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作戦は明日

「コホンッ……で、状況を整理するとじゃが……」


 ワシとあるじが泣き止み、冷静さを取り戻した。そしてそこでみんなの自己紹介を済ませた後あるじに今の状況を説明した。

 そして今、話題はハル達桜花の城を助けようではないか……という話をし始めようとしている段階……なのじゃが――


 うぅ、ひまわりよそんな目でワシを見ないでくれ……っ。


 あれからずっとひまわりからの視線が痛い。ハルは以前にあるじの認識がズレているということを説明したおかげかなんとなく今の情報を察してくれておる……じゃが、問題なのはひまわりのほうじゃ。

 唯一皆と関わりがあるワシが皆に説明をしていたのじゃが、その時も内心ずっとひやひやしていた……。だって初めての弟子に……さっきまで『師匠っ!!!』って感じで尊敬のまなざしで見られていたのに……今では『え、こんな人だったの?』といったハイライトの無い視線で見られている……。ちがうのじゃ、ワシは本当にかっこいいのじゃぁああ……――



♢♢♢


 

 ふと視線が気になってまだ幼そうな少女の方を見る。俺がそちらを見るとすぐ視線を外されてしまった。……怖がらせてしまったのだろうか?それに、一瞬睨まれたような気がしたのだが……気のせいだよな?


「あ、あのぉ……白亜さんで……いいんですよね?」


 そう思っていたら今度は話しかけられた。

 

 中学生くらいだろうか……?今はこんなに小さい子供でも探索兼配信者としてダンジョンに潜るのか……やっぱり街の皆に聞いていた通りダンジョンというものが日常の当たり前になっているんだなぁ。

 

「はい、何でしょう葵《あおい》さん?」


 そう思いながらも年齢で態度を変えるのは失礼だと思うのでなるべく丁寧に、そして怖がられないように笑顔で返事する。

 

「ひまわりと呼んでください」


 また視線が鋭くなった。……どうやらひまわりさんに嫌われてしまったようだ。ハクのお弟子さんということらしいので今後とも仲良くしていきたいと思っているのだが……俺はなんかしてしまったのだろうか?原因が分かれば良いのだが……まぁ、それは今後追々なんとかしていこうか。

 最初はハクやリル、リザさんだって俺に敵対してたんだ。いつかは仲良くなれるだろう……。


「それと白鷺さん、あなたは本当に強いんですか?」


「ひまわりちゃん!?」


「……ひまわりよ、ワシのあるじが信用ならないというのか?」


「ッ!?……い、いえそういうわけではないんです!ただ気になっただけで……その、すみません」


「謝るのはワシに対してではないじゃろう……?――いてっ!?」


「コラッ!そうやってすぐ脅しちゃだめでしょ?」


 頭に血が上ってひまわりさんに向かって圧をかけているハクにすかさずチョップする。

 まったく、ハクは……いや、家族のみんなは普段はいい子なんだけど……俺のことになるとすぐに頭に血が上るからなぁ。愛されてるとわかるから嬉しいのだけど……流石に限度がある。

 か弱いヌッコとは言ってもダンジョンという特殊な環境で出会った子だ。一般人、なんならそこらのダンジョンの低級モンスターよりは全然強いからな。このままでは人を殺しかねない……まぁ流石にそれは心配のし過ぎか――


「その、ひまわりちゃんも悪気はないんですごめんなさい」


「ふふっ、全然気にしていないので大丈夫ですよ」


 ただ、ひまわりさんが言いたいこともわかる。 

 尊敬する師匠の前に突然その師匠の主が現れたんだ。決して気分は良いものではないだろう。それこそ俺が弱いなんてなればなおさら……。

 それに、彼女たちと話す限りどうやらこの状況は俺が作ってしまった物らしいから……知らなかったというのは言い訳にならない。皆は直接的には言わないが、ひまわりさんやハルさんは俺のせいで死にかけたといっても過言ではない。

 

 今、ハルさんは世間に『嘘つき』呼ばわりされているらしい。だからこそ俺がその配信でなるべく本気でモンスターを殺すことによって嘘ではなかったと証明すれば良い……それがここまで話した内容だ。だから俺はこれを完璧以上に成し遂げなければならない。ハルさんのことを信じて待っている視聴者さんを安心させなければならない。


「……あ……るじ……――あるじ!」


「ん?あぁ悪い、少し考え事をしてた……どうした?」


「いや……もう大丈夫じゃ。それより今後の話をしよう。まずは明日ハルの事務所に行って状況を説明しよう。そしてその後すぐ配信の準備じゃ……む、どうしたあるじ?」


「ふふっ、いや、なんでもないよ」


「ふむ、そうか」


 皆に向かってテキパキと指示を出すハクの姿を見てつい頭を撫でてしまった。これが子を見守る親の気持ちか……と思いながらもハクの凛々しい姿を見守ることにする。

 ハクはこう見えても意外と子供だ。普通のヌッコと同じでいたずらが大好きだし気まぐれだ。それこそ夜遅くに一緒に散歩に行こうと誘われて準備していたら気づいたら寝ているなんてこともある。だからこう……まだまだ幼かった子が頼りになる大人のような姿をする所を初めて見るとその成長につい感動してしまうのだ……わかる人いるだろうか?


「よし、では今日のところは解散とするかの……また明日、じゃ」


「は、はい!」



♢♢♢



 あれからハルさんとひまわりさんと別れた後、俺たちはせっかくだからということで新宿の街を散歩していた。ハクは今人化したままの気分なようで、今は俺の肩に乗るのではなく、俺の隣で一緒に歩いてる。


 今は深夜1時近く。リザさんにはハクを見つけた事、そしてせっかくだし少し散歩してから帰ることを伝えた。


 夜の風が少し冷たく、心地よい。真夜中なのに人は歩いているし車の音もする。街灯はあり周囲を見渡すことは出来るが、それでもやはり暗い。だが、この暗い色も新鮮である。いつも外に散歩しに行く時は明るいうちにするからこそこんなに暗い時間に散歩するのは新しい。

 それに都会に来ることなんて滅多にないから周りを見渡してもほとんど緑がない、反対にビルのような高い建物があたりまえのようにあるという今までにない状況……少しワクワクする。 

 

「あるじー」


「んー?」


「明日リルとリザもつれて一緒にハルの事務所にいこ?」


 ふふっ、さっきまでかっこよくリーダーシップを取っていたかっこいいハクが今は俺の服の裾をひっぱって上目遣いで聞いてくる。夜の都会の雰囲気が気に入ったのだろうか?みんなということは配信をした後家族みんなで街を散歩したいということだろう。


「ふふっ、ああそうしよう……」


 そうして俺たちは新鮮な夜の都会を堪能しながらゆっくりと家に帰るのだった。

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