後日談6 主賓だってサプライズしたい!
翌朝。
起きてすぐ、外から威勢のいい掛け声が聞こえてきた。
窓を開けると、屋敷の庭でヨイが素振りしているのが見える。
青春マンガの1ページみたいにキラキラして見える。
「おはようございます、ヨイ様。精が出ますね」
「おはようございます、クリティア様。いい朝ですね。どうです、ちょっと走りませんか」
「懐かしいですねー。今そっちに行きます」
お腹をすかせておいたほうがご飯が美味しくなる。
それに、かつての夏合宿を思い出して楽しいじゃないか。
「ふぁあー。おはよークリティアー。なに、どうしたの?」
客室を出たところでコリンがやってきた。
「おはよう、コリン。ヨイ様がちょっと走らないかって言ってるから。ご飯の前にどう?」
「へー。朝活もいいかも! 懐かしい。合宿のときも走っていたものね」
コリンも二つ返事で乗り、ジャージの袖をまくる。
そう、この時の私達は忘れていた。
──1時間後
「さあ、二人とも。あと5往復ですよ!」
「ひ、ぜぇぜぇぜぇ、ま、まって、ヨイ様、もう、ぎぶ……」
「はひー、あたしもういいーー!」
チョコザイナー家の屋敷の庭で、地獄のビーチ往復走り再来。
そうでしたね、ヨイは本職の軍人になったんでしたね。
手入れされた屋敷だから砂浜よりも足場は安定しているけれど、運動量が激ヤバである。
ヨイは私達と同じ距離走っているのに涼しい顔をしている。それになにより、この走る訓練より前に剣の素振り自主練してなかった?
汗だくで走り込みを終えて朝ごはんタイム突入。
普段の倍美味しく感じた。
屋敷の料理人が「お嬢様のご友人がいらしているのですから」と普段の倍頑張ってくれたようで、おフレンチな料理がキラキラしい。
バゲットと生ハム
ベリージャム
野菜と卵のキッシュ
マッシュルームとチーズのスープ
カットフルーツ三種盛り。
しぼりたてフルーツジュース
これあれだ。東京都心のお高いビジネスホテルで出てくる料理。
採れたてフルーツうめぇ。生ハムの塩加減最高。
生ハムメロン……生ハムメロンだ。
お腹いっぱいになったところで、侍女がコリンのところにきた。
「コリン様。ミゲル・ミーティア様とミラ・ミーティア様がいらっしゃいました」
「ミゲルはともかく、ミラ様も??」
私はコリン、ヨイと顔を見合わせる。
マル秘の計画がバレた……?
まぁ、ミゲルって姉に勝てないからな。前世の年齢と今世の年齢と合わせたら40歳超えていると思うけど、年数増えたからって嘘や世渡りが上手になるわけではないらしい。
三人でゲストルームに行くと、ミラと、その横で膝を抱えて小さくなっているミゲルが待っていた。
ミラは私たちに深々頭を下げる。
「コリン様、クリティアお姉様、ヨイ様、ごきげんよう。話はミゲルから聞きました。わたくしのためにサプライズでお祝いしようとしてくださっていると。ありがとうございます」
「だからー、姉上が来ちゃったらサプライズの意味ないじゃん!」
来る途中の馬車でも口喧嘩していたのか、ミゲルは疲れ果ててヘロヘロになっている。
大人しそうに見えてミラはわりと強情である。
「水くさいですわ。お姉様の誕生日サプライズをしたときに、お姉様がおっしゃっていたでしょう? みんなで作るのも含めて楽しいって。だからわたくし、一緒に作りたいと思いました」
ミラはここにいる時点ですでにジャージ着用。気合いは十分だ。
満面の笑みで言われてしまったら、主賓は待っていてなんて言えない。
ヨイがクスクスと笑い出す。
「ミラ様らしくていいじゃないですか。お祝い料理、みんなで作りましょう、コリン様、クリティア様」
「あたしも賛成!」
「そうね。みんなでパーティーの料理、しましょう!」
そんなわけで、ミラとミゲルも加わって料理開始だ!





