第3話
「わ!すごい!何か色々たくさんある!ベトレイユさん、あれはなんですか!?」
この都市において『街』と呼ばれている一角に入ると少女は出店の一つを指差しながら隣を歩く青年に尋ねる。
「あれは果物を串に刺して売っている」
「食べたい!あ、あっちのあれはなんです!?」
矢継ぎ早に少女は質問を重ねる。
「職人の作った装飾品だ。今は必要ないな」
「わー…先ずは最初に言った果物からですね!」
「…まさか全部見てまわる気ではないよな…?ジュリ」
樹里と呼ばれた少女はキョトンと
「え、だってお買い物ってベトレイユさん言ったじゃないですか」
「…買い物の定義が違うようだ…まぁ果物くらいなら構わない。寄って行こう」
ベトレイユと呼ばれた青年は少し困った顔で告げながら歩き始める。
屋台に着くと樹里のテンションが更に上がる。
「わー、見たことない果物ばっかり!どれが美味しんだろ…」
樹里は色とりどりの果物を物色し始める。
「へいらっしゃい!おっとベトレイユ卿!物入りですかい?」
「そんなところだ」
ベトレイユは店主と思われる髭を貯えた総髪の中年と話し始める。
「お知り合いですか?」
樹里が疑問を投げかける。
「知り合いというか…暫く住めば嫌でも大半の人を覚える事になる」
「へー…あ!おじさん!この中で一番甘いのはどれですか!?」
「甘いのか。だったらコイツだな!」
店主は果物の刺さった串を一つ樹里に手渡す。
「まいど!」
「ベトレイユさんお支払いお願いします!」
ベトレイユは財布を取り出し銅貨を2枚店主に渡す。
「今…今何か不思議な買い物の流れを体験した気がする…」
どこか遠くを見ながらベトレイユが呟く。
「何言ってるんですか。私がこの世界のお金を持っているはずないじゃないですか!」
「いや…そうなんだが…だいぶ手順を省略されたと言うか…」
「ブツブツ言ってないで次行きますよ!次!」
そう言い別ので店に向かって歩きだした樹里に
「いや待て!服屋に行くぞ!あっちだ!」
「えー…いえ、お洋服も興味津々なんですけどね?」
「ここはいつでも来れる。先ずは生活用品を買わないとな」
説得に入るベトレイユ。
「仕方ないですねぇ…じゃ、お洋服買いに行きましょ!」
「はぁ…行くぞ」
あまり体験したことのない気疲れにベトレイユはため息をもらす。
「おじさんまたねー!」
「おうよいつでもおいで!おまけするよ!」
果物屋の店主に別れを告げ、服屋を目指して歩き始める。
「では早速果物をいただきましょうか」
ぱくりと串に刺さった果物を食べる。
「あっまーい!おいしー!なにこれ!桃とマンゴーとキュウイを足して割ってない感じ!」
「それは何よりだ」
もぐもぐと樹里は食べ続ける。
「もうなくなっちゃった…」
「早いな!?」
思わず突っ込むベトレイユ。
「普通ですよーだ。お洋服屋さんは遠いんですか?」
「いや、この先の角を曲がればすぐだ」
「おー。結構近い!」
走り出す樹里。
「ベトレイユさんも早く!」
「随分と生き急いでるな…」
樹里を見失わない程度に速度を上げるベトレイユ。
二人はすぐに服屋に到着する。
「わー…色々ありますね!あ、予算とか決まってます?」
「金は気にしなくていい。適当に何着か選んでくれ」
「太っ腹!」
言い残し、ほぼ走ってるような速度で店内を移動する樹里。
「まぁ…早く選んでくれればそれに越したことはないか…」
こうなるとベトレイユは待つしかない。
一方樹里は心底楽しそうに
「悩む…これ…は少し派手だなぁ…ん?このコーナーはなんだろ?毛色が違う」
樹里はベトレイユに
「ベトレイユさーん!この先はなんの服を売ってるんです?」
「そこは仕事着の一角だな。不要だろう」
「あー…それでごつかったり可愛かったりバラバラなのか…」
樹里はその場を去ろうとしたものの
「あ、メイドさんの服もある!かわいー!」
「…欲しいのか?」
ベトレイユが問いかける。
「ちょっとだけ…何かイベントみたいで楽しそうな気がして…」
「今日は私服にしてくれ…」
「はい…」
何故か少し気落ちした様子で既に見つけていためぼしい服を手に取る。
「これでお願いします!」
樹里はベトレイユに服を渡す。
「ああ、わかった」
手早く会計を済ませて二人は服屋を後にする。
「今日はこんなものか。帰ろう」
「はい! あ、お屋敷にお風呂あります?」
「ああ、ある」
「やったー!早く、早く帰りましょ!」
またも走り出す樹里。
「別に急がなくても…ああ、もうあんなところまで」
仕方なくベトレイユも走り出した。
風邪が悪化してきました。




