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異世界から勇者をスカウトしに来た宮廷魔導師、現代が快適すぎて任務を忘れかけています。  作者: ココアバナナ
第1章【交わるはずのなかった者たち】

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ep.18「日常の延長線」


 蓮也のスマホでゲームをしながら、ふと昨日のアイリーンからの手紙を思い出す。


(……鍛えておきなさい、か)


 あの二人は“素質”としては十分だ。


 だが──


(やり方を知らない)


 それが問題だ。


 視線を上げる。


 蓮也はノートパソコンと呼ばれる物を操作している。


 嶺二は無言でコーヒーを飲んでいた。


 小さく息を吐く。


 そして。


「少し外に出るぞ」


 ゲームが一段落ついてから口を開いた。


「は?」


 蓮也が顔を上げる。


「急ね」


「必要だからな」


「何がよ」


 少しだけ間を置く。


「鍛える」


 沈黙。


「……は?」


 同時に声が重なった。


「いや待って」


 蓮也が手を上げる。


「急に何言ってんの?」


「お前たちが勇者だ」


「異質とは聞いてたけど……はぁ? 」


「勇者って一人じゃねぇのか」


「異例だが二人揃って、だ」


「そもそも、どうして勇者探しなんてしてたのよ」


「……話さなかったか?」


「聞いてねぇな」


「俺の元居た世界──クリスタリア王国の魔導師棟に設置されている魔鏡が“世界に仇なす者”の誕生を予知した。つまり魔王だ。そして単純思考の陛下が勇者が必要だ探して来い、と」


「魔王なんて……本当にファンタジーだわね」


「昨日のアイリーンからの手紙では魔王はまだ誕生してはいないと。だが、準備は早い方がいい」


「いや、それは分かるけど」


 眉を寄せる。


「場所とかあるでしょ普通」


「外でいい」


「雑すぎない?」


「問題ない」


 嶺二がグラスを置いた。


「……どこ行く」


 短い問い。


「人の少ない場所だ」


「……分かった」



 辿り着いたのは、公園だった。


 広い。


 人もまばらだ。


 障害物も少ない。


(十分だな)


 そう判断する。


「で?」


 蓮也が腕を組んで俺を見た。


「何すんの?」


「簡単な確認だ」


 嶺二を見る。


「動け」


「は?」


「何でもいい」


 短く告げる。


「攻撃でも、防御でも」


 数秒の沈黙。


 そして──


「全く……指示が適当だな」


 小さく呟きながら、一歩踏み出す。


 その瞬間。


 空気が、わずかに変わる。


(……やはりな)


 視線を向ける。


 動きは速い。


 無駄がない。


 だが、制御出来ていない。


 ただ“動いている”だけ。


「次」


 視線を蓮也へ向ける。


「俺も?」


「ああ」


「やだ面倒」


「動け」


「はぁ……」


 ため息を吐きながら、一歩。


 その瞬間。


 再び、空気が揺れる。


 重なる。


 わずかに。


(……共鳴)


 やはり、起きている。


 だが──


(薄いな)


 安定していない。


 偶発的だ。


「どう?」


 蓮也が聞く。


「何か分かった?」


「十分だ」


 短く答える。


「お前たちは既に“触れている”」


「何に?」


「力だ」


 沈黙。


 理解は追いついていないが、否定もできないだろう。


「……実感ないんだけど」


「当然だ」


 視線を向ける。


「今まで使ってこなかったんだからな」


「じゃあどうすんのよ」


「慣れる」


 それだけだ。


「雑」


「本質だ」


 嶺二が小さく笑った。


「……間違ってはねぇな」


 蓮也が肩をすくめる。


「まあいいけど」


 そのまま空を見上げる。


「で?これ続けんの?」


「気が向いた時でいい」


「適当すぎるでしょ」


「問題ない」


 そう判断する。


 魔王はまだ誕生していない。


 ならば、急ぐ必要もない。


 風が吹く。


 静かな空間。


 特別なことは何も起きていない。


 だが。


 確かに。


 少しだけ──


 変わっている。


(……まあいい)


 小さく息を吐く。


 これもまた。


 日常の延長線に過ぎないのだから。


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