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12話 めでたし


 それからは目が回るほど忙しかった。

 なにせイベント開始まで1時間を切っている。

 一秒たりとも無駄に出来ない。

 ひとまず七々瀬に電話で一緒に楽しめそうにないことを伝えると『がんばってください』と激励の言葉をもらった。

 てっきり無数のため息を頂戴するものと思っていたので拍子抜けだった。

 社員さんと現状を整理し、全員の行わなければならないことを共有する。

 イベント開始後は会場のスタッフの方々とコミュニケーションを取りながら円滑に進むようあちこちを走り回り、問題が起これば駆けつけた。

 やはり初めてのイベント開催という事もあり問題は噴出し息をつける暇がほとんどないほどに忙しかった。

 分からないことも多くミスも多発したが、何とか社員さんや現場のスタッフの方々からフォローを受けつつ俺たちはイベントを裏で支え続ける。

 時間は光のように過ぎ、午前のプログラムが終わり、昼休憩の後に午後のプログラムが始まる。

 その後もイベントは大過なく進みついにエンディング。

 MCの方が、優勝した選手やストリーマーの方々にインタビューをしている。

 俺はそれを尻目に座席に向かう。

 残りの仕事は後片付けだけなので、一時的に空き時間が出来たのだ。

 当然だが俺の座席のとなりには七々瀬が座っていた。

 他の観客達の邪魔にならないよう移動し自身の座席に座る。

 インタビューに聞き入っていた七々瀬が俺に気づいた。



「一人にして悪かった」



 俺がひっそりと囁くと七々瀬は「・・・・・・いえ」と小さく呟き顔を正面に戻す。

 怒っているのかとも思ったが、その真剣な眼差しからするにインタビューに集中しているのだろう。たぶん。



「・・・・・・今日はとても楽しかったです」



 邪魔するのも悪いと思い黙ってインタビューを聞いていると七々瀬が言った。

 七々瀬らしからぬ言動に俺はパチパチと瞬く。



「ゲームやストリーマー、プロゲーマーのことを全く知らないのにちゃんと楽しかったです」

「そりゃよかった」



 頬を染めながら感想を教えてくれる七々瀬に俺は思わず吹き出す。

 そんな俺を一睨みして七々瀬は続ける。



「それを形にしたのが雪城くん達で」

「まあ後悔はあるけどな」

「素敵なお仕事だと思いました。雪城くんが夢中になるのも頷けます」



 目を細めて言う七々瀬に俺は照れくさくなっておう、とかうんとか声にならない音を出して黙り込む。

 そのまま最後までインタビューを聞き終わり俺と七々瀬は会場を出る。

 イベント後も社員さん達を手伝うつもりだったのだが、そこまで迷惑は掛けられないと言われたのだ。

 体内にたまった熱気が秋の空気に溶け出し、同時に疲労が流れてくる。

 しかしそれはどちらかと言えば心地よく、余韻に浸るには丁度良かった。



「・・・・・・今度教えてください」

「ん?」



 疲れていたのかしばらく口を閉じていた七々瀬の声に俺は首をかしげる。



「今日のゲームのルールとかです。絶対に知っていた方が次も楽しめるので」

「!」



 七々瀬のその一言に俺の疲労が吹き飛んだ。

 要するに七々瀬はまたイベントに参加してみたいと感じたということであり。

 それはつまりそう思うほどに今日を楽しんでくれたと言うことで。



「なんなら一緒にやろうぜ!」



 俺はそう破顔して、今までの苦労が全て報われたような気分になったのであった。

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