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11話 エッチな先輩が倒れたってどういうことですか?


「白州さんが倒れたってどういうことですか⁉」



 連絡を受けた俺は関係者用の裏口を通り控え室の扉をノックの返事も待たずに開けた。

 室内にいたのは白州さんチームの社員さん方。

 室内に満ちる雰囲気は重苦しく、とても大型イベントを1時間後に控えているとは思えない。

 社員さんの内の一人が俺に気がついた。



「白州さんは大丈夫なんですか?」

「あ、うん、さっき救急車で搬送されたんだけど過労みたいだから数日休めば治るだろうって」



 詰め寄る俺に答えてくれる社員さんに俺はひとまず胸をなで下ろす。

 白州さんの仕事ぶりとここ数日の様子から予想できていた事態ではあるだけにどうにか出来なかったのかと後悔が巡る。

 やはり負担を掛けすぎだったのだ。

 その責任はやはり負わねばなるまい。



「そこで雪城くんにお願いがあるんだけど」

「はい?」

「イベント進行手伝ってもらえないかな・・・・・・?」



 眉をハの字にしながら「お客さんとして来てるところ申し訳ないんだけど」と言い添える社員さんに俺は一も二もなく頷く。

 白州さんが倒れたと聞いた時点でそのつもりでいたから問題ない。

 七々瀬を一人にしてしまうのは心苦しいがどうにか許してもらおう。

 そんなことを考えていると社員さん達の顔が全く好転していないことに気がつく。

 当然俺は白州さんの代わりを完璧にこなすことは出来ないので、状況が依然として厳しいには違いないのだろうがともかく人手は集まったのだ。

 あとはイベント進行に全力を尽くすだけではないのだろうか。

 嫌な予感が鎌首をもたげる。

 やがて社員さんが重たい口を開いた。



「雪城くんにはその・・・・・・白州さんの代わりを務めて欲しくて」

「・・・・・・はい?」



 自身の耳を疑った。

 俺が白州さんの代わり・・・・・・?

 社員さんが務めるのではなく?



「・・・・・・実は白州さんがイベント当日に何をするか私たち何も知らないんだ」

「え?」

「恥ずかしい話、私たちも自分たちの仕事に手一杯で白州さんが、つまり現場のリーダーが何をするのか知らないんだ」



 ・・・・・・確かに人手が全く足りていなかったのでそういうこともありえるのだろうが。



「なんで僕なんですか・・・・・・? 僕も何にも白州さんの仕事知らないし、経験もありませんけど」

「いや、白州さんの仕事を1番知っているのは雪城くんなんだ」



 そんな訳がない。

 俺は社員さんと比べて勤務時間が少ないし、社員さんの方が行った仕事が多い分全体像を把握できているはずだ。

俺のやっていたことと言えば白州さんの補助だけで――。

 俺の思考が引っかかる。



「最後の数週間はほとんど一日中白州さんの補助についていた雪城くんが私たちの誰よりも白州さんの代わりを果たせるんだ」

「ッ」



 確かに俺が1番白州さんが働いている様子を側で見ていた。

 基本的に仕事も白州さんからもらっていたしどれも白州さんの仕事に関連していた。

 だから俺が白州さんの仕事を1番知っているのかもしれない。

 だが――。



「もちろん無理にとは言わないし言えないよ。本来は私たちがこなすべき役割だからダメだったら遠慮なく言ってね」



 俯く俺に社員さんが優しく声を掛けてくれる。

 何より自信がなかった。

 側で見てきたからこそ分かるが白州さんの代わりなんて絶対にこなせない。

 しかし、もしも白州さんの役割が果たされなかったらイベントの質は落ちるだろう。進行は滞りお客さんの体験がおそらく悪くなる。

 けれどもそれは俺がその役割を果たしたことにより改善するとは限らないし、より悪くなる可能性すらある。

 スマホが震えた。

 画面を見ると七々瀬からのメッセージだった。

『早く戻ってきてください。始まりますよ』

 たったそれだけの素っ気ないメッセージだったけど。

 そこには隠しきれないワクワクが読み取れて。



「全力を尽くします」



 俺は決断した。


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