あのBGMを流しながら読んでください。
続けてしまいました。
第二章がはじまるんじゃよ。
前回までのあらすじ……。
スローテンポなプロローグのBGMを乗せて――。
心臓病により、僅か十七歳という若さであの世へと旅立ってしまったクウゴ。
目が覚めると、そこは異世界の山小屋だった……。
不意を突いて襲い掛かって来たドラゴンを退治すると、町で持て囃され冒険者になるため王都へと旅立つことに。
しかし、その道中ならず者たちから、銀髪の美少女、エリを救い出す。
「クーゴになら、見られてもいい、し……」
河で水浴びをするエリの裸を見て、王都まで共に旅をすることになった。
やがて到着した王都シントーワにて、冒険者ギルドに赴くと、測定珠を使った冒険者ライセンスの登録が行われたのだが、クウゴのとんでもない力を隠して測定をしたため、不自然なステータスとなってしまった。
怪しまれながらも、クウゴとエリは冒険者として登録が完了しクエストを受けることにした。
クウゴは一刻も早く世界を平和にして、のんびりとこの異世界で暮らしたいと考えていたため、最初からAランクのクエストを受けることにする。
そこで仲間に加わった双刃のベルセルクの異名を持つ少女、エマクオン。
彼女はS級ランクの冒険者であり、少し変わった生い立ちをしていたため、クウゴに興味をそそられたのだ。
「ボクの身体、触っていいよ」
A級のクエストをクリアし、クウゴたちはついに、冒険者ランクがAとなった。
いよいよ世界を脅かすドラゴン退治のミッションに参加する予定だったのだが……。
颯爽と登場した女シーフのウモナにより、信じられない事実が明らかになる。
なんと、世界を蹂躙するドラゴンは、シントーワの国王が呼び寄せているというのだ。
ドラゴンの中には七色で構成された超強力なドラゴンがおり、そのドラゴンが持つボール。七竜玉を集めることで虹のドラゴンが願いを叶えてくれるという。
シントーワの国王はその虹竜をつかい、願いを叶えるために世界中を巻き込んで、ドラゴンを呼び寄せている。
その事実を確かめるため、不審な城の探索を行うと、奇妙な痕跡があった。
クウゴたちの仲間になったウモナは、姉の仇を取るため、そして自分も虹竜に願いを叶えてもらうため、共にドラゴン退治に参加することを宣言する。
「あんがと、クーゴ❤」
クウゴの頬にキスをして、いよいよパーティーメンバーも四名となり、冒険者らしくなったところで、ドラゴン捜索の旅に出るのだが――。
森の奥にひっそりと佇んでいる洋館にやってきた一行は、そこを隠れ家にするため、館内の捜査を行っていた。
なんとそこには亡霊が取り憑いていた。ここは、ネクロマンサーの住処だったのだ。
亡霊になってしまった少女、キロルに館を利用させてくれと頼むと、キロルは了承し、クウゴたちは一つのベッドで一緒に肉体を密着させて、抱き合うように眠るのだった。
「みんなも、一緒に寝ようね!」
こうして、クウゴは旅の仲間たちと、異世界で生活するための家を獲得し、ひと時の休息を入れたのである――。
………………。
…………。
……。
ここで軽快なタイトルBGM。
「第二章開始! 倒せ、レッド・ドラゴン!」
…………。
クウゴはここまでのあらすじを見て、思った。
「なんか、ラッキースケベなシーンばっか抜粋されてねぇか?」
二章も、本作の方向性は変わらないだろうという示唆であることは、登場人物たちには内緒なのである。
◆◇◆◇◆
ズドドッ――!
地を揺らす重々しい音が響き渡っていた。
広大な森の中、木々が騒めき枝を揺らす。
魔獣、ジャイアント・ボアの巨体が木々を押し倒しながら、突撃してきた。
クウゴはその目の前に迫るジャイアント・ボアを見据えて、動かない。
現代のダンプカーみたいに巨大で威圧感があり、激突すれば骨がバラバラになってしまいそうな重量級のタックルをしかけてくる。
鋭い牙も持っていて、あれで一突きされたら即死してしまうだろう。
「ブオオオオオッ!」
野太い鳴き声を響かせ、魔獣はクウゴを標的と見定めるとその顎から伸びる二本の牙を鈍く輝かせ、突進してくる。
ズンッ……!
クウゴは回避せずに、その牙を両腕で捕まえると、何トンという衝撃力を受け止めた。
「ブモッ!?」
驚いたのはジャイアント・ボアのほうだった。
まさか自分の突撃を、真っ向から受け止められると思わなかったらしい。
「わりぃな、今日のメシになってもらうぞ!」
クウゴはそう言うと、捕まえていた牙の間で軽く飛びあがったかと思うと、そのまま両足でドロップキックするように、ジャイアント・ボアの顔面に一撃を突き込んでいた。
ドグッ――!
ズゥウウー……ン。
そのキック一撃で、ジャイアント・ボアは昇天していた。
巨体を倒し、地響きを響かせて、周囲の樹の枝を震わせる。
くるんと身を返し、クウゴは軽業を決めると、仕留めた獲物に手を合わせる。
そして、全長三メートルはあるだろう、巨獣を持ち上げると、ふわりと空に舞い上がった。
スキル【気】を使った空中移動である。
クウゴが森の中から抜け出て、館を見付けると、そっちへと向かい空を駆けていく。
あれこそ、我が家。異世界で自分が拠点にしている、幽霊屋敷だ。
太陽の位置を見ると、まだまだ高い。
今日の狩りは直ぐに片付いてよかったとクウゴは思っていた。
シューンと空気を切りながら、その館の前に降り立つと、出迎えてくれた少女がいた。
黒のマジカルドレスに身を包む、銀髪の乙女、パープルの瞳は少しミステリアスなところもあり、蠱惑的だ。
「おかえりなさい、クーゴ」
にこりと柔らかく笑んだ少女は、魔法使いのエリ。
クウゴの仲間の一人で、年齢もクウゴより一つ違うだけの気のしれた関係だ。
「ただいま。大猟だぞ」
どすん、と倒したジャイアント・ボアを降ろすと、クウゴはサムズアップする。
「こ、こんなモンスターまでいるの、この森……」
ジャイアント・ボアの姿を見て、エリは目を丸くしていた。
エリ一人では絶対に倒せないような凶悪なモンスターだった。
「じゃ、オラこいつを捌いてくるから、あとで料理を頼むぞ」
「……あ! ま、まって! クーゴに話があるのよ! そのために戻ってくるの待ってたんだから!」
呆気に取られていたエリが、我に返ったように慌ててクウゴを呼び止めた。
クウゴはエリの様子に何事かと振り向いた。
「実は、クーゴが狩りに出た直ぐ後に、ドラゴンの反応が鏡にあったの」
「赤いやつか?」
エリの言う、『鏡』とはシントーワの魔術師から借りている竜の居場所が分かるというレーダー機能を持っている魔法の鏡だ。
その鏡にはドラゴンの居場所が光点で表示されるのだが、白い点は普通のドラゴン。そのほかの色で光っていた場合、伝説の七竜のひとつであるらしい。
クウゴたちが旅に出たのは、シントーワのミッションを受けたからだが、そのミッションも、赤いドラゴンの反応があったから、それを探してこいというものだった。
赤い光が目撃された方に旅を進めていったが、ついにその反応があったようだ。
「赤い光が、チカチカ点滅してたの。ここからずっと西のところだった。でも、今はまた赤い光が消えてるの」
「消えたってことは、倒されちまったのか?」
クウゴはその鏡の効果がどれほどのものかを検証するため、ドラゴンを倒したらどうなるかを試したことがある。
結果、ドラゴンを倒すと、その光点は消えることが分かった。
どうも、この魔法の鏡は、ドラゴンが持っている特有の魔力反応を拾って、表示させているかららしい。
だからドラゴンが死ぬと、光も消えるのだ。
しかし、エリは首を横に振っていた。
「倒されてないと思う。この赤い光って、ずっと妙なの。ついたり消えたりを繰り返してる。まるで、気配を消すみたいに」
「……オラがやってるみてぇにか!」
クウゴは【気】を操作して、自分の力を調整できるようにしている。
あまりに強大な自分の力は、計測珠を破壊する程に凄まじいので、気配を消すことでなんでもないようなステータスを見せるようにしている。
もし、赤いドラゴンも、それと似たようなことができれば、見つけ出すのが厄介になるだろう。
だからこそ、クウゴたちに、こんなミッションが与えられたのだろうが。
「その赤い光が消えたところは、何かあるのか?」
「……ボク、知ってるよ」
エリと二人で話し込んでいると、そこに顔を出したのはエマクオンだ。
凄腕の冒険者で、ドラゴンを倒した実績もある二刀流剣術の使い手である。
「知ってんのか? エマクオン」
「うん、あの辺りは魔法学校がある。ムアル=ダステム魔法学校」
「全ての魔法がそこに集まるなんて言われている、この世界で一番大きな魔法学校ね。私も行ってみたいと思ってたところのひとつだわ」
エリは魔法に関しての才能が生まれもってあるためなのか、その魔法学校には興味があったようだ。
かなり有名な場所のようだが、そんなところにドラゴンが現れたなら、すぐに騒ぎになって報告が入りそうなものだと思った。
とはいえ、反応はそのあたりで消えているし、その赤いドラゴンは目立つ色の割に、慎重なのか気配を消すことも出来るとあって、一筋縄ではいかない存在かもしれない。
クウゴが少し考えていると、ウモナまでやってきた。
「みんな揃って何してるの。それ捌いてくれないと、ご飯できないわヨ」
「あ、そうだな。これからのことは食事の時にでも話そう。オラ、腹が減ってたまんねぇや」
クウゴは狩猟してきたジャイアント・ボアをもう一度担ぐと、館の裏手に向かっていった。
そして、何気なく西の空を見上げた。
一波乱ありそうだな、と予感が告げていた。
レッド・ドラゴン。赤い竜。想像をするに、火炎の属性を纏った狂暴な存在だろう。
大抵RPGなんかで出てくるレッド・ドラゴンはそういうものだ。
城から受けたミッションはあくまでレッド・ドラゴンの発見と偵察。
それが出来たら、早々に戻ってこいと命令されていたが、クウゴはそのレッド・ドラゴンを討伐するつもりだった。
出たり消えたりを繰り返すレッド・ドラゴンの特性はある意味、こちらにとっても有利になると思った。
討伐されたのかどうかが曖昧になるからだ。
クウゴたちが、赤い竜を退治して、赤い竜玉をゲットしたとしても、城の連中にはすぐには気が付かれないのではないか。
そうしたら、赤い玉は館に隠しておいて、城側の動きを掴みやすくなるかもしれない。
本当に、シントーワ国王に闇があるのか否か、それを判断するのだ。
それに、竜に襲われているかもしれない魔法学校のことを考えると不謹慎かもしれないのだが、クウゴは少しばかりワクワクしていた。
魔法学校。その響きに惹かれていた。
クウゴは転生前は十七歳でありながら、高校にはほとんど通えていない。
だから、学校にいくことに少しばかりの憧れがあったのだ。
異世界の魔法学校なんて、面白そうではないか。
「てぇへんな時だってのに……オラ、ワクワクしてきたぞ!」




