5 悪役令嬢に転生した干物女はおにぎりを食べたい。 ☆挿絵あり
前回までのあらすじ
ジャージを世に広めたいですわ!
社交ダンスの練習の数日後。
ミラから相談を受けた。
「近々我が家で簡易の酒宴を開くのです。この間お姉様が作ったような、立食形式でも手軽に食べられるものがほしいのです」
「私を頼ってくれるなんて嬉しいわ。ぜひ協力させて」
この国の立食パーティーで出るものは、サンドイッチとクラッカーくらい。
同じように軽くつまめて手が汚れないものが理想ね。
そういえば今日の朝食にはピラフが出てきたわ。ということは。手軽に食べられるアレがあるじゃない。
「決めたわ! おにぎりにしましょう!」
「おにぎり、ですの?」
「英語で言うならライスボール! さっそく調理場に行きましょう」
ジャージのまま調理場にお邪魔する。
もう私が料理を始めても、料理人のデールおじさんはツッコまなくなってきた。
「デール。米を使わせてもらうわよ」
「ええっ!? お嬢様、米は調理が難しいんですよ。初めて扱うのならやめたほうが」
「大丈夫よ。任せなさい」
見た目はクリティアお嬢様でも中身は干物。日本人だから米くらい炊けるのさ。
見たところジャポニカ種だ。現実要素盛り込んでくれてありがとう、ゲームの開発スタッフ。たぶん本編と関係ないところでやりこみ要素を作るようなニッチなゲームなんだね。
10分ほど吸水させて鍋に入れ、焦がさないよう炊く。
炊けるのを待つ間に、白米のオトモ浅漬けも作ろう。
キュウリとナスを塩で漬けて、と。
炊きたて白米久しぶり!
香りだけでごはん三杯イケる。
塩むすびでもいいけど、今回はシャケむすび。焼いた塩サーモン(ぽい味の魚)をほぐして入れたら完成。
「できましたわ、ミラ様。これがおにぎりよ!」
「まあ。ライスを丸めるなんて、初めて見ましたわ!」
皿の上に並ぶおにぎりを見て感激するミラ。
和食を初めて見る旅行客と同じ反応だ。
「味も自信があるので食べてみてくださいな。ビールと相性がいいですよ」
「ぜひ、いただきますわ!」
というわけで、食堂で座っていただきます。
はー、久々のおにぎり美味いわぁ!
浅漬けもいい塩加減。シャキシャキのキュウリはウマー!
デールも気に入ったようで、すごい勢いで作り方をメモしている。
「焼き鳥と串かつ、おにぎりを出せば物珍しさもあって楽しんでいただけるのではないかしら」
「はい! お姉様のレシピだと紹介します」
「私のレシピ……というか、天の思し召し?」
まるで私が一人で考えたみたいに思われるのは困る。先人の知恵、レシピ本を読んで覚えたんだから。
せめて料理の神様からの声を受信した体でいきたい。
「お姉様は料理の神様の声を聴けるのですね。まさか、伝承に残る聖女」
んなわけあるかい。と脳内ツッコミしておこう。
「お嬢様、いつもの手紙が届いています」
もう誰からなのかすら言わなくなったジーニャ。言わずともわかる。
一応、男爵家のどなたかがお亡くなりなどの緊急連絡の可能性もあるから開いてみる。
【地上に舞い降りた妖精クリティア
来月隣国で夜会があるんだ。そのとき僕の隣を歩くパートナーは君しかいない。僕の妻にふさわしいクリティア。僕の燃える熱い思いを受け止め……】
僕とミラの仲を割かないでくれ! とパーティーで叫んでいたのは記憶の彼方に消し去ったんだろうか。
焼き釜に入れてお焚き上げ。
今日もロミオメールがよく燃えているわ。





