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音歌市の歌う風習
景色の中に溶け込む、輪郭の曖昧な凹凸のある石。
久留里地方音歌市の夕刻に行われているのは、お歌を歌い祈る風習。
これをやると、なんと、いつか、祈りは叶う日、来るらしい。
古くから伝わる歴史のある歌は、心を癒し、本来の目的を思い返させてくれる。
視線をそらすと、境界線ははっきりと決められていた。印となるテープやコーン、仕切り板に仕切られている。
そうして固定された一刻に、整列して沢山の声を歌にする。
町の空気に溶けていく色々な声の高さの音。みんな一斉に一緒の時に歌い、放送からも音は鳴る。
そのとき、伊織も、列に入り、歌っていた。
「
あかるいしかい ついにみえた
ふいにてんかい かいえんする
いつつかんかく けしきうつる
しらないほうへ ゆけるけいろ
そうさくれきし おとしはなし
しんけんになり ききとれるよ
けいかしていく たんきかんに
ひきこまれてく たいけんした
」
格調高き一節一節の言の葉の連なりは、降りかかり積もる雪のように、心に染み入り溶けていくかのような幸福感に浸れる調和。
終わると余韻は残る中、解散していき、ほつほつと人は減りいなくなる。




