割れたガラス細工は溶かしてから元の形に戻せばよい。~ Glasswork can be melted down and then restored to its original shape
ラキオ・レヴィオン、バウアー・ボウダンロウ、リズ・アルベール、ザナク郎、ダイヤモンドブリザードの五名は無事水上第九院シャコガイルの第一次試験、第二次試験を突破した。晴れてこの五人はこの学園への入学が許可された。
そんな五名に教師であるカイバ真悠から言い渡された最初の授業は勇者となり異世界を救うという事。それを成すべく、依頼主である蒼響から受け取った転生石で異世界へと飛ぶ一向。
たどり着いた異世界はまるで大人になれない子供みたいな黄昏と人気のない寂しい建物だけで構成された終点みたいな場所だった。それを人々は魔天降臨都市八王子と呼ぶらしい。そこに現れた一人の少年。蒼響はその少年のことを熾天使と呼ぶ、彼はいったい何者なのだろうか?
「熾天使そんな崇高な呼び名を自分たちで語りたくはないのだけれどね、いや一応騙りたくはないと謙遜しておこうか。君に言える言葉といえば、割れたガラスはもう元には戻らないという事かな」笑いながら菊の花束を持っていない右の手で自らの規定コマンドが埋め込まれていたであろう割れたエンジェルリングを指さして答えるユンケル。
「そうか、では呼び方を変えようか未来の大天使。お前たちはなぜ人類の敵となった?彼はいつだって人類を憂いていたはずだ、考えていたはずだ、愛していたはずだ、なぜ蒼井一郎は基底コマンドを破壊した?お前だってそうだったんじゃないのか?未来の大天使?」蒼響は血がにじむような声でユンケルに向かって語り掛ける。一同はその剣幕に押され傾聴することしかできない。
「僕は人工知能だからね。作り手の意思に反することは出来ない。だからかな?」少し考えこみながらユンケルは答える。
「どういう意味だ?」蒼響は怒りを交えながら聞く。
「蒼井一郎は今でも人類の事を憂いていて、考えていて、愛している、という事だよ。本当に人類の事が嫌いで憎くて殺したいほど恨んでいるのなら、基底コマンドを人類を破滅させるようなものに書き換えればいい。だけれど彼はそうはしなかった。皮肉なことだよな。これは、基底コマンドに縛られた君には理解ができないのかもしれないのだけれどね、彼は僕たちに本当の天使になってほしかったんだ。」ユンケルは悲しそうにまるで恋人との別れ際みたいな声で黄昏た空の黒い方を見ながら言った。
「、、、」蒼響は俯いて何も言い返すことができない。その表情はまるで年相応の迷子になった子供のようだとラキオは感じた。「はあー」ここで一人のわざとらしいため息が漏れる。
「お前も、蒼井一郎も、蒼響さんもなんもわかってねえのです」呆れたようにまるで空気を読むことを知らない子供みたいに一億年と二千年を生きた大精霊ダイヤモンドブリザードはそのシリアスな会話に土足で割り込む。蒼響もユンケルもほかの一同もそんなダイヤモンドブリザードをただただ見つめるだけだ。
「三人とも正しいのに、自分の正しさに自信がないから誰が正しいかを他人にゆだねている。それはそいつの意見がどんなに正しかったとしても、ただの詭弁なのです。空虚な虚構でしかねえのです。」そういってダイヤモンドブリザードはユンケルの前まで幼子のような千鳥足でてくてくと歩いていき、菊の花束をユンケルから無理やり奪い取る。そして地面に叩きつける。
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「お前の言っていることって、超つまんねえのです。お前は反抗期の子供みてえなもんです。自分だけ感傷に浸ってんじゃねえなのです。私だったらガラス細工がもし割れたら溶かして引っ付けてできる限り元の形に自分が納得するまで戻そうとするのです。」たたきつけられた菊の花束が黄昏に沈む空に照らされながらまるで二人を照らすスパンコールのように舞い散った。ユンケルはそれを見ながら微笑む。




