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ファンタジーな世界に転生したのに魔法が使えません  作者: 花が咲く
第4章<アンナ特製魔方陣ノート>
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7、牢屋

 店のカウンターに置いた私の腕輪を、店主は勝手に取り上げ、ジロジロ見定めている。

特に、ダイヤの部分を念入りに見ている。


「すげーなあ、嬢ちゃん。この腕輪、ダイヤがはめ込まれているじゃないか」


 私は、ベタベタ触らないで下さいと、強く言いたかったが、ぐっと(こら)えた。

そして、私は店主が差し出してくれた腕輪をはめてみる。


「どうだい、嬢ちゃん。いいだろ」


「はい⋯⋯」


 そう答えたけど、私は自分の腕輪の方が断然良かった。

試しにつけた腕輪はやっぱり重いし、なんとなく手錠を付けている気分になる。

しかし……、贅沢(ぜいたく)は言ってられない。


「嬢ちゃん、そこにある魔術書開いてみろよ。ちゃんと腕輪が機能しているか確かめてみな」


「はい」


 私は指示された魔術書をそっと開く。

次の瞬間、つけていた腕輪がバチバチと音を立て、黄色の閃光が走り、私の身体にまとわりつく。

同時に、全身が(しび)れ、私は床に倒れこむ。

また倒れた拍子に私は頭を打ち、じんわりと血が(にじ)む。

そしてすぐに、強烈な痛さが全身に襲ってきた。


「うぅ⋯⋯」


 私は痛さに耐えきれず、小さく(うめ)く。

なんとか私は身体を起こそうと試みるが、身体は全く言う事を聞かない。

けれど、意識だけはかろうじて私は失わなかった。

一体、何が起きんだろう。

物凄く痛い、全身が痛いよ。

もしかして腕輪は不良品だったのだろうか⋯⋯。

私が痛みに、もがき苦しんでるいると、店主はニヤニヤしながら近づいてきた。


「はは、嬢ちゃん。警戒心なさすぎ」


 店主は倒れた私の顔を(のぞ)き込むと、臭い息を吐き出し、私に言葉を投げかけた。


「なんっ、うっ、うぅ⋯⋯」


 私は、なんでこんなことしたんですか、と問い詰めたかったが痛みでそれどころじゃなかった。

そんな私をよそに、店主は私の(かばん)の中を(あさ)り、何かを探し始める。

ウー様から頂いたお守りを探しているのだろうか⋯⋯。

私は、ウー様から頂いたお守りは、小さな袋に入れ、ポケットに入れてある。


 店主が夢中になって私の鞄の中を探していると、突如、店の奥から、黒ずくめの怪しい人物が現れる。

私はどこかで、見覚えがあるような気がした……。

そして、その黒ずくめの人物が、店主に尋ねる。


「あったか?」


「いや、それらしきノートは、ありませんぜ」


「見せてみろ」


今度は、黒ずくめの人物が私の鞄の中を漁る。


「チッ……、ないな」


「どうしやすか?」


「もういい。後はお前に任せる」


「エヘヘ。いいんすか。じゃあ遠慮なくそうさせて頂きやす。あ、この腕輪も頂戴しても?」


 店主は気味悪く笑い、私の腕輪を黒ずくめの人物に見せる。


「それは、やめたほうがいい。この女から腕輪を遠く離せば、何かの魔法が発動するはずだ」


「くそ、ダイヤは高く売れるのに。じゃあ、嬢ちゃんに腕輪させといた方がいいんすか?」


「それも、やめたほうがいい。その女の鞄にでも入れておけ」


「へい、わかりやした」


 店主が私の鞄に、私の腕輪を放り込んだ。

そして店主が、私と私の鞄を持ち上げ、肩に担ぎ、店の奥に行く。

店の奥の部屋には地下に続く階段があり、その階段を店主は、私を抱えたまま降りる。

地下は意外に広く、荷物が所狭しと置いてある。

その地下の一角に、牢屋があった。

私はその牢屋に乱暴に降ろされ、手と足に縄をかけられ拘束される。

驚いたことに、私と同じような年代の女の子が5人もいる。

みんな、恐怖に震え、泣き()らした顔をしていた。


「嬢ちゃん、大人しくしてるんだ。そうすれば痛い目にはあわないぜ」


 店主はそう言うと、牢屋に鍵をかけ、どこか行ってしまった。


 牢屋に入れられ、どれくらい時が過ぎたんだろう⋯⋯。

だいぶ、身体の痛みが取れてきた。

私は思い切って、うつ伏せの状態から、身体をくねらせ、上体を起こす。

一瞬、鈍痛が襲うが何とか耐え、私は牢屋にいる女性たちに話しかけた。


「あ、あの⋯⋯、これから私達、どうなるんでしょか⋯⋯」


「ひっく⋯⋯ひっくっ⋯⋯売られるのよ」


 泣きながら、可愛らしい女性が答える。


「みんな、他国のお金持ちに奴隷として売られるの、性奴隷よ」


 青ざめた女性は、吐き捨てるように言葉を発する。


 最悪だ、奴隷だなんて。

私はなんて馬鹿なことを、してしまったんだろう。

腕輪さえ外さなければ、こんな事に、ならなかったかもしれない。

セイフィード様も、私の腕輪には特殊な魔法が施してあるって言ってたのに⋯⋯。

もう、セイフィード様に会えないかもしれない。

嫌だ、そんなの⋯⋯。

涙が(あふ)れ出そうになる。

⋯⋯ダメだ、泣いちゃ。

何か考えないと⋯⋯、脱出する方法を。

私には力も魔力もない⋯⋯、考えるだけしか能がないんだから。


 私は出来る限りのことをしようと試みた。

まず、手足に縛られた縄を(ほど)こうとしたけど、全く無理だった。

牢屋にいる女の子達に、お互いの縄を噛み切ろうって提案したけど、この縄は魔法の縄だからナイフでも切れないとのことだった。


 他に何かいい手は⋯⋯、あ!そうだ。

ウー様のお守り⋯⋯、ウー様のお守りにお願いすれば助けてくれるかもしれない。

私は、ポケットに入っているウー様のお守りに手を当てて、一心にお願いをした。

ウー様、お願い、助けてくださいっ。

⋯⋯⋯⋯⋯。

⋯⋯⋯⋯⋯。

⋯⋯⋯⋯⋯。

全く、何も起きなかった。


 あと残る手は、私の腕輪だ。

私の腕輪をどうにかして鞄から出して、つけることができたら腕輪が助けてくれるかもしれない。

私は牢屋にいる女の子に協力を(あお)ごうと、話しかけた。


「あの⋯⋯、皆さんにお願いがあります。私の鞄から腕輪を出すのをてつ⋯⋯」


と私が言いかけた時、階段を降りる足音が聞こえてきた。


「ヒィッ、こ、怖いよ⋯⋯」


 女の子達はその音に反応し、泣き始めパニックに(おちい)ってしまう。

足音が近づけば、近づくほど、私も恐怖で体が震え、何も考えられなくなってしまう。

落ち着かなきゃ、落ち着いて何か考えなきゃ⋯⋯。


 そして、その足音は牢屋の前で止まり、店主と、頬に傷がある男性が私達を見下ろし、立っていた。

また頬に傷がある男性は、目が鋭く、剣を携えている。


「あの、女は?」


 頬に傷がある男性が私を指差しながら店主に尋ねる。


「あぁ、この嬢ちゃん、貴族のご令嬢らしいですぜ」


「貴族には手を出すなと言ったはずだが⋯⋯、後々面倒なことになる。だが、この女⋯⋯、高く売れそうだ。青い目に金髪、身体もいい⋯⋯」


 頬に傷のある男性が、私を値踏みするよに、全身をじっと見る。

私は全身から血の気が引くのを感じた。


「へへ、それにこの嬢ちゃん、全く魔力がないらしいですぜ」


 いやらしい目つきで店主も私を見る。


「ほぉ。それはいい、さらに高値で売れそうだ」


 頬に傷がある男性は、満足気に笑う。


 どうしてなんだろう。

魔力のない私なんて、商品価値ゼロだと思うのに。

なんで私なんかが、高値なんだろう。


『シ・ジューム・デアボリ』


 頬に傷がある男性が、牢屋に向かって、突如、呪文を唱えた。

その呪文はかつて、ルシウスが私に使った、声が出せなくなる魔法だ。


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