六年越しの再起動
真人類。
それは自らを正統な人間だと信じる者。
新人類。
それは自らを進化した人間と信じる者。
常人類。
それは神に愛されなかった普通の人間。
――時は西暦2026年、神代の只中。それぞれが奉じる神の遺志を継ぎ、霊長の座を賭けた絶滅戦争が繰り広げられている世界の片隅で――正真と最新を謳う二つの人類の原型が、歴史に関わる事もなくひっそりと滅びようとしていた。
† † † † † † † †
なだらかな風に乗り、葬送の如く厳粛な階調が沁み渡る。
集落の外れにある高台へ建てられた木造の小屋。
そこから奏でられる哀調が、今日も今日とて名前のない人々の耳に届いた。
胸を打つ強さはない。心を湧かせる情動もない。
中身のない空洞な音律は、数式じみて味気ないただの音の羅列である。耳の肥えた聴衆なら、何かが物足りないと首を捻るだろう。
しかしその音律へ、名もなき集落へ住む人々は耳を傾け続けた。
異様な光景である。植物じみて変化のない日々を過ごす彼らが、一人の例外もなく小屋を見上げているのだ。その光景はいっそ病的ですらあった。
事実として彼ら常人類は病んでいるのだろう。外部から隔離された世界で生き、どこにも行けず、何も出来ず、自然消滅に近い形で人口を激減させていっている彼らは、遠くない将来に絶滅する定めにあった。
あらゆる気力に乏しく、滅多な事では繁殖行為を行わない生態系が、その系譜を永らえさせられる道理などあるはずもない。
生物として、彼らは一人残らず狂っていた。だが――だからこそと言うべきだろう。名前を持つ事すら放棄した彼らは、残された極僅かな本能として刺激に飢えているのだ。
ここ六年間飽きる事なく青年の独演会に聞き入っているのは、それ以外に娯楽がないからで。あたかも霊山に、生き物としての活力を吸われているかのような人々にとって、青年の齎す音の羅列が唯一の癒しとなっていたのである。
「………」
そんな切実な事情など知るよしもなく、知る機会はおろか関心すらない青年が、彼らの声なき救難信号を察知する事はない。
聴衆への気遣いなどなく、青年は無造作に演奏を終えると、簡素なベッドに弦楽器とヴァイオリンパレットを放り投げた。
そうして虚空に指先を走らせ情報集積文字を描く。薄紅の魔力波が奔り、ヴァイオリンとその弓を包み込んだ。
するとあたかも時間が巻き戻ったかのように、劣化していた部品が修復されて、狂っていた音律が整えられ弦楽器が調律される。
元々ヴァイオリンのみならず、音楽というジャンルに愛されているが如き天才性を持っていた青年である。続けてくれと亡父に言い遺されて以来、毎日欠かす事なくヴァイオリンを弾き続けた今、その技巧は二十歳にして超級の域に踏み込んでいた。その成長力には彼の異質特性も関わっているにしろ、極めて驚異的な技量である。
だが青年自身の才覚と特性とは別に、彼の演奏には音楽に宿る魂とでも言うべき心が欠けていた。いっそ破綻しているとまで言える、一芸を極めた者に特有の狂気的な精神の不安定さがない。常に揺れ動くからこその揺れ幅、心のエネルギーが完全に枯渇している。これではただ巧いだけだ。技術に精神が伴っていない。
青年にはどうでもいい事だ。仮に何者かへ酷評されても、ああそうかとも思わないだろう。他にやる事がほとんどなく、亡父の遺言だから続けているだけである。
父母の仇と言える男の呪いで、この集落に定住させられていたが。実を言うと既に行動を縛る魔術の効力は切れていた。故にこの集落から出ていく事はいつでも出来る。そうしないでいるのは、究極的に何もかもがどうでもいいからに他ならない。
そんな青年にとって他人への関心がなく、ただなんとなく生きているだけの人間の群れに埋もれているのは心地好かった。このまま枯れ果てるのも悪くないと、本心から思う程度にはあらゆる気力がなくなっている。
気力が回復する兆しは、未だに無い。
「………」
青年の名はアルトリウス。苗字を忘れた、糸の切れた人形。
この六年で身長は伸び190cmに届いた。鍛えた肉体の厚みと合わさり、堂々たる偉丈夫と言えるだろう。
今に至るまで一度も散髪せず、伸び放題の金髪は腰よりも下の位置まで届いている。だが癖のある髪質は傷んではいない。体を清潔に保つ魔法を使っているためだ。
すらりと伸びたしなやかな腕を動かし、アーサーは虚空に手を翳した。すると主人に呼び出された忠犬のように、壁に立てかけられていた大剣が飛んでくる。錆びつきつつあるそれを掴んだ青年は、粗い生地のシャツを脱ぎ、裸の上半身を外気に晒して外に出る。
庭先で大剣を振るった。かつて闘技場で染み付いた習慣として、彼は鍛錬もまた欠かした事はない。特に目的意識があるわけではないにしろ、一度身に着いた習慣を辞める理由もなかったから続けている。時間だけは腐るほどある故に。
おかげさまで、と言っていいかは定かではないが、青年は極めて順当に武力を高めていた。その力量はまだ少年だった頃のアーサーを、一太刀で斬り伏せられる程度にはなっている。正確な実力は彼自身掴めていないが、誰かと競ったりするわけでもなし。何者かと比較する必要性を認めず、心を無にしたまま訓練に励んでいた。
――首に嵌めた革のチョーカーが、アーサーの魔力を吸い続けている。
彼自身の肉体性能を大幅に劣化させる弱化の魔術だ。常日頃から外さずにいるのは、これがなければ周囲の人やモノが脆すぎて、触れただけで壊してしまうからである。微細な力加減は面倒だから、アーサーは常にこれを身に着けていた。
ここは都市全体を余さず情報集積文字で補強されたグラスゴーフではない。自らを弱体化させなければ、とてもではないが日常を送る事もままならないだろう。アーサーは数時間ほど大剣を振り、型の数々を反復して、改良の余地についてぼんやりと思いを馳せながら鍛錬も終える。魔力波で体を包み込むと、浮かんでいた汗を払い、元の清潔な状態に戻してシャツを着た。
少し遅めだが朝食の時間だ。小屋に戻り中にある木箱を開いた。魔術で加工して内部の空間を弄り、拡張した木箱の内部は大型冷蔵庫に等しい規格になっている。そこから大きな蜥蜴の尾のような物を取り出すと、アーサーは端正な眉を微かに顰めた。
食料の備蓄が少なくなっているのを忘れていたのだ。頼めば集落の人達が分けてくれるだろうが、生憎とそんな気にはならない。
何せここの人々はマネキン人形のようなもの。恩も借りも、作るだけ虚しさが募るだけだ。
「そろそろ……狩りにでも行かないと、いけないのかね……」
数ヶ月ぶりに独り言を呟き、分厚い肉に調理も施さず、炎で適度に焼いて無造作に食らいつく。
野蛮な食し方だ。見目から伝わる知性の深さとは反比例している。しかもアーサーは大飯喰らいになっているらしく、自身の頭ほどのサイズがあった肉をぺろりと平らげた。
鎧も着込まず、大剣だけを引っ提げて、着の身着のまま再び小屋を出た。思い立ったが吉日というわけではないが、鍛錬の後でも疲労はほとんどない。やる事もない故に、必要に迫られたらすぐに行動するようになっている。
集落を横切り、霊山に向かう。霊山の北東部に位置する集落の目の前には、カンサスの樹海があった。躊躇う素振りもなくそこへ踏み込んでいく。
その最中に、何人かの人間と擦れ違ったが、彼らはアーサーよりも更に意志に乏しい目で一瞥を向けてくるだけだ。挨拶もなければ関心もない。それで良かった。親しみを持たれても億劫なだけだから。ただ近くで生きている他人、彼我の認識なんてそれだけでいいだろう。
なんのために生きているのか。なんのために寄り合っているのか。もはや意志のある人間だった頃の名残で、群れを作っているだけのガラクタばかりである。そこに枯れゆく種子の悲哀を見つけた気もするが、まあ……やはり、どうだっていい。
だがそんなふうに冷淡なアーサーも、一人の例外にだけはある程度の労は割く。
子供だ。この集落でたった一人の女の子。まだ幼い故か、大人達の無気力さに汚染され尽くしてはいない。そのためか、何日置きかにアーサーの小屋にまで来て、何度か話した事がある。
まだ10歳にもなっていない彼女に名前は無い。名無しの少女だ。
「アーサー? おはよう……アイサツって、こう言うんだっけ?」
「ああ、おはよう。よく覚えていたね。で、自分の名前は考えてみたかい?」
とてとてと駆け寄ってきた女の子は、感情に乏しい目で青年を見上げた。以前、楽器や音楽について訊かれた際に、彼女に名前を訊ねた事がある。
呆れた事に、ここに住み着いて何年も経って、やっとこの集落とそこに住む人々に名前が無い事を知ったのだ。不便に感じたアーサーは、彼女に宿題を出したものである。次に会う時までに、自分の名前を考えておくように、と。
アーサーの問いに、女の子ははにかんだようだ。表情は薄いが、確かにそう見えた。
「うん。あの人とあの人も、ナマエが何か知らなかったから悩んだけど、わたし決めたよ。わたしのナマエはね、シャロウ。かわいいでしょ」
「浅い……ね。まあ君達の感性では可愛らしく聞こえもするか。わかったよシャロウ、私の小屋にでも行って待っているといい。興味があるならヴァイオリンに触ってもいいよ」
「ほんと? でもそれより……アーサー、これから森に行ってお肉取ってくるのよね。わたし、それ欲しい」
シャロウの率直な注文に、アーサーはくすりともしない。しかし、一応は誉めた。
「ワガママを言うとはね。それでいい、君は今自己を主張した。シャロウは今人間に近づけたよ。おめでとう」
「オメデトウ?」
おめでとうという言葉も無いらしく、オメデトウ、オメデトウ、と何度もオウム返しにするシャロウから目を切った。
娘の影響だろう。少しばかり活力が芽生え出しているらしい彼女の父が、それとなく娘の後をついて行っていて、気遣わしげにしつつもアーサーを警戒している。
父親としては当然の反応だがここでは異常だ。さっさとシャロウから離れ、歩を進める。
たったの数度、外部の人間が関わるだけで、意志の片鱗を取り戻しつつある父娘を見てアーサーは思う。
何もかもから切り離され、閉じ込められ、刺激を失くした人々だが。ほんの些細な切っ掛けだけで、存外彼らは元の人間らしさを取り戻せるのかもしれない。だがアーサーがその刺激になってやる気は欠片もないわけだが。だって面倒臭い事この上ない。
樹海に立ち入る。
集落に迷惑が掛からぬよう奥まで進み、そして掌を浅く切った。
血を滴らせてその場で待つ。すると20分ほどでアーサーの血の匂いに釣られ、大きな獣が近づいてきた。
恐竜だ。ティラノサウルスである。
外見はまったくそれであり、霊山の生態系がどうなっているのか興味深くはあったが、彼を見たアーサーはついつい失笑してしまう。
「やあ、また会いに来たよ。そろそろ尻尾が生え治った頃合いだと思ってね。こんなにも簡単に会いに来てくれるとは、私の給食係としての自覚が持てたようで何よりだ」
地竜が吠える。何度も、何度もこの人間に尾を斬られ、奪われてきた。目を血走らせ、悪鬼の如き形相で憎しみを叩きつけてくる。地竜は雪辱を晴らさんと猛り狂っていた。
その感情の激しさに、アーサーは破顔する。素直に羨ましい。そんなにも怒れる気力があるのが、どうにも羨ましくて仕方がない。激しい感情がアーサーには必要だったから。なぜ必要なのかも判然とはしないが、欲しいと感じている。だから欲する。理屈ではない。
大きな口を開いて襲い掛かってくる恐竜をひらりと躱し、透かし、からかうように足を大剣の腹で叩いて転ばせる。
前足が短いティラノサウルスは、一度転けると二度と立ち上がれずそのまま死ぬらしいが、切断された尾が再生する事からも分かるように彼は普通ではない。ティラノサウルスは横転して勢いをつけると見事に立ち上がり、怒り狂って突進を繰り返してきた。
アーサーにとっては大きな犬にじゃれ付かれているようなものだ。穏やかに微笑みを浮かべつつ、暫くティラノサウルスが疲れるまで付き合ってやる。そうして彼が息切れを起こし始めると、大剣をサッと振るって彼の尾を根本から斬り飛ばした。
絶叫して地面を転がるティラノサウルス。
切断箇所から鮮血が吹き出ている。
「今回は多めに貰っていく。また取りに来るから、血を流し過ぎて死なないようにな?」
アーサーは大剣を食卓のナイフに見立て、恐竜の尾に突き刺すとそのまま肩に担ぎ帰路につく。地竜は悔しげに吼えるが追っては来ない。これでティラノサウルスの小さな脳みそが、今日の敗北を忘れるまで暫く大人しくしているだろう。
悠然と歩くアーサーは血の匂いを垂れ流している。恐竜の尾から臭うのだ。こんな樹海で血の匂いを漂わせていれば、多数の獣に見つかり危険な目に遭いそうなものだが、生憎そんな事態に巡り合った事はない。
近くまで獣は来るも、アーサーを見るなり諦めて引き返すのだ。本能的に挑んで良い相手ではないと察知しているのである。
つまらないな、と独りごちる。なんでも良いから仕掛けて来てほしい。なんなら殺してくれても構わない。殺せるものなら。
適当な傷の一つでも負わせてくれれば、復讐できる。やる事が出来たと嬉々としてよく知りもしない樹海を練り歩き、誰も行ったことのない奥深くにまで進むだろう。
理由が欲しい。アーサーは、切っ掛けを待っていた。自分からそれを探しに行く気はないくせに、それが来るものとなんとなく思っている。
なんとなく――その感覚が正しいと、心のどこかで確信していた。
故にアーサーは驚かない。霊山全体から魔力とは違う得体の知れない〈力〉の波動が噴出しても。
「………」
ちらりと背後を振り返ると、雄大な霊山が鳴動している。この六年ではじめて目にする現象だ。山嶺に幾つか見られる霊洞から、途方もない規模のエネルギーが迸っている。地響きがした。地震と言ってもいい揺れである。
霊洞から吐き出された膨大な光は、しかし何も照らさない。光そのものなのに、まるで質量を伴った帯のようだ。
アーサーは目を眇めてそれを眺め、視線を正面に戻す。何が起きてもいい、何も起きなくてもいい、河の激流に乗った木の葉のように流されるだけだ。
「アルドヘルム。これから此処で何が起こるのか知っていて、私を此処へ寄越したのか? だとしたら……台無しにしてやるのも、いいかもしれないな」
己の身を処した男の名を舌に乗せ、なけなしの悪意を言葉にしてみる。
なんでもいい。魔術を扱えるようになって以来、元の世界に戻るための手法を独自に研究してはみたが、まったく出口は見えず進展しないでいる。
もう諦めていた。元の世界には帰れないのだろう、と。だからアーサーは、本当にどうでもいいと思っている。面白そうならそれでいいのだ、アルドヘルムの思惑がどんなものでも構わない。面白そうなら乗る、面白くなさそうなら蹴る。それでいい。
アーサーは、集落に戻った。
時間にして二時間、留守にしていただけで、壊滅してしまっていた集落に。
(――何があった?)
余りに唐突で、呆気ない幕引きである。その光景を目にしても、アーサーの心は凪いだ湖面のようだった。
木造の家屋を破壊され、家を失くした何人かの男女が、地面に座り込んでいる。どれも見知った顔ばかり。犠牲者はほとんどいないらしい。
いっそ皆殺しにされていた方が彼らも楽だっただろうにと冷たく呟く。とりあえずアーサーは大剣を振り、突き刺していた肉の塊を小屋の方へ飛ばした。ちょうど小屋のすぐ横に落下したのを見もせずに、手近な女の腕を掴み引き起こす。
その女は、先程シャロウと自分に名をつけた少女の母だ。こんなところで、一人で何をしているのやら。呆れ半分で彼女に訊ねた。
「何があった?」
「あら……ああ、貴方ね」
「………」
無気力に、しかし欠片ほどの心が軋んでいるように、滂沱の涙を流す空虚な女。それに、アーサーは掛ける言葉を見失う。
シャロウの母は、ポツポツと語る。
「大きな、黒い獣が来てね。あの人を食べて、あの娘を持って行ってしまったわ」
「……なんだって?」
「どうしてかしら、ね……メから溢れてるこの水が、止まらないの。なんで、かしら」
「………」
「なんで……」
腕を離すと、女はその場にくずおれる。それっきり、女は動かなくなった。水を飲まずに、食べ物も食べずに、眠らずに。そのまま動かず、そして翌日には完全に停止した。
女は停まったのだ。永遠に機能を停止した。
原因は精神死。元より無に等しかった活力が、マイナスに振り切れたため生命活動を放棄したのだろう。
アーサーが不在だった瞬間を狙ったように、或る獣が襲来していた……らしい。
既視感がある展開だ。
アーサーはシャロウを思い出そうとし、その顔に靄が掛かっているのを認識する。そういえば、まともに顔を見たこともなかった。
喜ばしい事だろう。赤の他人とはいえ知己が殺されたのだ。やる事ができたのである。しかも愛着も何もない、赤の他人が殺された程度で。アーサー個人にはなんら損失がない。
「復讐しよう、彼女の代わりに」
赤の他人。そうだとも、ここにいる全ての人間に対して情なんて無い。
だが……襲ってきたという獣は運が悪いらしい。よりにもよって、この地で唯一、アーサーと言葉を交わした人間を襲ってしまうとは。
ああ――無性に頭が熱い。久方ぶりに火が灯る。この火打ち石を叩いているかのような感覚は、そう……火花を生んでいる。
「私は……怒っているのか……? ……まさか」
失笑し、否定した。
顔をよく覚えてもいない他人が殺された程度、どうとも思っていない。本当だ。
単に……折角話し相手ができそうだったから。それを奪った畜生を、駆除してやりたくなっただけだろう。
いずれにせよ何かをする理由が生まれた。目的ができた。今はそれでいい。
アーサーは女と男の墓を掘り、二つの遺体を埋める。墓石を適当に立てて、シャロウの母、シャロウの父と刻んだ。
あと一つ名を刻む事になるかもしれない。連れ去られたというシャロウが、まだ生きている可能性はほとんどないが、生きているなら助け出す。シャロウの母が、それを望んでいる気がした。
大剣を見る。今まで一度も手入れをしていない、する気もないそれを。
魔術でも使えば元通りにするのは簡単だが、生憎それは下策だ。この大剣には今のアーサーでは扱えない、マーリエルの魔術が刻まれている。
魔力が切れて効力を失っているが、刻まれたまま残っている情報集積文字に魔力を注げば第六位階魔術〈加重〉と、大剣の強度を増す機能が復活する。下手にアーサーが魔術を掛けると、それらの術式に変調をきたして使用不能になりかねない。
面倒だが、鍛冶屋にでも手入れを任せないといけなかった。それもなるべく早く。
「復讐、か……成長していないな、私も」
アーサーは、自分を嗤った。




