↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
泥まみれの英雄たち  作者: 時雨
第一部 神童と喪失/第二章 家の序列と白百合の庭
PR
19/45

第19話 婚約の裏側

 エレノアが帰ってから数日後、父さまは僕を執務室へ呼んだ。

 机には、ブランドン家の紋章が入った手紙があった。


「エレノア嬢とは話せたか」

「うん。花が好きなんだって」


 父さまは少し驚いた顔をした。


「花の話か」

「魔術の話もちょっとしたよ」

「そうか」


 父さまは手紙を指先で押さえた。


「彼女の家とは、これからもっと親しく付き合うことになるかもしれん」

「友だちになれるってこと?」

「……それに近いが、家と家の約束だ」


 僕には意味が分からなかった。

 父さまは椅子から立ち、窓の外に広がる畑を見た。


「ランカスター家は豊かではない。冬に物資が不足することもある。ブランドン家には、南の街道を使う権利と取引先がある」

「じゃあ、冬に食べ物を運んでもらえるの?」

「話がまとまればな」


 僕は嬉しくなった。雪で閉ざされた北の村のことを思い出したからだ。


「僕も何かするの?」

「大きくなったら分かる」


 父さまはそう言い、話を終わらせた。

 廊下で母さまに尋ねると、少し困ったように笑った。


「エレノアさんと将来、家族になるお話が出ているのよ」

「家族?」

「まだ決まったわけではないけれど」


 僕はびっくりした。

 エレノアとは庭で少し話しただけだ。百合のことと、兄さんのこと。なのに家族になるかもしれないなんて。


「彼女は知ってるの?」


 母さまは返事を急がなかった。


「きっとお家で説明されているでしょう。でも、あの子もまだ小さいから」


 その晩、兄さんに聞いてみた。


「エレノアと家族になるかもしれないんだって」


 兄さんは水を飲む手を止めた。


「……そうか」

「兄さん、知ってた?」

「そういう話が出るかもな、とは」

「なんで教えてくれなかったの」

「俺が話すことじゃないだろ」


 兄さんは笑ったが、少しだけ寂しそうに見えた。


「僕、エレノアのこと、まだよく知らない」

「じゃあ、これから知ればいい」

「家のために?」


 兄さんは僕の頭を軽く叩いた。


「お前が、話したいと思うなら」


 その答えが、父さまのものよりずっと分かりやすかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。