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ピクニック

「ハクちゃん説明ありがとねぇ~」

「ぬぅ、ちと怖がらせすぎてしまったの、反省じゃ」

「まあまあそういうときもあるよ~」

「というかリルが出ればよかったのではないか?」

「ん~?ウチはかくれんぼしてたからさ~」

「はぁ、まったく……」


 リルは口調こそ落ち着いた雰囲気ではあるが如何せん行動が幼すぎる。さっきだって姿を律儀に見せたワシとは反対にずっと姿を隠してハルにバレない程度にちょっかいをかけていた。

 はぁ、こやつはまったく変わってない……これでは本当にただの犬じゃな……


「それにしても、あるじいないねぇ」

「リルですらまったく追いつけんとは……無自覚とは怖いの」


 ハルと別れた後ワシらはあるじを追いかけていた。

 リルの方がワシよりも走るのは得意ということでリルの背中に乗って追いかけているのじゃが、いくらリルが本気でないとはいえ全くあるじに追いつけん。

 10分は走っただろうか、それでも足音すら聞こえぬ。


 そして何より恐ろしいのが、


「あるじすごいねぇ、もんすたー全部倒してるよ~」

「…………」


 まったく、無自覚とは怖いものだ。B級とはいえ下層90階のモンスターをノーストップで全て倒しておる。いや、正しくは叩きおとしているという表現が正しいか。


 おそらく向かってきたモンスターを全て横の壁にどかしておるのだろう、証拠にワシらの通り道は綺麗なのに対し、左右の壁はモンスターの血でいっぱいである。かろうじて原型を留めているものもあるが、それもみなグシャグシャである。


 あるじは高くて難易度D級の10階ほどだとは思っておるじゃろうが……そもそもワシらと同格レベルのスピードをただの人間が出せるだけで相当なものじゃ。

 

 ほんとに……流石あるじじゃな!

 誰もいないのにリルの背中の上で自慢げに鼻を『ふんす!』と鳴らす。


 ワシらはこの2年であるじが大好きになっていた。

 まったく、2年前の自分が見たら驚愕するじゃろうな……だからこそあるじの成長が今は何よりもうれしいし、あるじ、そしてリルやリザが健康に元気でいてくれれば他に欲しいものは何もない。

 そう、だからもし人間があるじに害を為すようなことがあればその時は……


「ハクちゃん……?」

「……すまぬ、すこし考え事をしておった」


 いかんいかん、魔力が漏れてしまっていた……これではワシも幼子と変わらんの、リルに何も言えぬではないか……

 

 ワシのあふれだした魔力のせいで倒れているモンスターが余計グシャグシャになってしもうた。まぁ時間が経てばダンジョンに吸収され跡形もなくなるから関係ないのじゃが……あるじの為にもそろそろ自重せねばな。


 そうして自分の幼子のような行動に反省していると、


「む、あれはもしや……」

「あ!あるじだ~!」


 5mほどもある大きな鉄の扉が壊れており、その奥にはそんな扉よりもさらに大きな塊、そしてそこで何やら作業している人影が見えるのだった。



♢♢♢



「よし、こんなもんでいいだろ……」


 リルとハクを探すためにダンジョンの奥へと進み始めてはや10分。ここはボス部屋っぽいしおそらく30階だろうか。

 そんな場所で俺はレジャーシートを広げ、バッグから料理用キッチンを取り出し、万全の状態でリルとハクを待とうとしていた。ここまで進んでも姿が見当たらないと思った俺はもしや後ろで隠れているのでは……?と思い始めていた。

 だからこそいい感じのモンスターを倒し、今はそれを料理しているところだ。つまり俺はリルとハクを追いかけるのではなく、待つことにしたのだ。

 

 リルはお肉、ハクはお魚……ではなくハクもお肉が大好きなので、俺がここで肉料理を作ることで匂いにつられて姿を現す。

 と思っていると……


「あるじ~!」


 後ろの方から聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「あ!リル~ハク~!やっぱり後ろにいたかぁ」


 予想通り後ろにいたリルと、その背中に乗ったハクがやってきた。

 リルはレジャーシートの上に置いてある大量のお肉料理をすぐさま頬張ると思って追加の料理を作ろうとする。

 が、


「ワン!!」

「うぉおおっと、あぶねぇ!」


 リルは大量の料理ではなく、料理をしている俺に突っ込んできた。その勢いと衝撃で地面に倒れてしまう。

 危ねぇ、反応が一瞬遅れていたら皿をひっくり返すところだった……

 かろうじて皿をテーブルに置き、出来上がった料理は守ったものの、残念ながら俺の頭は守り切るが出来なかった。


「いてて……って、もぉ~リル、くすぐったいってぇ」


 立ち上がろうとするが、2mもある大きなワンちゃんであるリルに押し倒されて身動きが取れない。そしてそこを『隙あり!』といわんばかりに顔を舐められる。

 少し重いな~と思いながらも、これが幸せの重さってやつかぁ……と幸せを噛みしめ、立ち上がるのを諦めてリルの頭を撫でていると、


「いで……っ!」


 突如リルに首を嚙まれてしまった。


「重くないもん!」


 おっと、どうやら『重い』と言葉に出ていたらしい。それを聞いたリルに怒られてしまったようだ。


 そうして10分間会えなかった分の再開の喜びを分かちあって落ち着いた後、俺たちはいつものように大量の肉を頬張ったりじゃれ合ったりして日常を過ごしたのだった。

ハク(CV:雪野〇月 様)で脳内保管

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