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ラストワン~刻印がもたらす神話~  作者: Pー
第三章 第一部【総合アカデミー】
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24. 『魔王』派閥の本気

 総合アカデミーへの強制自爆テロの被害状況を確認し、怪我人の手当を完了させた。


 そして、千花の親友である時雨とミリソラシアの二人が誘拐されたことを知る。


 己の感情を押し殺し、バロムア率いる反真龍救済連合を確実に潰すために『魔王』派閥の派閥主(トップ)として人格を戻した。


 そして、元主が咄嗟(とっさ)の判断により送った喑=トウの情報により“聖山”内部に潜伏していることを掴んだ。


 その後、数時間に及ぶ作戦会議により細部を整える。


 バロムア及び反真龍救済連合を殲滅する作戦まであと少しであった。







 ❐❑❐❑❐❑❐❑❐❑❐❑❑❐❑






 強制自爆テロから一日経った深夜。


『魔王』千花の指揮する数名は“聖山”内部まで来ていた。


 メンバーは『魔王』千花、『死神』千百合、『第二管制者セカンド・オペレーター』ソフィア、『剣鬼(けんき)(おう)』剣聖、『槍姫妃(そうきひ)』ネメシア、『執行者』元主、ナーラ、ディオク、ミヴァル、イルア、嵐=ボクの十人。


 そして、自ら志願した『ハヴィリア』派閥のハヴィリア、ベクチャドの二人。


 総勢十三人の少数衛生でバロムアたちを完全に潰す。


『八大使徒』とハドルドの合計九人は総合アカデミーにて待機している。


 作戦開始は深夜の二時。


 現在時刻は深夜の一時三十分。


 残り三十分の重圧は修羅場を潜っていた千花たちですら緊張してしまう。


「ねえ〜〜、千花ちゃ〜〜ん。ほんとに()()()()しちゃうの〜〜?」


 作戦の最終確認としては少々物騒な発言だ。


 千百合の質問の意図は、少しでも会話することによって皆の緊張を解くことだ。


 だがあくまで表向きは。


 本心では千花の立てた作戦に疑問を抱いている千百合自身の思いを、千花に言外に伝えることだ。


 千花は千百合の言外の訴えに十中八九気付いている。


【愛の刻印魔法(こくいんまほう)】の支援を、人の感情が視える特性に付与することにより、“相手の思考を読める”【魔眼】に等しい力が与えられた。


 戦闘前の千花は“思考を読める”【魔眼】のさらにワンランク上の“数秒先の未来が視える”【魔眼】を常時発動させている。


 そんな『魔王』千花が見え透いた千百合の言葉の裏など視えない方がおかしいのだ。


「するよ。大丈夫。安心して、千百合」


「ふ〜〜ん。そうね〜〜…………まあ、いいわ〜〜。『魔王』千花様に従いましょ〜〜う」


 千花の言葉に引き下がったのは、【愛の刻印魔法(こくいんまほう)】の効力の一つに幻影を使用し、強制的に納得させることが出来ることを思い出したからだ。


 今の千花の言葉には【愛の刻印魔法(こくいんまほう)】が使われていなかった。


 この事実こそが、千花自身の言葉で千百合に語り掛けているという証明に他ならない。


「そろそろ時間だね。行こう」


 とても特殊な感情などこもっていなかった。


 あくまでも心の中は平穏を保たせている。


『魔王』千花が心を乱していなければ、着いていく皆も焦らずに済む。


 だからこそ、千花はわざと通常時と何ら変わらない千花でいる。


 そんな千花だから、皆は着いていく。


 真の王には自然と仲間が集っていくのだ。








 ❐❑❐❑❐❑❐❑❐❑❐❑❐❑







 “聖山”内部へは専用の魔法を使わなければ開かない大門がある。


 その大門は攻撃魔法(こうげきまほう)だけでなく、全ての魔法を打ち消してしまう特殊な魔抗石(まこうせき)と言う石でできた純度百パーセントの大門。


 あらゆる魔法には【刻印魔法(こくいんまほう)】も含まれるため、力技ではどうにも出来ない。


 だが、千花は『八大使徒』から事前に大門について聞いていたため、対抗策を練っていた。


「じゃあ、多王先輩。お願い」


「承知ですねぇ。【大地を侵す我が意思(ヴァイグ・ドット)】ですねぇ」


 千花の打った策は、元主の【侵犯の刻印魔法(こくいんまほう)】の効力の一つである土地そのものを侵犯し、土地の記憶を読むと言う能力。


 この土地には専用の魔法を使った()()が眠っているからだ。


 だが、後にも先にもこんな作戦を思いつくのは千花だけだろう。


 冷静な理詰めで確実に物事を進めていくのは時雨。


 突拍子な考えを現実に反映して進めていくのは千花。


『魔王』派閥の二大派閥主(トップ)は正反対の作戦を作るのだ。


「ふむふむ…………」


 あの元主が悩むほど難しい魔法であったようで、記憶から読み解くのが遅い。


Na Gon() Don Un() Veh Graph()


 元主の謎の言葉の後に、大門は自らその重たい扉を開いた。


「おかしいですねぇ。これは…………」


「どうした、元主? 何かあったのか?」


 だが、大門を開いた元主自身が何やら考え事を始めてしまい、足を止める。


「いえ、今のは魔法などではないのですねぇ」


「……!? どういうこと〜〜?」


 元主から告げられた衝撃の一言に、千百合を初め全員が足を止めてしまう。


「先の詠唱で使われたものは〈アザークラウン世界線〉でかつて使われていたエノク語と呼ばれるものなのですねぇ」


 そう、元主が先程口ずさんだ言葉の原型は神聖文字や神-キリストの文字と呼ばれている通称エノク語。


 エノク語の存在は〈聖ドラグシャフ世界線〉では確認されていなかった。


 つまり──


「つまり、〈アザークラウン世界線〉の何者かが〈聖ドラグシャフ世界線〉に知識を流したということですねぇ!」


 あまりの事実に皆は一言も発することが出来ず、固まることしか出来ない。


 誰が、いつ、何の目的で、それも多々ある言語の中でエノク語を選んだのか。


 この場での判断材料がなく、どうしようもないこと。


 しかし、それでも好奇心を刺激されてしまうのは、仕方がない。


「……! みんな、散って!」


 突然出現したエノク語に気を取られている間に、数百人の反真龍救済連合の有象無象が溢れ出てきた。


 大門が開いたことに驚いていたが、千花たちが入ってこなかったため、迎撃の準備を整えられた。


 数百人の有象無象としては有難い誤算。


 しかし、『魔王』の率いる軍勢はこの程度の幸運では倒せない。


「ソフィア! ベクチャド! ()()()()に!」


「お任せ下さい、『魔王』千花様(My Master)


「承知しました、『魔王』様」


 千花の号令に二人揃って魔法発動の準備に取り掛かる。


「【木々の贄箱(ウィッカーマンズ)】!」


降竜秘奥(こうりゅうひおう)護神竜(ごしんりゅう)”! 【その護りは不可侵なりガリ・ガリ・ガリャード】」


 近辺に植えられている木々を使い、巨大な人型の人形を造り、有象無象を襲わせる。


 さらに、ベクチャドの“護神竜”の加護を与えることにより、硬度が増す。


 複数体の【木々の贄箱(ウィッカーマンズ)】の反撃に為す術なく蹴散らされていく。


「それでは、『魔王』千花様(My Master)。ご武運を」


「うん。ソフィアもね。ベクチャドも無理はしないでね」


 ソフィアに声をかけられた千花は、優しく微笑みかける。


 そして次の瞬間、ソフィアの事象干渉能力(テレパス)によって一気に有象無象を飛び越え、“聖山”内部へと侵入して行く。


 これこそが、千花のたてた一つ目の作戦。


 ソフィアの事象干渉能力(テレパス)を使い、迎撃に向かってくるであろう敵を超える。


「それでは、早めに片付けてしまいますか。ベクチャド様」


「ええ、そうしましょう。お嬢様の敵は何人であっても許しません」


 両者ともとても礼儀正しい女性。


 しかし、相対している敵からしてみれば静かに命を刈り取っていく怪物に見えることだろう。


 そして、彼らの寿命はもうはや残りわずかとなったのだ。







 ❐❑❐❑❑❐❑❐❑❐❑❐❑❐





 ソフィアの事象干渉能力(テレパス)によって有象無象の敵をシショートカットした千花たちは、【愛の刻印魔法(こくいんまほう)】による支援を受けて、常人では出せないスピードで進んでいた。


 “聖山”内部は大きく長い洞窟が、螺旋状に重なっていき、最終的に“聖山”の頂上へと辿り着くようになっている。


「……! 千時先輩! お願い!」


「承知!」


 千花の掛け声に一秒ものタイムラグを感じさせない動きで反応し、一人だけ立ち止まる。


 これが、千花のたてた作戦。


 追撃してくる敵を瞬時に見分け、強さのレベルに応じて各個撃破していく。


 この作戦は、相性の悪い敵とエンカウントしてしまった場合、とても不利に動く。


 それでも、千花はやる価値ありとみた。


 必ず成功すると信じて。


「【生成(コール)(ジン)】!」


 洞窟のような通路の途中で剣聖のみ立ち止まり、【(つるぎ)刻印魔法(こくいんまほう)】の効力により生み出された刀を円形に設置し、盾とする。


 すると、剣聖に向かって巨大な斬撃が襲ってくる。


生成(コール)(ジン)】で造られた盾は斬撃に壊されてしまったが、剣聖の身を守るという役割はしっかりと果たした。


「成程、厄介だな」


 剣聖の眼には洞窟の先に真っ()に揺らぐ人間が()()視えた。


【剣の刻印魔法(こくいんまほう)】第二段階【鬼神眼(おにノしらせ)】は危険なものほど赤く染る性質を持つ。


 千花の“未来の視える眼”とは違うが、近接戦闘においてこの上なく重宝するものだ。


「【生成(コール)(ザロ)】」


 その詠唱の後には、剣聖の右手に一本の刀、左手に一本の小太刀が握られ二刀流の構えだ。


「……! 【生成(コール)(ジン)基礎(ベース)(ベイ)】!」


 さらに、続けて斬撃が襲いかかるが全て守りきった上に盾から刀が射出(しゃしゅつ)され、反撃する。


真禍極限流しんかきょくげんりゅう(げん)無刀(むとう)】!」


 剣聖の家に代々伝わる真禍極限流の【|無刀《むとう(じゅつ)》】。


 相手を斬る瞬間、手首を返し意表を突くことの出来る剣戟(けんげき)


 そして、現在剣聖の手に握られているのは鬼哭啾啾(きこくしゅうしゅう)鬼哭千秋(きこくせんしゅう)の名の通った妖刀。


 そんな業物と剣聖の極めた真禍極限流の技の二人の前に立っていた敵は少ない。


 だが──


「…………ほう」


 ガキィィィン! と鉄と鉄がぶつかり合う音が響いたのだ。


 二本の妖刀の斬れ味は最高。


 剣聖の真禍極限流の技も確実。


 そうなれば理由など一つ。


 敵がそれほどまでに強いということ。







 ❑❐❑❐❑❐❑❐❑❐❑❐❑❐❑❐







 剣聖と別れた千花たちは続けて“聖山”内部を進んでいた。


「また来た。今度は…………イルア、ハヴィリア、ディオク君、ミヴァル君、嵐=ボク君。お願い」


 千花の号令に反応した五人は一斉に止まり、周囲の警戒をする。


「おい! 絶対にクソジジイ、ぶっ飛ばしてこいよ!」


 振り返りざまにイルアが千花を激励し、そのまま戦闘態勢へと移行する。


 その激励に千花は手を振り返し、「必ず倒す」と意志を伝える。


 そして、イルアが向き合った敵は大人しい雰囲気を醸し出している女子生徒であった。


 総合アカデミーの制服の上にコートのように修道服を着ている。


 この戦いにおいて、総合アカデミーの生徒は千花たちともう一つの勢力。


「『三大賢王(さんだいけんおう)』ですか……!」


 バロムアが懐柔(かいじゅう)していた『三大賢王』のみ。


「貴女方の運命は決まっています。降伏なさい」


 物腰はとても柔らかで、丁寧な印象を持ってしまうが、本質はイルアたちを敵とも思っていない慢心。


「アンタは、『予言(よげん)』のアトレズナだな?」


 ミヴァルの予想は当たっている。


『三大賢王』の末端、アトレズナ=リアクティウス。


 どれほどの強さか分からないが、『五大賢人』に比べれば確実に強いことは確かだ。


 だからこそ、千花はイルアたち五人で挑むには()()()()と判断したのだ。


「とりあえず、だ。お前が敵だってことには変わらねぇよな!」


 イルアが不敵な笑みを浮かべて、アトレズナに語りかける。


 アトレズナは一言も発しなかったが、その沈黙が答えになる。


「ぶっとばす!」


 詠唱なしで降竜秘奥(こうりゅうひおう)武竜(ぶりゅう)”を使用し、肉体強化された脚力を用いてアトレズナへと突っ込んでいく。


「……! まったく。あの()は!」


 “嵐”の我心論者である嵐=ボクも、己に風を纏わせてイルアに続く。


「仕方ないですわね! イルア様ったら!」


 何か色々と壊れてしまったハヴィリアも、降竜秘奥“軍神竜”により全員に支援魔法をかける。


「千花様のためです。頑張りますよ、鎧竜」


「わーてるよ。骸神」


『魔王』千花に見惚れ、着いてきたディオクとミヴァルの正式な初陣。


 仲の悪い二人も千花のためなら団結出来る。


『三大賢王』の一人と『魔王』派閥『ハヴィリア』派閥の五人が激突した。






 ❑❐❑❐❑❐❑❐❑❐❑❐❑❐❑❐







「ねえ〜〜、千花ちゃん。ほんとにこの作戦大丈夫〜〜? すっごい不安なんだけど〜〜」


 イルアたち五人が“聖山”内部グループから別れたことにより、急激に人数が減ってしまった。


 人数が減ると、修羅場に慣れた千百合でも幾許(いくばく)かの恐怖は感じるようだ。


「大丈夫だって。私とみんなを信じて」


 千花は先程から「信じて」の一点張り。


 時雨と違い千花は理論ではなく感情で作戦を練るため、相手を完璧に納得させる作戦は作れない。


 それでも最も確実な手段であるため、作戦の変更はしない。


「……!? ヤバッ! 【愛は溶けていく(リー・フィリア)】!」


 走りながら千百合へと返答していた千花が、突然【愛の刻印魔法(こくいんまほう)】を使用した。


 発動したのは幻影を見せる類の【刻印魔法(こくいんまほう)】。


 そして、次の瞬間──


 バコォォォォン! と“聖山”内部の洞窟の頭上が大爆発したのだ。


 もちろん、千花たちは数秒前にその場を経過していたため、事なきを得た。


「千百合、多王先輩。よろしく!」


 それでも、あまり楽観視して良い状況ではなかった。


 何故なら頭上から現れたのは、明らかに改造されたとしか思えないほどの魔力量を持つ女子生徒。


 そして、西欧風なコートを着た男、因縁深いロード・ヴォルダグレイ。


「なるほど〜〜。確かに〜〜、()()()は私たちじゃなきゃダメね〜〜」


「んふふふふ。えぇ、ええ。そうでしょうとも。また会いましたね、ロード・ヴォルダグレイ」


 化け物と化け物の二対二。


 相対してしまった四人の怪物。


「【万物を消失させる外套(ウィガール)】〜〜!」


 一瞬の内に『死神』へと変貌し、漆黒の外套(がいとう)に身を纏い、身長ほどはある大鎌を構える。


「【雷帝直伝多王(オプリチニキ)元主専属親衛隊(Ver.元主)】ですねぇ!」


 自分だけの殺戮兵器(さつりくへいき)を創り出し、不気味な薄ら笑いを浮かべる。


 一拍の後、怪物たちは激突してしまった。







 ❑❐❑❐❑❐❑❐❑❐❑❐❑❐❑❐







 千百合と元主とも別れたことにより、“聖山”内部へと進行するのはたった三人だけになってしまった。


『魔王』千花と『愴姫妃』ネメシア、ナーラのみ。


『愴姫妃』ネメシアは何故か生きていた剣聖が、何故か総合アカデミーにて『剣鬼王』と呼ばれている際に、常に隣にいる女子生徒のことだ。


「この件が片付いた後にゆっくり話は聞きたんだけど…………あなた、戦乙女(ワルキューレ)だよね」


「……………………はい」


 薄々気付いていたことであった。


 剣聖と共に千花たちの前に現れてから、全員が切り込めなかった話題。


『愴姫妃』ネメシア。


 彼女は〈リングトラヌス世界線〉の決戦時に、時雨が苦肉の策として剣聖を捨て駒にするしかなかった状況下で、立ち塞がった『影の存在』の部下。


 千花からしてみれば怨敵(おんてき)中の怨敵(おんてき)


 戦乙女(ワルキューレ)もとい、『愴姫妃』ネメシアがいなければ剣聖が死ぬであろう確率は大いに下がった。


 彼女がいなければ時雨は必要以上に傷つく必要はなかった。


 彼女がいなければキャンベラは剣聖との別れに涙する必要などなかった。


「千時先輩はあなたのこと、許してるかもしれない。ううん。絶対許してる。あの人は気に入った人しか傍に置かないもん」


「はい。承知しております」


「承知してる、なんて軽々しく使わないで」


 ピシャリと、心の奥底に響く冷徹さをもってネメシアの言葉をかき消した。


「ネメシアって名前も千時先輩が付けたんだよね」


「はい。とても綺麗で嬉しく思っています」


 先の冷えきった拒絶の言葉にまったく臆さず、千花に返答する。


「みんなに説明お願いね」


 千花を知っている者からしてみれば、ネメシアに対する千花の態度はとても素っ気ない。


「………………あ、あの」


 それでも、ネメシアは諦めずに千花へと声をかけようとする。


 千花と対峙していた時間は数秒に満たないが、それでもネメシアが自分から話しかけるタイプには見えなかった。


 だから現在、ネメシアから話しかけるということは、それほど重要だということ。


 しかし──


「キャンベラは千時先輩と二度と会えないって思ってるんだよ」


『魔王』派閥のリーダーとして、ではない。


 親友たちのことを思って千花はネメシアに思いを伝える。


「時雨は自分のせいで千時先輩が犠牲になったって思ってるんだよ」


 〈リングトラヌス世界線〉の戦いで、多くの仲間を失った。


 かけがいのない存在であった。


「多王先輩は無茶して怪我も完治してないのに修行しに行った。千時先輩を止められるほど強くなかったからって…………」


 自分よりも遥かに格上の『女神』ウルズを破った怪我が癒えていない状態で、元主はシャーシスと共にイギリスのロンドンまで新たな力を身につけるために修行に行った。


「私は、あなたと友だちになりたい。みんなみんな仲良くしたい! でも、そうはいかないの。あなたの考えも、思いも、全部聞いて…………ぶつけ合って、でも納得できなくて…………!」


 この問題は流れに任せてなぁなぁで終わらせることなど出来ない。


 しっかりと話し合うことで、きっと傷つけ合うことになるかもしれない。


 それでも、千花はゆっくり話し合って決めていきたい。


 それが、温厚で優しさに溢れた『魔王』だから。

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