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《SFファンタジー冒険譚》物理と知識で魔法世界を再定義!―拾った助手は2000年前の伝説の管理者(旦那様)でした。追放された天才没落令嬢は最強の娘たちと共に「世界」を再構築中―合計4⃣9⃣0⃣0⃣PV  作者: ざつ
第2章:王国編:知識争奪戦とトライアドの崩壊

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第47話:【奏鳴】オーバーライド・シンフォニー

「……ハハ、ハハハハハ!! 全ては終わった! 塵芥の如き人形一匹に、神が敗れるはずがないのだ!」


 地下核の静寂を、イグニスの狂気的な高笑いが引き裂いた。

 瓦礫に埋もれ沈黙したセフィラ。膝をつき、もはや装甲の半分を失った11人の姉妹たち。そして、肉体を手に入れたばかりで、まだ同期率が不安定なリュウガを支える私――エリアーナ。


「死ね! この世界のロジックを乱した不浄なるバグ共よ!」


 イグニスが漆黒の大剣を頭上に掲げる。巨像の全身から噴き出したどす黒いマナが剣先に収束し、空間そのものが重圧で軋み、ひび割れていく。それは教団が『神罰』と呼ぶ、マザーの全演算リソースを単一の破壊座標へ固定する「最終削除デリート・フレア」の一撃。物理法則を無理やりねじ曲げ、対象の存在定義そのものを無へ還す絶望の旋律だ。


「まずい……っ! あれを受けたら、今の私たちの出力じゃ防ぎきれないわ!」


 長女チェロが悲鳴のような声を上げる。彼女の盾はすでに砕け、防壁を展開するナノマシンも枯渇しかけていた。


「母様、下がってください! 私たちが肉の壁になってでも……!」

「無理よ、オルガ! あのエネルギー量、私たちの素体ごと分子レベルで消し飛ばされるわ!」


 シスターズたちの間に絶望的な空気が走る。イグニスの剣が放つ黒い極光は、もはや地下核の暗闇を塗り潰し、世界の強制終了を告げる秒読みを開始していた。


 だが、とどめの一撃が振り下ろされるその直前――。


「……ぐ、ぅ!? ぁ、ああああああああっ!?」


 唐突に、イグニスの巨像が激しく痙攣した!?


 漆黒の大剣に集まっていたマナが霧散し、彼の鋼鉄の表面が内側からボコボコと不自然に膨れ上がる。魔法の暴走バックラッシュではない。構成物質が内側から「不連続な定義」によって物理的に引き裂かれようとしている、凄惨な金属音が響き渡った。


「な、なんだ!? 何が起きている……! 私のマザーが、拒絶反応を……!? 制御できん、出力が逆流している!?」


 苦悶に顔を歪めるイグニスを見上げ、リュウガが冷徹な、そしてどこか皮肉めいた笑みを浮かべた。


「……油断しすぎだ、イグニス。神を自称する男が、随分と雑な食事データをしたものだな」

「な、何だと……!?」


「お前は聖騎士たちのエネルギーを吸収し、自分の力に変えたつもりだろう。だが、彼らはただのエネルギー源じゃない。2000年前から王都を守るために命を捧げた誇り高き騎士たちの『ログ』だ。……貴様のような、自分の保身のために民を捨てる男の支配を、彼らが大人しく受け入れると思ったか?」


 リュウガがAdmin権限を指先に乗せ、虚空を鋭く弾いた。

 その瞬間、イグニスの胸部から、八つの銀色の光が内側から突き抜けた。


「俺がAdmin権限を取り戻した瞬間に、彼らのログに『反旗』のフラグを立てておいたんだ。……お前の体内で、彼らは今、最高に怒っているぞ。その不浄な魔導記述スクリプトをパージするために、内側から物理共鳴を仕掛けている。」


「馬鹿な……私の、神の肉体が……崩壊していく……! ぎ、あああぁぁぁ!!」


 イグニスの体内から八人の聖騎士の魂が分離パージされ、巨像のあちこちから光の柱が噴き出す。マザーとの同期が物理的にズタズタに引き裂かれ、無敵を誇った巨像は、ただの「瓦礫の塊」へと成り下がっていく。


「今よ!! みんな!!」


 私の叫びが、ボロボロになった11人の娘たちの魂を叩き起こした。

 もはや予備素体はない。リロードもできない。だが、彼女たちの瞳には、不滅のシステムさえも凌駕する「家族の意志」が宿っていた。


「……母様。私たちの『不滅』は、システムの力ではありません」

「そうですわ、母様。……私たちの絆は、貴女が与えてくれたこの『心』にこそあるのです」


 チェロが、オルガが、三馬鹿が、そして全ての姉妹が、リュウガを囲むように円陣を組む。

 彼女たちの折れた剣、尽きかけた魔力、そして何よりイグニスへの怒りと家族への愛が、虹色のマナとなって一つに溶け合っていく。


「11人の娘たち! 全ての想いを、リュックに繋ぎなさい! 私の技術と、あんたたちの愛で、この偽物の神様を上書き(オーバーライド)してやるわよ!!」


 私は、ひび割れた自作のタクトを力一杯振り下ろした。

 魔法、物理、そして計測不能な感情の奔流。


 11人のシスターズと、管理者アスカとして目覚めたリュウガ、そして稀代の技術者エリー。13人の心が完全にシンクロし、地下核を埋め尽くすほどの黄金の旋律――『オーバーライド・シンフォニー』が炸裂した。


「グ、ア、アアアァァァァァ!! なぜだ……! なぜ、ただの人間と、人形風情の想いに……私の……私の神理がぁぁぁ!!」


 イグニスの叫びは、圧倒的な黄金の光の中に飲み込まれた。


 事象を定義し直す圧倒的な演算圧力が、イグニスという名のバグを分子レベルで解体し、醜い執念ごと、地下核の彼方へとデリート(消去)していった。









 光が収まったあと。


 そこには、静寂に包まれた地下核と、ボロボロになりながらもお互いを支え合う家族の姿があった。


「……終わったのね。本当に」


 私は、崩れ落ちるようにリュウガの胸に顔を埋めた。

 リュウガは、実体を取り戻した温かい手で、私の頭を優しく撫でる。


「ああ。……バグだらけの、でも最高の明日の始まりだ」


 傍らでは、ファーファが機能停止したセフィラの横で「( ;∀;)お疲れ様だお……よく頑張ったお……。てぇてぇが限界突破したお……」と泣きじゃくっている。


 この地下に、本物の朝日が差し込むことはない。

 

 けれど、彼らが灯した愛の光は、どんな朝日よりも眩しく、未来を照らしていた。


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