穏やかな心を持ち、激しいエロによって目覚めた主人公は嫌だ
「では、レッド・ドラゴン退治の成功を祝して……かんぱーい!」
「かんぱーい!」
祝勝会ということで、ウモナが作ったご馳走と、地酒で乾杯をすることになった。
この世界では十五歳で成人らしいので、クウゴは立派に大人ということで酒を楽しむことができるそうだ。
生まれて初めて、酒というものに口を付けたが、ビール系の苦さではなく、甘味ある果実酒で、日本で例えると、梅酒系のものだった。
香りが良くて、クウゴは思ったよりもジュースに近いので、飲みやすく思った。
メンバーの中では未成年なのは、エマクオンとキロルだ。キロルは正直なところ、未成年という括りに入れていいのか疑問だが、中身が八歳である以上はお酒はダメだということにしておいた。
「やっぱり、冒険の〆と言えばお酒よねェ❤」
ぐびりと一気に飲み干して、ウモナが紅い顔で言った。
意外にも酒に酔いやすいのか、すでにいい感じの様子である。
「オラ、酒って初めて飲んだぞ、うんめぇーンだなぁ!」
「クーゴ、お酒初めてなんだ……?」
「じゃあ、早いところ、自分の限界を知っておくためにも、今日はジャンジャン飲むべきヨ❤」
ウモナはそう言うと、クウゴのグラスにジャブジャブとお酒を注いでいく。
「万が一酔っぱらって潰れても、ちゃぁんと、ア・タ・シが介護してあげるから、安心して潰れていいわよン」
「い、いや、そうならねぇように気を付けるぞ」
「ボクも飲んでみたい」
「アンタはダメ! あと一年待ちなさい。成長期に酒飲むと、育たなくなるわよ」
「……じゃあ飲まない」
エマクオンは、すぐに掌を返して、水を飲む。
お酒が美味しいのは認めるが、ウモナが用意した料理も絶品の味だった。
クウゴは、ガツガツとご馳走を食べまくり、おかわりを繰り返してしまうほどだった。
「エリは、酒は飲んだことあんのか?」
「うん、嗜むくらいだけど」
「へえ、なんかしっかりしてんだな。ちょっとおめえが酔っぱらってるとこ、見てみたいぞ」
「えっ、ど、どういう意味?」
クウゴの何気ない言葉に、エリはドキンとして反応していた。
クウゴも徐々に酒が回ってきて、少しばかり口が回りやすくなる。
「い、いや深い意味はねぇけど、なんとなくどうなるのか気になっただけだ……」
「そ、そういうことなら、クーゴのほうがどんなふうに酔うのか気になるわよ」
「初めて酒を飲むし、変な酔い方をして、迷惑かけちまったら悪ィから、気を付けねぇとな……」
お風呂場でも思い知ったが、この館には男はクウゴ一人だけだ。
女の子ばかりに囲まれたなかで生活していくのは、色々と胸の鼓動を高鳴らせるイベントで目白押しになるかもしれない。
そんな中で冷静さを欠いて酔っぱらったら、どうなってしまうのか……。
ハッキリ言って、みんな女性としては可愛いし、綺麗だし、色っぽい。
酔った勢いで、タガが外れて……なんてことにならない、とは言い切れない。
クウゴは、自分がしっかりとしていないと、彼女たちを悲しませてしまうだろうと、自戒をしていた。
せっかく、こんなに頼もしくて、素晴らしい仲間……、いや家族のような関係を結びつつあるのだ。
それを台無しにするようなことはしたくない。
間違っても、酒に酔って女性を襲うなんてことはしないようにしなくては。
酒ひとつ飲むのに、考えすぎだろうと思われるかもしれないが、クウゴだって、十七歳の健全な男子であるため、それなりに意識はするのだ。
特に、さっき見たお風呂場でのアレソレは、どうしようもなく、理性を飛ばしてしまいそうになる事件だった。
もし、自分がそれでプッツンしてしまったら、変身してしまうかもしれないではないか。
大事な仲間を殺されて、怒りによって変身するならまだしも、可愛い女の子の裸を見て、伝説の超転生人に変身したら、格好がつかない。
エリリンのことかー!
とか言ってしまうのだろうか。うーん、ひどい。
「ねえねえクーゴ! ケーキ食べても良い?」
キロルが、デザートに用意していたケーキを早くも食べようと提案してくる。
まだテーブルの上には料理があるから、きちんと残さず食べるように注意する。
「ちゃんと、全部食べてから、ケーキな」
「えー! 私もうケーキ食べたいのにー」
「大人はお酒を飲むのに、ボクたちはケーキも食べさせてもらえないのか」
エマクオンまでキロル側について、抗議してきた。
どうやら、のけ者感覚にされていて、少し不貞腐れているようだ。
そんなキロルとエマクオンに、エリがしょうがないなあと笑顔を向けて、ケーキを切り分ける。
「今日はお祝いだしね」
「エリさすが~!」
「お酒の分も、ケーキで楽しむ」
甘い匂いをさせるケーキを食べ始めたキロルとエマクオンは、なんだか仲のいい姉妹のようにも見える。
「ほらほら、クーゴ。飲みなさいって~」
「ウモナ、おめえアルハラだぞ」
「なにそれ、知らない~。クーゴ冷たい~」
「よ、酔ってるな……」
妙に絡んでくるウモナは、呂律が回らなくなっている様子だった。
見れば、瓶が一つ空になっていた。
あっという間に、一人で一本飲み干していたのだ。
「ちょ、ちょっとウモナ! 飲み過ぎじゃない?」
「そーゆーアンタは、なにいい子ちゃんシてんのよ! 前からずーっと思ってたけどねえ、そんなんじゃ、お姉ちゃんみたいに、男に告白できないまんまで終わっちゃうんだよぉーっ」
ウモナの声が大きくなって、そして徐々に涙を浮かばせていく。
自分で姉の話をしたくせに、それを思い出して悲しくなってしまったようだ。
「うぇぇ……お姉ちゃん……。だから、アタシ言ったのにー!」
そして大泣きし始めるウモナ。
「……泣き上戸だったのか……」
クウゴはエリと共に、ワンワン泣き始めたウモナにジト汗を垂らしてしまった。
「好きなら好きって言わないと、絶対後悔するからぁ!」
「ボクもそう思う」
「わ、分かったから、ちょっと落ち着けって……」
「クーゴぉっ……アタシ、ダメな女かなあ? ちゃんとできてるかなあ? アタシ、ほんとはすっごく怖かったんだよぉーっ」
ウモナが涙と鼻水を零しながら、クウゴに抱き着いてくる。
もう、完全に酔いでメチャクチャになっていた。
……なんとなくではあるが、ウモナがどこかで精神を張り詰めているのは知っていた。
酒の力でそれが崩れて、内面がさらけ出されたのかもしれないが、これは後で酔いがさめた時、余計に思い出したくないのではなかろうか。
「で、でえじょうぶだ。オラ、ウモナが居なかったら、金の管理もできなかったから。だから、なっ? げ、元気だせって!」
「クーゴぉっ、アンタほんとにイイ男だよねっ。大好きだよ、だいすきだいすきっ」
ぎゅうと、抱き着いてきて、泣きながら大好きを連発するウモナは、もう手に負えない状態だった。
「ちょっとウモナ! の、飲み過ぎだから、落ち着いてっ」
「エリ~! ほんとはアンタのことだって、好きなんだよ? アンタ、すごい可愛いじゃん。ねえ、クーゴ、エリ可愛いよね?」
「はっ? え、あ、ああ……。か、可愛いと思う……」
「な、何言ってんのよ、もう!」
「エリ、可愛い……。ねえ、キスしよ? キス、んー……!」
「ちょ!? ちょっとー!?!? んぅっ……んんー!?」
ウモナが感極まったような顔で、クウゴの次はエリに抱き着くと、今度はそのまま押し倒して、唇を無理やり奪ってキスをし始めた。
押し倒されたエリは、そのままウモナに強引にキスされて悶えているのだが、熱烈なキスはエリを逃がすまいと、絡みつくようにマウントをとっていた。
美女と美少女の絡み合いは、なんだか妙に色っぽく、クウゴは天を仰ぐしかできなかった。
(ウモナ……オラは今日のことは何も覚えてねぇから……安心してくれよ)
ウモナは、自分たちのパーティーに加わるうえで、最年長だし世渡りが上手い女として、『強い女』を演出しようとしていたようだが、やっぱりそれは必死に自分で作って来た殻みたいなものだったのかもしれない。
こうして、酒に酔って本音をぶちまける彼女は、本来お姉ちゃんが大好きだった、甘えん坊の妹なのかもしれない。
「ちょっとクーゴぉ! た、たすけ……はむっ、んっ……あっ……だめっ……」
もみくちゃになったエリがウモナにキスされて、喘いでいた。
着衣が色々と乱れていて、ピンク色の世界になっていたので、クウゴは救いを求めるようにエマクオンたちに振り向いた。
エマクオンとキロルは、仲良くケーキを食べて、「大人って大変だね」と話していた。
どうやら、まだまだクウゴは何が起きてもへのへのカッパ、と言うわけにはいかないようだ。
こうして賑やかな祝勝会はハチャメチャのなかで終わりを迎えた。




