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クズには制裁を 三

「クソッ、どれだけ気絶してた……?」


 完璧だった。ここまですべて俺の想定通りに動いていた。

 3年前のあの日、琥春が俺の嫁になるという誘いを断って桜花の城とかいうゴミ事務所に入ってからずっとこの計画を立てていた。

 そのために高い金を出して違法にさまざまなアイテムを買った。テレビ局の人間を金で買収し、俺の作ったデマを本当のことかのように広めさせ、民衆を騙す準備までやった。


 そうして追い込んだ後、助かる道を一つだけ提示することで琥春はその選択を選ぶしかなくなる。そして更に俺に二度と逆らうどころか反論すら出来なくなるように見せしめとして琥春の1番仲の良い奴を目の前で殺す。


 完璧だ。ここまで完璧だった。後は殺すだけだった……なのに、何者かの邪魔が入った。

 

 銀髪に絹の様な肌。細身だがそこからは想像できないような力発せられた。

 クソッ、誰かは知らんが絶対に許さねぇ……っ!せっかく苦労して隷属させたドラゴンを殺しやがってッ!挙句この俺の頭を掴んで地面に叩きつけやがった……。


 だが、俺は死んでない。ドラゴンを一撃で殺せるようなヤツがB級の俺を殺せないはずがねぇ……。だからきっとあの女の本当の実力は高くない。もしその実力が本当ならあの瞬間、地面に叩きつけられた瞬間俺はこの世からおさらばしていただろう……。だが、結果少しだけ気を失っていただけだ。


 もしかしたら俺と同じ様に裏の連中と取引してダンジョンアイテムでも使ったのかもしれん……いや、絶対にそうだ。

 だが、そんなズルじゃあ俺の騎士共には敵わねぇ。


 あぁうぜぇなせっかくあと少しで琥春を完全に俺のモノにできたとこなのによ……邪魔が入った。


 チクショウ、どれだけ俺は気絶してた?今頃俺の騎士に殺されたか?出来れば瀕死の状態で生かしておいてくれればいいんだが……


 そうして俺はぶつけて痛んだ頭を押さえながら起き上がる。クソッ、トロールがいないってことは殺されたか……。まぁいい、それで?肝心の銀髪の女と俺の騎士はどこだ……?


 そう思って周りを見渡すが、銀髪の女が、それどころか遠目で見ても分かりやすい俺の騎士が1人も見当たらない。


 どこにいる?まさか女1人にやられたわけじゃねぇだろうな……


 眉間にシワを寄せ、疑問に思っていると、突然後ろから声が聞こえてきた。


「なんじゃ、ようやく起きた様じゃのぅ」


————ッ!?


 瞬間、俺はまるで蛇に睨まれた蛙のように身体が動かなくなる。


 な、なんだこの魔力は……ッ!?錯覚か?今、一瞬真っ暗な海の底に飛んだ様な……終わりのない闇の中に葬り込まれた様な感覚がした……


 振り返ることが出来ない……。首どころか眼球一つ動かすことが出来ない。まるで全身に刃を向けられているかの様な、1ミリでも動いてしまったら最後、認知させることすらなく殺されてしまいそうな……そんな気さえしてくる。


「もしやワシの魔力に当てられた動けぬか?」

「ヒッ!?」


 ただそう声をかけられただけなのに、ただ後ろに立たれているだけなのに……それが恐ろしく怖い。

 全身から今までにないくらいに汗が溢れ出てくる。

 

 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い——


 いや、落ち着け……これもきっとなんらかのダンジョンアイテムによるものだ……ッ!そうでなければおかしい……だって、だってこんな異次元の魔力量を人間が有して良いわけがない……


 そうだ、落ち着け……落ち着くんだ——ハッ、あ、アイテムは?まだ残ってるはずだ……あ、あった。よし、制御玉で女の動きを止めて一度下がろう……よし、


 そうして俺は恐怖の中なんとかマジックバックを漁り、制御玉を取る。


 そして、


ボンッ————


 よしッ!今のうちに、今のうちに下がろう……状況からしておそらく俺は人質にされてたのだろう、だから騎士達は何も行動することが出来なかった。

 だからこれなら、これならばヤツを捕らえることが出来るはずッ!


「今だッ!ヤツを捕えッ——あ、れ……?」


 そうして振り返った時、初めて気づいた。

 騎士達はどこだ……?前方にいないのはわかっていた。だから後方にいて、そして俺を人質に取られたことで動くことが出来ないんだと状況的に思っていた。……だが、振り返ったが女の後ろには誰もいない。いるのは琥春の友人—俺たちが捕らえた向日葵だけだ。

 

 不思議に思って走りながら横も見る。が、やはり誰もいない。広大な荒野が広がっているだけだ……


 どういうことだ……?何をしている。あの制御玉の効力は無限じゃないんだぞ……早く、早く捕えろよ……。

 おい、何をしてるんだ早くこの女を捕えろよ……おい……おい——


「おい騎士達ッ!早く、早くこの女を殺してくぇぇ!!」


ヒュ————


 あ、れ……?なんでおれ、走ってたはずなのに……地面に……感覚が狂った。……あれ?ここは、何処だ……?


 瞬間、俺の視界から色が消え、周りがすべて真っ黒に染まった。先ほどまで微かにあった風の吹く感触が、風の音が、砂の匂いが、何もかも消えた。反対に香るのは鉄の匂い……


 そして、


ピチャン————


 何やら液体らしきものが手に触れる。水……?いや、このフィールドき水は存在しなかったはず……だとしたらコレはなんだ?


 不思議に思って目を凝らす。じっと見ていると徐々に視界が晴れて行った……。すると、そこには——


 あれ、赤い……血……?


「……騎士達?あぁそうか、もしやおぬしの言う『騎士達』とは、《《コレ》》のことかのぉ?」


ボトッ――――


 何かが落ちる音がした。その音がしたところを見るとそこには……


「ヒッ、ギ、ギャアアアアァァァァ!!」


 騎士達のバラバラになった胴体が、腕が、足が……そして、生首がそこに転がっていたのだった。

ヌッコはイタズラが大好きなのです☺️

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