猫
空をながむ。
彼女は、いつも外を見るのだ。高い高いところへと、向かっていくのだ。
にゃあ。
そんなに可愛らしいものではない。柔らかい毛に覆われたその体、じっと見つめる目。それらは可愛らしいというに、なぜそこは妥協したのだろうか。
チリンチリン。
とても涼しげである。私からも鳴っているこの音を、彼女はいつも鳴らす。
嗚呼、愛い。
その音は、彼女の動を表す。小さな躰で彼方此方と走り回り、私の足を追い、様々なものに抱き上げられ、然し逃げ。
自由奔放である。誰にも邪魔は出来ないのだ。してはいけないのだ。
ニャアオ。
どうやら彼女は私に抱き上げて欲しい様だ。
懸命に頭を摺り寄せ、鳴く。
私はせねばなるまいことがあるのだがなあ。
そんなことを思いながらも抱き上げてしまうのは、彼女の魅力故か、なんなのか。
ンニャ。
鳴き声が一寸潰れた。
強請っていたくせに、叶うと予想していなかったのだろうか。ちょっと抜けている。
思わず呆れてしまうようなことも、彼女は気にしない。爪を立て、私の肩に登る。私が前かがみになると、背に乗り、整え、眠る。随分なことだ。私は布団でも、足場でもないというに、受け入れざるを得ない。
私の傷は気にせず、彼女は眠る。
落とさぬようにと気遣ってやったというに、気にも留めない。
私は、姿勢を正していった。
傾斜がきつくなっていき、最後には天を向く。
ウンニャー。
堪らず、飛び降りた。
チリンと、音が鳴る。
簪だ。どうやら彼女の脚が掻っ攫っていったらしい。全く、酷いものだ。そう思いながらも、見つめる。
可笑しい。目が合わない。
ヒラリと飛び降りた彼女は、こちらを見ることなく、また、窓辺へと帰っていった。
そうやって、糸だけを、残していく。




