯⋯。

緊張して手が汗ばむ⋯⋯。


「1つ目はジークのことだ。魔法陣学の助手のジーク、アンナが(なつ)いていたジークだ」


「別に⋯⋯、懐いていません⋯⋯、けど、ジークさんがどうかしたんですか?」


「舞踏会の爆発の犯人はジークだ。それと6年前に魔法壁の亀裂をさせたのもジークだ。ただ、今はジークは行方不明で、魔法騎士団が必死に探索中だ」


「そんな⋯⋯、どうして⋯⋯」


「ジークは、貴族を憎んでいる。首都は貴族が多く集まっているから、魔法壁に亀裂を生じさせ、魔物に貴族を襲わせようと目論んだんだろう。第2王子は個人的に恨まれているそうだ。だから第2王子主催の舞踏会が狙われた。その詳細はまた後日聞けるだろう」


「ジークさん、私のことも嫌いだったのかな⋯⋯」


「さあな。ジークに好意を抱いていたのか?」


 セイフィード様はじっと私の目を見つめる。


「抱いてません、好意なんて抱いてません。ただ、先生になって欲しいと応援してただけです」


「ふーん。次、アンナの番だ。話したいことって何?」


「あ、はい。1つ目は謝罪とお礼です!」


 と私が話し始めると、突然セイフィード様は体勢を変え、後ろから包み込むように私を抱き寄せた。


「謝罪とお礼って、1つじゃなく2つなんじゃないか。まあ、いいや。続き話せよ」


 セイフィード様は私の肩に頭を乗せながら呟いた。


「⋯⋯、ええっと⋯⋯、私の魔法陣ノートを見せた日ですけど⋯⋯バカって言ってごめんなさい」


 私は、ちゃんと謝りたかったのに⋯⋯、セイフィード様が近すぎて⋯⋯胸が高鳴りすぎて⋯⋯、うまく言葉が出てこない。


「なんだ⋯⋯、そのことか⋯⋯。忘れてたよ」


 セイフィード様は私の耳元で(ささや)く。


「それとお礼ですが⋯⋯、舞踏会で転んだ時、助けて頂いて、ありがとうございます。それに拉致(らち)された時も助けて頂いて、本当にありがとうございます」


「あぁ」


 セイフィード様は今度は私の髪を(いじ)りだす⋯⋯。

その行為が、クスぐったいけど、気持ちが良くて⋯⋯、そして⋯⋯、私の体は、ほのかに熱を帯びた。


「俺の2つ目は、拉致の件だ。話をするというより、アンナに聞きたいことがある。なぜあの店に行った?」


「ええッと⋯⋯、それはジークさんに私の腕輪と同じものがその店に売っていると聞いて⋯⋯⋯⋯」


 私は事細かくセイフィード様に説明した。

私が自分の腕輪を外してしまったこと、黒ずくめの不審な人物が私のノートを探してたこと、店の地下に監禁されたこと⋯⋯全部話した。


「アンナは、俺が近づくなと言ったジークの言葉を信用したんだな」


 私の腰に手を回しているセイフィード様は、更に強く私を抱きしめる。


「ごめんなさい」


「俺の腕輪も、外したんだな⋯⋯」


「ごめんなさい⋯⋯、セイフィード様。本当に、本当に反省しています」


「その黒ずくめの不審な人物は、恐らくジークだ」


「ジークさんが、なんで、私なんかの魔法陣ノートを、そこまでして奪いたかったんでしょうか⋯⋯」


「それは、アンナが作る魔法陣は奇想天外なものだからだ。魔法壁にしろ、シールドにしろ、どんな攻撃魔法陣がくるか想定して作るんだが⋯⋯アンナのは想定外すぎるから通り抜けできてしまうんだ」


「そうなんだ⋯⋯」


「あの城での舞踏会も、アンナの魔法陣が一部使われていたせいで、魔法壁がうまく働かなかった」


「私⋯⋯、捕まったりしませんよね⋯⋯」


「大丈夫だ。そんなことは俺がさせない。で、アンナの2つ目の話って何?」


 とうとう、とうとう、オリヴィア様のこと⋯⋯、話す時がきた。

緊張で体が汗ばむ⋯⋯。

怖い。

とても怖い。

でも、今日の目的は、オリヴィア様の婚約の件が主だ。

アンナ⋯⋯覚悟を決めるんだ!!!

頑張るんだ!アンナ。

私は自分自身を奮い立たせた。

そして、私は意を決っして、大きな声を上げた。


「オリヴィア様のことです!!!」


「オリヴィアがどうかしたのか?」


 セイフィード様はオリヴィア様を呼び捨てにした⋯⋯。

仲いいんだ⋯⋯。

そう思ったら⋯⋯涙がこみ上げてきた。

でも、泣いちゃダメだ。

最後まで、話し続けなきゃ!


「オリヴィア様と婚約したって本当ですか?」


 とうとう、私は言ってしまった⋯⋯。

セイフィード様の顔が怖くて見られない。


「⋯⋯⋯⋯」


 セイフィード様は無言だ。

どうして、無言なの⋯⋯。

不安で胸が苦しい⋯⋯。


「どっ、どうなんですか?」


 私はもう一度訊いた。

するとセイフィード様は私の手から、私のメモを奪い読んでしまう。


ーーメモーーーーーーーーーーーーー

1、セイフィード様に謝罪&お礼

2、オリヴィアさんの婚約のことを聞く。

3、婚約してたら別れる/婚約してなかったら告白

ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ふーん、婚約してたら別れるね」


 セイフィード様はメモを読み上げながら私を横目で見る。


「婚約してるんですか⋯⋯?」


「婚約? オリヴィアと? してるわけがない」


「えっ⋯⋯、婚約してないんですか?」


「していない」


「お父様から聞いていないだけとか?」


「それはありえない。うちの父は縁談とか、そういうめんどくさいことには極力関わらないから、すぐに俺へ話が来る」


「⋯⋯⋯⋯そうなんだ。オリヴィア様はセイフィード様と婚約するって言ってたのに」


「アンナは、俺とオリヴィアが婚約すると思って、違う腕輪を購入しようとしたのか? 俺から離れるために」


「⋯⋯⋯⋯そうです」


「いいか、アンナ、何があっても俺から離れることは、許さない、わかったな」


「⋯⋯⋯⋯はい」


「で、俺は婚約してなかったわけだが」


「そうですね⋯⋯、はい⋯⋯⋯」


「このメモには婚約してなかったら、告白するって書いてあるぞ」


 セイフィード様は、わざわざ私のメモを、私に見せながら、言葉を発した。

そして、セイフィード様は私の髪の毛をくるくると自身の指に巻きつけ口元に寄せる。


 もう⋯⋯、これは⋯⋯、告白するしかない。

逃げられないし、今言わなければ、チャンスはもう巡ってこないかもしれない。

最後の踏ん張りだ、アンナ、頑張るんだ⋯⋯。

私は自分で自分自信を精一杯応援した。


「わっ、わたしは⋯⋯、セイフィード様のことが⋯⋯⋯⋯、だっ、だっ、大好きです」


 私は言い切った。

ちゃんと告白ができた。


「そうか、わかった」


「え?」


 わかったって⋯⋯⋯、どういうこと???

告白の返事で、“わかった” なんて想定外なんだけど⋯⋯。


「そうそう、俺の3つ目の件は腕輪だ。改良しておいたぞ」


 セイフィード様はそう言うと、私に腕輪をはめてくれた。


「えっ⋯⋯⋯⋯、ええっと⋯⋯」


 お礼を言わなきゃいけないのに、セイフィード様の “わかった” 発言で動揺(どうよう)している私は、うまく言葉が出てこない。


「この腕輪、俺しか外せないようにしたからな。色々と調べたが、アンナを守るためには、それが一番確実な方法だ」


 セイフィード様は満足げに話す。

⋯⋯⋯⋯、なんかそれって私の脳裏に束縛(そくばく)という文字が浮かんだんだけど⋯⋯。

私がなんと答えていいか、戸惑っていると、メイドさんが迎えにきてしまった。

時間ですから帰りますよと言われて⋯⋯。


「じゃあ、アンナ。またな」


帰り際に、セイフィード様は珍しく、少し笑みを浮かべていた。


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