第三頁
「ここか」
音楽準備室にやって来た黒猫少女と物語食いの黒猫人形、黒猫少女の顔が若干緊張している。
「入るか」
ガラガラと扉を開けると人間が一人倒れていてその横には着流し姿の狐の面を斜め掛けした狐耳と尻尾をはやした青年が立っていた。
「・・・・人?」
『おや?珍しいじゃねーか、人間か?』
そう笑いかける青年に鏡の気配を感じる。
「! 鏡の裏側」
『へぇ・・・知ってんのか?』
「・・・・一応」
『警戒すんなって、俺は別に人間とって喰おうだなんて考えてねーから』
ケラケラと笑う青年こと鏡の裏側の主に警戒を解く黒猫少女
「何でこんな所にいるんだ?鏡の裏側の主なんだろ」
『あー、これを戻しにな』
「人間を戻す?」
『俺の怪談知ってんだろ』
「まあ」
「大鏡の裏」とは深夜にこの準備室で演奏をしていると自分そっくりの姿をした人物が鏡の中で同じように演奏をしだすそうだ。それはそれはとても美しい演奏でその演奏を超えることができればその者は成功するらしい、音楽クラスの生徒たちの間では一種の腕試しの場として知られている。ただし、あまりにも演奏が下手だと鏡の世界に引きずり込まれみっちり扱かれるらしい。
『さらに言うのなら、裏に連れていかれた奴らは記憶を無くして生きていくんだ』
「性質悪っ」
『なんとでも言うがいいさ、俺はそういう存在なんだよ』
これが「大鏡の裏」の番人、鑑との出会いだった。
▽
『ふぅん、ここまで俺たちのこと纏めた奴がいるんだな』
井上の渡したノートを面白そうに眺める。
その発言に驚いたのは井上だった。
「え?知らないのか?」
『しらねーしらねー、他の奴なら知ってるのかもしれないけど俺は知らねーよ』
井上としては学校の怪談本体よりこの本をまとめた文芸部員の方が気になって仕方がないのだ。
「そうか・・・・」
『残念そうにしてるな、そういやお前、名前は?』
「・・・・物書きの黒猫」
『! お、いい性格してるな』
井上の上手いかわし方を見て鑑は笑った。うかつに答えようものなら引きずり込む予定だったらしい、やはり末恐ろしい奴だ。
「文芸少女」と「影無最高」はほぼ関係ありませんのであしからず。