少年、少女と出会う。
「へぶしっ!?」
女神との邂逅を果たし、異世界へと飛ばされた少年、秋田健太郎は深い森の中でくしゃみをしつつ目を覚ました。
「……あるぇ~? ここはどこでしょうねえ~?」
目を覚ました少年はひとまず現状確認すべく辺りを見回した。
そしてその結果、ここはどこか森の中だということが少年にもわかった。
「ってうおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉい!!!!!!?」
そして少年は気づいた。自らが一糸まとわぬ姿、いわゆる全裸であることに。
「ちょっとちょっと~これはレベル高すぎますよ女神様~。俺こういうプレイはするよりさせたい派なんですからね~」
少年はどこにいるともしれぬ女神レシアへ向けて軽く愚痴をこぼした。
流石の少年も露出癖は持ち合わせていなかった。
そういった特殊癖は今の少年にとっても敷居が高かった。
「くっそおおおおおおおおお……何気にさっきのことを根に持ってたんですかねえ女神様ぁ……」
この状況は全裸に剥くイタズラを敢行しようとした少年に対する罰なのか。人を裸にするのなら自らも裸にされる覚悟を持てという女神なりの戒めなのか。
これが勇者にする仕打ちなのかと思うと、あの女神もなかなか侮れないなと認識を新たにする少年であった。
「でもこのままじゃまずいなぁ。この状態で人里に出たら別の意味で勇者になっちゃうよ」
公共の場を全裸で闊歩する存在は変態のいう名の紳士、あるいは恐れを知らぬ勇者にジョブチェンジされる。
しかしそれは少年が目指すべき勇者像ではなく、女神から託された勇者業でもなかった。
「だ、だれかそこにいるんですか!?」
「!」
と、そこへ一人の少女が恐る恐る少年へ声をかけた。
「キャーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
「えっ!」
そしてそんな少女を視界に収めた少年は甲高い悲鳴を上げた。
「イヤーーーーーー! の○太さんのエッチーーーーーーーーーーーー!」
「えっ!? 誰ですかの○太さんって!? 私の○太さんじゃないですよ!?」
少年は某国民的アニメのし○かちゃんバリの恥じらいを持っていた。
こう見えても少年は常識的な側面も持ち合わせていた。
異性に全裸を見られた少年はテンパっていた。
「え、えっと……とりあえずこれ着ますか?」
そしてそんな少年を見かねたのか、少女は自身が纏っていたマントを脱いで少年の前に差し出した。
「おお……これはこれはどうもご丁寧に」
少年はその少女のご好意に甘えてマントを借りる事にした。
マントを手にとって少年はすぐさまそれを羽織って自らの肢体を隠した。
「ふぅ……危なかった。あやうく新たな性癖に目覚めるところだった」
女の子の目の前で裸をさらす趣味をもしも持ってしまった場合、少年の将来は社会的に明るくなかったであろう。
少年はなんとかその危機を回避することに成功した。
今の裸マント状態でも十分にアウトではあるのだが。
{……それで……あなたはどうしてここにいるのでしょうか?}
「ん?」
ひとまずの社会的存続の危機を回避した少年へ組めて少女は話しかけた。
そして少年はやっと冷静になって少女を見る事が出来た。
少年が見たその少女は緑色の目で更に緑色の髪、緑葉を意識したような緑色の服と緑尽くしであり、そしてなぜか耳が長かった。
「エルフ?」
少年は少女に問うた。
「え? あ、はい、私はエルフ族ですが――」
「エルフだあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
「えっ!?」
少年は異世界の中心でエルフと叫んだ。
少年は基本3次元が好きだが2次元もイケる口だった。
そしてエルフというファンタジーな世界ならではの存在を始めて目にして少年のテンションはマックス状態になった。
「エルフ! 長耳! しかも可愛い! ビューティフォーーーーーー!」
「え、えっと……あ、ありがとうございます?」
少女は褒められたと解釈して一先ず少年にお礼を言った。
「いえ、こちらこそありがとうございます」
「は、はあ」
また、そんな少女に対して少年もまた感謝の言葉を投げた。
美少女を前にしたら感謝するのは当然の事である。
「……えっと、もしかしてあなたは勇者様でしょうか?」
「あ、はいそのとおりです。やっぱり見てわかっちゃいますか」
「い、いえ見た目ではよくわかりませんが……全裸でしたし」
少女は少年の言葉をやんわり否定する。
流石に裸マント姿の少年を見ただけで勇者と断定したわけでは無かった。
「あれ? それじゃあなんで俺が勇者だってわかったの?」
「えと、この先に勇者の祭壇というところがありまして、数百年に一度そこから人間族の勇者が現れるそうなので」
「ほほう」
勇者の祭壇。そこは女神レシアが世界の危機の際に勇者を召喚するための場所であり、由緒ある聖域なのである。
「この森には結界が張られていますので、ここまで来れるのは巫女か勇者様しかいないはずなんです」
「巫女?」
「あ、はい。申し遅れました。私はこの勇者の森の管理者で巫女のアリスと言います」
「あ、これはこれはどうもご丁寧に。俺の名前は秋田健太郎と申します。こんな名前ですが千葉県在住です。だけど今は勇者として召喚されたため住所不定です。よろしくお願いします」
少年は少女にあわせて自己紹介をした。
「アキタケンタロウ様ですか? 不思議なお名前ですね。でも何故かとても胸に響きます」
「え! それってもしかして運命感じちゃった!? 俺にホレちゃった!? いやーまいったなー!」
ただ単に名前の語感が良いと言われただけでこれである。
勘違いも甚だしかった。
「い、いえ! そういうことではなくてあまり聞かない語感のお名前だなと思いまして!」
「あ、そういうことですか」
だがそんな勘違いも甚だしい少年の言動を慌てて否定する少女は初々しかった。
と、そこでグゥ~というお腹が鳴るような音が聞こえてきた。
それは少年の腹から聞こえてきたものだった。
「あ……うふふ、とりあえず私の家に行きますか? 勇者様に尽くすのが巫女である私の使命ですので」
「え、そんな。そういうことはお互いをもっと知り合ってからじゃないと……」
ただ単に家に招かれただけでこれである。
早とちりも甚だしかった。
「家に着いたら私が腕によりをかけてご飯を作りますので期待しててくださいね」
「あ、ですよねー! わーご飯楽しみだなー!」
だがそんな早とちりも甚だしい少年の言動は小声だったために少女には届かなかった。聞かれなくて正解であっただろう。
そしてこの少年、少女の言葉に動揺する辺りにそこはかとなく初心なところが垣間見える。
言動にやたらと問題がある少年だが、それでもまだ14才のひよっこ男子なのである。かわいい女の子のお宅訪問にドギマギしてしまうのも致し方ないといえよう。
こうして勇者たる少年、秋田健太郎と巫女たる少女、アリスは出逢った。
風邪を引きつつ2時間で書きました。
本当は物語冒頭のところまで書くつもりだったのにくそおおおおおおおおおお!




