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ラストワン~刻印がもたらす神話~  作者: Pー
第二章 第一部【序列争い】
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6. 開戦

 千百合とミリソラシアが剣聖たちに(さら)われ、監禁(?)されている部屋が揺れる。


 それは〈NEVERヴァード世界線〉が揺れているのと同義である。


「これって〜〜、もしかして〜〜炎くんたちが来たってこと〜〜?」


「私たちもこんなところでグズグズしていられませんね!」


 二人は部屋から退出することを決める。


 だが、二人は剣聖たちからこの部屋から出るなと釘を刺されていた。


「でるな〜〜って言っても〜〜、ここの扉【刻印魔法(こくいんまほう)】使っちゃえば余裕なんだけど〜〜」


「いつでも壊せるって分かってたんだと思います。信頼されているんですよ、私たちならここを出ないって…………」


「それには応えられないかな〜〜。私たちにも私たちの事情があるんだからね〜〜! 【次元を超える消失(ヤガァドルド)】〜〜!」


 黒い大鎌を振るい扉を消す。


 そして二人は監禁されていた部屋を自分たちの意思によって出てしまう。


 人類の護り手(ラスト・ワン)と合流するために。





 ここは円卓。


 〈NEVERヴァード世界線〉の英雄が()すべき席がある場所。


「来たな…………」


「ハハッ、こりゃよ。だいぶやべぇぜ」


「ふむ。(あの葉巻の男よりも強き剣士はいるだろうか)」


 既に三席は埋まっている。


 『魔導王』(ろう)虚盧(うつろ)


 『殲滅王』セグナ


 『絶戒王』グラリュード・アテム


 獄炎と獄雷と獄氷。


 三人の王は坐して待つ。


「まったく、せっかちな連中だな」


「その通りッスね」


 〈アザークラウン世界線〉の裏切り者


 アレン・ドッペルマン


 一之瀬(まどか)


 戦力が未知数の二人は余っている席に坐す。


(たぎ)ってくるな」


「実に楽しみですねぇ」


 〈アザークラウン世界線〉の男子高校生


 千時剣聖


 多王元主


 彼らも余っている席に坐す。


 合計七人が揃った円卓に蝋の声が響く。


「この戦いを経て我々は序列を上げる。何があっても負けることは許されない」


 蝋の声には確かな決意が秘められている。


 この決意にはどれだけ重い覚悟をしたのだろう。


「〈NEVERヴァード世界線〉は永久に不滅。我々の意地を見せてやろう!」


 魔導王の言葉を皮切りに七人は扉から出ていく。


 自分たちのすることは一つだけだと言うように。







 _______________________








「……! 見えてきたよ! あそこに千百合たちがいる!」


 千花が指さした場所には城があった。


 まるで伝説に登場するかのような白亜の城。


 理想高きキャメロットのような輝きであった。


「城か…………まったくヤツらに似合わない場所だな…………!」


 キャンベラの言う通り空中庭園(エンジェルガーデン)で観た〈NEVERヴァード世界線〉の王たちには似合わなかった。


「アンフェアさんたちに会う前に千百合たちを見つけなくてはね。あの人たちに迷惑はかけれないもの」


 二人は時雨の言葉に無言を肯定とし城に向かって走り続ける。






 _______________________





 ──我々の動きとしては各個撃破で動く。人数は同じだが相手の実力は未知数だ。各々油断せずに動くように。


 それがアンフェアから伝えられた作戦内容であった。


 簡潔にして重要。


 〈NEVERヴァード世界線〉に降り立った人類の護り手(ラスト・ワン)五人はその意味を理解している。


「さてこちらの王は(オレ)の作戦に乗ってくるか…………。わざとバラバラになるように動いたのだがな…………」


「フハハ……それは傲慢というものでないか? 『皇王(こうおう)』アンフェアよ」


 黒と赤の髪色の男が立っていた。


 それこそが蝋。


 獄炎の『魔導王』がそこにはいる。


 二人が邂逅(かいこう)したのは円卓への唯一の道。


 共に世界線を背負う王、円卓への道すがらに会うとは何かの縁がある。


「うちで随分と暴れてくれたな、魔導王」


「ふん、こちらが名で読んでいるにも関わらず貴様は肩書きで呼ぶのか?」


「名で呼んで欲しければ(オレ)に名を呼ばせるだけの実力があることを証明してみろ。未熟者(ガキ)


「ほう…………。この(オレ)を未熟というか、面白い! その傲慢、高くつくぞ!」


 蝋が笑いアンフェアを睨む。


 そして獄炎が吹き荒れる。


 まさに地獄の光景。


 漆黒の炎はアンフェアを焼きつくそうと溢れ出てくる。


「自然の常識に縛られている時点で貴様が(オレ)に敵うことなどありはしない」


 アンフェアは左手を上げ、“吸収”する。


 “分解”し“再構築”、“放出”する。


 [熱エネルギー]を[電気エネルギー]へと。


「……!? 【獄炎爆破(ジャジス・フラッシュ)】!」


 [電気エネルギー]により生み出された雷を獄炎を爆破させることで不発させる。


「……面白い」


 それでも蝋は笑顔を消さずにアンフェアを睨む。


「……次はない」


 アンフェアは自分を見る蝋を強者と認め見つめ返す。


 二人が戦闘を開始したのはこの後すぐであった。






「おいおい、あんたか? 俺の相手は?」


 真っ赤な髪、雷の走ったような髪型。


 『殲滅王』セグナだ。


「悪いか? この俺じゃあ?」


 セグナの前に堂々と立つのは細い棒のようなものを布で包み右肩に背負っている男。


 黒髪をオールバックにしている男、九龍撃老。


 二人がいるのは大広間、いわゆるエントランスと呼ばれる場所だ。


「いいぜ。 強けりゃ強い分面白そうだ!」


 好奇心に満ちたその瞳には撃老がしっかりと映っている。


「そんなに期待すんなよ? お前が昨日戦ったやつほど俺は強くないぜ?」


「あれはたまたま勝てただけだし。出来たらもう二度とあの化け物とは戦いたくないね」


「分かるわぁ…………」


 そんな会話をしながら二人は隙を探す。


 だが共に武に精通する者。


 隙などそう簡単に見つかるはずもない。


 故に、二人が出した結論は簡単だった。


「「隙がないなら作ればいい!」」


 二人は同時に肉迫する。


「【獄雷之剛拳(レッド・クラッシュ)】!」


「【地天爆雷(ちてんばくらい)】!」


 地獄の雷と神代の棒がぶつかり合う。


 その威力は地面を砕き、辺り一面を破壊する。


「ハハッ! お前すげぇな! そんな棒っきれで俺の雷と同じ威力とかよ!」


「どうだ? 俺との死合(殴り合い)は楽しめそうか?」


「ああ! 今もすげぇ楽しみだ! 【獄雷之爆進レッド・スピード・ツヴァイ】!」


「【地天撃昇(ちてんげきしょう)】!」


 二人の死合(殴り合い)の音は城外にまでも響き渡った。






「さて、(それがし)の敵はソナタで良いのかな?」


 『絶戒王』グラリュード・アテム。


 腰に携えられている二振りの刀が彼の特徴になっている。


 黒い髪を後ろ手に括り真っ青な瞳で目の前の敵を見る。


「そのようだ。星に導かれるままに来てしまったが…………あんたは誰だ? 名乗ってもらえるか?」


 アテムの目の前にいるのは星空のような美しい髪色をした男、ジェラール・ビュートであった。


 ここは大きく開けた空間であるため、ら遮蔽物が一切ない場所である。


「相手に名乗らせる時は自分からだ。あまり(それがし)を怒らせるなよ」


「それは申し訳ない。反省している」


 まったく反省の色が出ていないジェラールにアテムは肩を震わせ怒りをこらえる。


「私はジェラール・ビュート。趣味は星を観察することだ。今度こそお前は誰だ?」


「…………『絶戒王』グラリュード・アテムだ」


 不機嫌さを隠さない声色で返答する。


「蒼滞氷結流【獄氷神斬刃(ごくひょうしんざんは)】」


 アテムが腰の一振を一気に引き抜き一閃する。

 真横に氷の刃の痕が残り凄まじい威力を持っていることが分かる。


「【光輝閃光(ライトシャイン)】」


 氷が残っているその中から光の筋が貫き出てきた。


 その輝きの閃光は真っ直ぐにアテムへと向かって行く。


「……! 蒼滞氷結流【獄氷直線翔ごくひょうちょくせんしょう】」


 アテムが上から下へと真っ直ぐに振り下ろす。


 すると、輝く一閃が二つに割れる。


(それがし)を舐めないでもらおうか。物質として確立していないものであっても斬ることは可能だぞ?」


「それは怖いな…………」


 まったく怖がっていない様子でジェラールが返す。


 それは、れっきとした武人であるアテムにとって最悪の侮辱であった。







 アレン・ドッペルマンは隠れている。


 先程から耳元で響く断続的な空気を掠る音を聞きながら。


 ちょうど彼が渡り廊下を渡ろうと足を踏み入れた瞬間を狙われている。


 すんでのところで道を引き返し渡り廊下の先から飛んでくる死から隠れているところである。


「(なんということだ……どこから撃っているのかまったくわからん。このままここにいればいずれ狙われる。かと言って下手に動くと死を意味する)まさかここまでとはな…………スコープ越しの死神(ロック・リーパー)!」


「世界政府の上層部にワレのことが知られてるとは光栄だナ」


「……!? 何ッ!?」


 ついさっきまで狙撃していた本人が()()()から現れたのだ。


 驚くのが当然である。


「当たり前だ。貴様のような天才スナイパーを我々(世界政府)がマークしていないと思ったのか?」


「そこまで高く見積もられていたのカ。嬉しいものダ」


 会話はそれからも繰り返される。


 世間話から世界線の話になるまでグレゴリーは動こうとしなかった。


「世界とは理不尽なものダ。世界線の序列だのなんだのト…………」


 ダァン! と、喋っている最中にグレゴリーはスナイパーライフルを構えアレンを撃っていた。


 自然な会話の中から唐突に告げられる死の弾丸。


 ただの戦士ならここで終わっていただろう。


 だが、ここにいるのは真の戦士。


 この程度で終わるほどヤワではなかった。


「…………怖いな……流石はスコープ越しの死神(ロック・リーパー)。初動がまったく見えなかったな」


 急に現れたのた弾丸をアレンは槍で防いでいた。


「十文字槍、『神葬聖槍(しんそうしょうそう)』。これが私の本気だ」


 その槍は刃が十字になっている槍、西洋でいうハルバードによく似ている。


「ようやく本気になったか、アレン・ドッペルマン中将」


 グレゴリーもスナイパーライフルを構え次の動きに備える。


 死の弾丸が放たれるのと、刺突の槍が突き出されるのは同時であった。







「なんで……あなたが…………ここにいるんスか…………?」


「それは私こちらのセリフだぞ? 円」


 一之瀬円は同門の灰峰凶と合間見えていた。


 彼らが相対しているのは城内屈指の庭園である。


「まさか、あなたが守護者なんてしてるとは思わなかったスよ」


「それもこちらのセリフだな。なぜお前が〈NEVERヴァード世界線〉の守護者などやっている?」


「それは言えないっスね」


 お互いに事情は分からない。


 それでも戦場で会えばすることはたった一つ。


「フッ──!」


「うわっ!」


 死合。


 それが戦場で間見える剣士の宿命である。


「どうした? 抜かないのか? 貴様の()


「やっぱり手の内知られてるとやりにくいッスね」


 円はそう吐き捨て己の両腕に巻かれていた()を外す。


「第十四代目豪魔(ごうま)流当主灰峰凶、参る」


「第十四代目豪魔流元参謀長助勤(じょきん)一之瀬円、いざ尋常に」


 凶が名乗り退けぬ戦だと理解したのか円もようやく構えをとる。


「豪魔流灰ノ太刀【円斬の侵蝕(えんざんのしんしょく)】」


「豪魔流鎖操術(さしょうじゅつ)巌砕の鉄球(がんさいのてっきゅう)】」


 大野太刀から放たれる灰をまとった斬撃に、背中に鉄球を隠していた円の鎖操術が炸裂する。


「豪魔流灰ノ太刀【啄の侵蝕(ついばみのしんしょく)】」


「豪魔流鎖操術【巌砕の空撃(がんさいのくうげき)】」


 灰をまとった刃が振るわれ灰の霧が円を蝕もうとする。


 だが、円も技の効果を知っているため灰の霧を上空から地面に鉄球を叩きつけることで灰を霧散させる。


「なかなか決め手に欠けるな」


「マジでその通りっスよ」


 そのまま二人は手の内を知りながら立ち回る。







「あの爆発のおかげで元主と離れてしまったか。まぁいい。奴も弱くはない。オレもオレですべき事があるしな」


 剣聖は千百合たちがいる部屋を目指していた。


 〈アザークラウン世界線〉の守護者たちが来ているので保護してもらうために二人を連れ出すのだ。


 しかし、二人はもちろんいない。


「…………そうだろうとは思っていたが、クソ。やられたな。先走りやがって」


 もぬけの殻と化した部屋を見て剣聖は悪態をつき、この場から離れる。


「…………この声は……?」


 二人がいた部屋から大きく離れた城門の近くで千百合たちの声がしたのだ。


「なるほどな、奴らが来たのか。折角だ、ついでに五人とも強制送還するか」


 独り言を呟き剣聖は千百合たちを助けに来た千花たちがいる城門付近まで歩を進める。




 数分前──


「ふ〜〜。ここまで来たら大丈夫かな〜〜」


「油断はダメですよ! いつ見つかるか分からないんですから!」


 ミリソラシアが千百合へメッ! をする。


「でも〜〜、浮かれてもいいの思うんだ〜〜」


「へ? なんでですか?」


 その答えは上からやってきた。


「案外高かったなこの城壁は…………」


 上からキャンベラが落ちてきたのだ。


 いや、落ちてきたと言うより降りてきたの方が正しいだろう。


 立て続けに千花と時雨が降りてくるからだ。


「う〜……時雨の結界があっても怖いよ〜!」


「今回は私も肝が冷えたわ」


「主様に時雨様! もしかして助けに来てくださったのですか!?」


「あ! ミアミア無事みたい!」


 互いに無事を確認した瞬間、五人はわっ! と、一斉によって行った。


 そして、お互いの無事に安堵したのか五人揃って涙を流す。


 この空間だけが戦争の空気を纏っていなかった。


 だがそれも一人の怪物が来たことで崩壊する。


「感動している中悪いが、オレがいることに気づいて欲しいものだな」


 そう、先程千花たちを捉えた剣聖だ。


「全員揃ったなら餌の必要も無い。着いてこい。世界線の狭間(とびら)まで連れて行ってやる」


 剣聖はそう言うと五人の意見など聞かずに歩き出す。


 着いてくることが当然だと思っているからこそできる芸当だ。


 だが、五人は剣聖の意思には従わなかった。


「千時先輩、申し訳ありませんが私たちはまだ帰る訳にはいきません」


「……何?」


「アンフェアさんたちに連れて帰ってもらう約束をしているので、大丈夫です」


 五人を代表して時雨が剣聖に理由を話す。


「悪いが、オレはそのアンフェアとやらを信用していない。後輩であるからこそオレは貴様らが無事にこの場から帰ることを望んでいる」


 剣聖は真っ直ぐに時雨の目を見つめ返す。


 意見を変える気など毛頭ないと目で伝えるために。


「もし譲れないとあれば古代より方法は一つ、力ずくで強制送還だ」


 城門の前で彼は言い切る。


 それて剣聖は刀を生成し構える。


 その様に五人は──


「「「「「脳筋過ぎない!?」」」」」


 剣聖の力至上主義に五人は驚く事しか出来ない。







 場面は変わり城内。


 円卓へと続く回廊のちょうど真ん中。


 一人の女が歩いていた。


 その歩き方は堂々としたもので、まるでこの城の主だと思ってしまうほどに。


 だからこそ、彼女の存在は異質だった。


「ふ〜ん。アレってさミリソラシアだよね。なんで生きてるのかな? 私がわざわざお父様の生贄に選んであげたのに」


 その女はミリソラシアのことを知っているような発言をする。


 確かに女の髪色はミリソラシアよりも少し透き通った青色、顔立ちもミリソラシアとよく似ている。


 だがその纏う雰囲気だけはミリソラシアとは違った。


「さてと、さっさとお仕事終わらせて帰ろうかな〜」


「お仕事ですか、それは私がお手伝いしてもよろしいでしょうかねぇ?」


「……! 誰!?」


 唐突に聞こえてきた怪しさしかない声に、彼女は立ち止まる。


「そんなに驚かなくても良いではありませんか。私の方が悲しいでないですかねぇ」


 怪しい男の正体は元主。


 剣聖と離れた故にここにいた。


「ごめんね〜。私あなたみたいな子どもとお話してる時間はないの。ぼくはお家に帰ってなさい」


 謎の女が優しく語りかける。


「私はいくつだと思われているのでしょうかねぇ」


 少しショックを受けた元主は言葉尻がどんどん萎んでいく。


「じゃあね〜」


 後ろ手に手を振り別れを告げようとする女に元主は言葉をかける。


「お待ちください。寂しがりな私とお喋りでもどうですかねぇ?」


「はぁ。あのね、私は忙しいって言ってるの。あんまりくどいと嫌われるよ?」


 元主に返答するのがめんどくさかったのか、女は苛つきを隠さずに答える。


「重々自覚しておりますねぇ。ですか私もこのせいか…………」


 元主の言葉が続くことは無かった。


 なぜなら、女が己の腕を変化させ獣の口にし元主を丸呑みしたからだ。


 普通人の腕から獣の口が表れることなんてありえるわけが無い。


 だがここにありえないことが起こっている。


「ぼくが悪いんだからね〜。私がやめてって言ってるのにやめないから」


 女は呑みほした元主に向かってつぶやく。


 もとより返事を期待した言葉ではなかったのであろう。


 しかし


「それは私が謝らなければなりませんねぇ」


「……は!?」


 己の腕から聞こえた元主の声に女は驚愕を隠せない。


 普通の人間は呑み込まれたらそれで終わりなのだ。


「よっこいしょですねぇ」


「……!? ちょっ! まっ……! 引き裂かないで! 痛い痛い!」


 元主が腕から出ていく度にビチビチ、ブチブチと腕が裂けていく。


「あら、ごめんなさいですねぇ」


「申し訳ないと思ってるなら止まってよ!」


「嫌ですねぇ」


「痛い痛い痛いいたいイタイ痛い!」


 元主が女の腕を引き裂く音と女が痛みに叫ぶ悲痛な声だけがこの空気に響いた。


「はぁはぁ…………」


「さて、お話し合いといきましょうかねぇ」


「……! あんた! 私の腕こんな風にしといて今更話し合い!? ふざけないで!」


 女は怒りをぶちまける。


 それもそのはず、女の腕は元主が出てくるために大きく裂けていて、とてもじゃないが無事とは言い難い。


「……? 初めに攻撃したのはあなたですよねぇ? 私は被害者なのですねぇ。普通ならあなたは私に殺されているのですねぇ。それを私は話し合いをして落としこもうとしているのですねぇ。私の譲歩を無下にすると言うのですかねぇ?」


「ぐっ……! …………そんなこと知らない! 私は悪くないもの! 悪いのはすべてあなた! だから死になさい!」


 女の主張はすべて自分中心であった。


 自分の気分を害したから死になさい、とは絶対王政であったとしても言われることは少ないだろう。


「傲慢ですねぇ。だからこそ(おか)したいのですねぇ。あなたのすべてを(おか)したいのですねぇ!!」


 元主の瞳は狂気に満ちていた。


 今この戦場で最も危険な存在は元主一択だろう。


 それほどに元主の纏う空気は異常であった。






 〈NEVERヴァード世界線〉対〈アザークラウン世界線〉──戦争開始。

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