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今後の予定は無しにして下さい(連載版)  作者: 徒然草


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36/36

36.幼馴染の葛藤と予想外の出来事

 前半ラリー、後半ウィラードのお話です。


 ラリーとウィラードが領地に来てから9日が経過した。ラリーの父であるアレンの配慮によって、ラリーはウィラードと顔を合わせる事なく過ごせている。


 ラリーはラリーの為に用意された家から全く出ずに過ごしていた。体調が悪化したという嘘を守る為だが、外に出てウィラードと顔を合わせる事になったら怖いからという理由もあった。


「…ねぇ、どうかしら?」


 ラリーはラリーの世話をする為に領地まで着いてきたホワイト男爵家の女性の使用人であるアンに、ラリーが作った野菜と肉のスープを盛り付けて差し出した。


「…美味しいですよ。」


 アンは満足そうに頷いた。


 ラリーはまだ男爵令嬢であるが平民となる事は決まっている。平民として過ごしていく為の準備として、家の中で出来る家事業務を身に着けている最中だった。


 アンを含め、使用人達は病弱だと嘘を吐いて皆を騙し続けてきたラリーに良い感情を持っている筈がなく、使用人としての礼儀を守りながらも何処か冷たい態度でラリーに接していた。しかしラリーが平民の生活に慣れる為に努力する姿を見続けてきたからか、次第に態度が軟化していくのをラリーは感じ取っていた。


「良かった…アン、有難う。」


 アンの感想に安堵しながらも、ラリーは男爵家で食べていた食事に比べれば質素で美味しくないとしか思えずにいた。けれど一先ず料理技術はもう身についたと言っても良いのだろう。


「ラリーお嬢様はもう、家事業務を全て習得されたと思っても宜しいと思います。」


「…え、本当に?」


 驚くラリーにアンは微笑みながら頷いた。どうやら料理だけでなく家事全般全てを認められた様だった。


「じゃあ、次は…。」


 褒められた事で嬉しくなっていたラリーだが、次第にその表情は曇っていった。次に覚えるべきは給料が貰える仕事だ。家の中でも出来る仕事もあるが、外の仕事も覚えなければならない。それはつまり、ウィラードと遭う事にもなる。


「…。」


 ウィラードの事を考えると恐怖で震えてしまう。ラリーは平民の生活は時間がかかっても折り合いをつけていけそうなのだが、ウィラードの事は不安が募っていた。


「領民は皆、ラリーお嬢様を気遣っております。お嬢様に手出しはさせませんよ。」


「…ええ。」


 アンはラリーを気遣う様に声をかけた。正確にはラリーを気遣うというよりも、ラリーの父であるアレン・ホワイト男爵の指示に従うという事だ。ラリーもホワイト男爵家の領地内でウィラードに暴力を振るわれるとは思っていない。だがウィラードから向けられるであろう冷たい視線と態度、言葉から発せられる悪意に怯えているだけだ。


「…。」


 仕方がない事だと分かりきっているのに、理解している事と感情は別だった。かつてはウィラードと共に過ごす事を望んでいたのに今は恐怖でしか無い…。こんな風に思うなんて、過去の自分が知ったらとても驚いただろうとラリーは思う。


――コンコンッ…


「ラリーお嬢様、入っても良いですか?」


 扉のノック音と共に、使用人の声が扉越しで聞こえた。


「ええ、どうしたの?」


 使用人は扉を開けて入ってきた。


「実は、ウィラードさんが……」


「っ?!」


 続いた言葉に、ラリーもアンも驚きのあまり目を見開いて固まった…。



◆◇◆



「…ん?」


 ウィラードがふと気が付くと、自分のベッドで眠っていたようだった。まだ眠気があり、視界はぼんやりとしている。


「っ、気が付きましたか!?」


 ウィラードの視界に自分を見下ろしながら安堵した様子を見せるダンがいた。


「…何故、貴方が?」


「先生を呼んでくるわ!」


「あぁ、頼む。」


 ダンの妻も居たらしく、ダンと話をすると部屋を出て行った。ダンは困惑するウィラードを見た。


「貴方はずっと意識を失っていたのです。恐らく2日ほど。」


「…っ、何だって!?」


 驚いたウィラードだが、次第に意識を失う前の記憶が蘇ってきた。夕食を誘いに来たダンを追い返し、そのまま眠りについた。その翌日、何時も通り目を覚ましたウィラードはベッドから起き上がった時に強い目眩を感じた。記憶はそこで終わっており、恐らくそのまま意識を失ったのだろう。


「っ!?」


「ウィラード?!」


 ウィラードはベッドから起き上がろうとすると、目眩を感じでふらついてしまった。ダンが慌てた様子でウィラードを支えながらベッド座らせた。


「っ、何だよコレ…。」


「妻が医者を呼びに行っております。」


「うっ…。」


 ウィラードは目眩のせいで込み上げてくる吐き気に耐える。


「…すみませんでした。」


 苦しくて俯くウィラードに、何故かダンが謝罪した。


「…?」


 言葉を発せられないウィラードは、目線でダンに何故謝るのかを問う。


「ウィラードが倒れている事に気が付いたのは数時間前なのです。昨日、私は貴方の元を訪ねませんでした。」


「…っ!」


 ウィラードは目を見開いて固まる。


「貴方の態度に苛立ちを覚えた私は、貴方が謝罪に来るまで出向かないと意地を張りました。しかし丸一日姿を見せない。そして貴方が外に出る姿を誰も見ていない事を知り、何かあったのかもしれないと今日様子を見に来ました…本当にすみませんでした。」


 ダンは深々と頭を下げる。


「倒れている貴方を発見した後、すぐに医者に連絡をしました。医者が到着した後診察をして貰いましたが原因が分かりませんでした。一先ず貴方をベッドに寝かせた後、医者は栄養剤を投与しておりました。」


「…。」


 経緯を説明されながら、ウィラードはダンへの怒りを募らせる。ダンはウィラードの監視及び世話係のような存在の筈だ。それなのに丸一日ウィラードの様子を見に来ないなんてあり得ない。そのせいでウィラードは今こんな目に遭っているのだ。気持ち悪さがなければ既に怒鳴っていたのにと、ウィラードは悔しく思った。


 この体調不良が治まったら、思う存分にダンを責めてやる。今回の件の謝罪の意味も込めて、ウィラードの仕事内容をウィラードの希望通りにする事、料理ももっと美味しい物に変える事を絶対に叶えさせてやると心に誓った。




「申し訳ありませんが、原因は全く分かりません。」


 暫くすると、医者がやって来てウィラードの診察をした。しかし、医者からは何も分からないという返答しか貰えなかった…。


 

 作者は病についての知識は殆どありません。読者様の中にあの病気ではないか? と思い当たる方もいらっしゃるかもしれませんが特に決めておりません 笑 早くリンカを登場させたいのに、ウィラードとラリーばかりで申し訳ありません。


 ここまで読んで下さり有難うございました! もし宜しければ評価して頂けると嬉しいです!

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― 新着の感想 ―
普通に栄養失調とか貧血とかかと思った。しかし、こいつほんとまったく反省しないのすごいな。それに比べるとラリーが人間的にめちゃくちゃ成長してて驚く。 どっちも最初は赤ちゃんだったのに未だ赤ちゃんのウィラ…
病気? 毒ではなく? 男爵からすると、もはや生かしておく意味なさそうだけど…
病気?なのに精神的にへこんでない、ダンが謝ったことでまた自分は悪くない状態に、どんな病気か分からないけどそんな余裕があるのかな?
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