不穏
地上に出ると電車が走る際の音は少しだけ小さくなる。
常に塞がれた地下は湿気が溜まり、線路が錆びやすいためだ。
カタンカタンと音を立てて走る電車。
遅れてやってくる違和感。
なぜチェインの人間がわざわざ線路内に入ってきた?
なぜ電車の通ろうとする時に限って?
わからないが、異常だ。
見かけたことくらいは、帰ったら話すべきかもしれない。
『セクター 0−1 セクター 0−1 お降りのお客様は、お忘れ物のないよう ご注意ください』
足取りが重たい。
電車を降りて一歩一歩踏みしめる地面は、当然足を掴んでくることもないはずだが。
ジジジ...
「ノクス、俺だ。」
「レイン?どうした、問題が発生したか?」
「問題...と言うわけでもないが、一つ。”チェイン”はわかるな?」
「ああ、モノリスが所有する戦力の中でも、集団ではなく個人の始末に特化した集団だろう? もし、そいつから逃げろと言うなら遅いかもしれない。さっき目があった。」
「お前が下水管を破壊したことはまだバレていないはずだが...用心してくれ。最近アンモノリスは動きすぎたらしい、モノリスが少し警戒体制に入っている。」
「了解した。しかしなぜ保安局員ではなくチェインが動いているのか、引っかからないか?」
「保安局員も出てはいるんだが、チェインほど危険性は高くない。チェインも暇なんだろう。今はそう考えておくことしかできないだけだが。」
「.......そうだな。そろそろそちらにつく。話の続きはその後としよう。」
「ああ、すまなかったな、いきなり連絡して。それでは、また。」
カツカツと靴底のプラスチックと金属の地面がぶつかる音が鳴る。
目の前に広がるビル群が反射する光で目が焼けそうだ。いまだに地上には慣れない。
本部に戻るまでの道のりにあるカフェが目に留まる。
地下住民差別で、地下住民お断りのカフェも今は多い。第一、断られずとも地下住民は地上住民と比べてかなりの貧困率なので、カフェに寄ってもコーヒーの一杯すら飲めないが。
アンモノリス本部に到着し、少し傷の目立つ木のドアを開ける
「だからそれじゃあダメだって言ってるだろうが!!」
「落ち着いてくれヴェン、この会話は2回目だ、それは俺もわかってる。」
……帰ってきて早々揉め事か。運がないとしか言いようがない。
「! すまない、君は新人だったな、私はブルークリック。リックと呼んでくれて構わない。本部の移転先について揉めていてね。余裕があればあとで君も話に参加してくれないか?」
「構いませんが...そもそも戦闘になるかもしれないと言うのは確かなんですか?」
「ハンクがあんなメッセージ残してンだ、信じらんねーのかよ?」
「ヴェン、新入りには優しくといつも言っているだろう? それはそうとして、ハンクが残したメッセージもおそらく事実だ。信憑性はある。」
「そうですか...移転先ですが、目処は立っているんですか?」
「候補はあるが、満場一致とはいかねェ。折衷案の一つでも出せればいいが、条件がちょっとな。」
「わかりました、もう少し人が集まったころに僕も話し合いには参加します。あとで戻ってきますので。それでは。」
考えなければいけないことが多すぎる。頭がどうにかなる前にあの場を離れられてよかった。まずはレインと話をしなければ。
「レイン。」
「! おかえり、ノクス。無事で何よりだ。 まあ、そこに座ってくれ、ゆっくり話そう。
大事な”任務”の話だ。」
無職転生に人生変えられたんよな。




