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世界を背負うのをやめた、僕たちの長い長い二度寝の始まり


 隠れ家の廊下を、四つの巨大な「ミノムシ(自走式・着るこたつ)」が、一列になってスィーッ……と、無音で滑走していた。


 先頭のエルンストを筆頭に、メルティ、アイリス、そして最後尾には漆黒の毛布を纏った魔王ゼノン。かつて世界を揺るがした四つの強大な魂が、今は連結魔法で数珠つなぎになり、一つの生き物のように蠢いている。


「……あー。……最高だ。……重力も、義務も、全部この毛布の外に置いてきた……」

 エルンストの声は、もはやとろけるような恍惚感に満ちていた。

 だが、そのミノムシ(着るこたつ)の内側は、外からは想像もつかないほどに「密」だった。


「……エルンスト様。……そんなに耳元で吐息を漏らさないでください。……私の魔力回路が、貴方の体温に当てられてショートしてしまいそうです……」

 メルティが、エルンストの首筋に深く顔を埋め、吸い付くように熱を貪る。


 かつての清廉な聖女の瞳は、今はただ一人の男を独占する喜びに潤んでいた。その薄い衣の先で、二人の肌は、魔法の熱と自身の体温で境界を失うほどに密着している。

「……メルティ、動かないで。……アイリスまで、反対側からそんなに強く抱きつきいたら、僕の理性が……」


「……堪えてください、エルンスト殿。……貴方が、私の『騎士としての誇り』を先に壊したのですから。……今はただ、この狭い布の中で、私たちが一つに溶けるまで……離しません……」


 アイリスもまた、鍛え抜かれた肉体をエルンストに預け、熱い吐息を彼の肩に吹きかけていた。

 最後尾の魔王には、この「ミノムシの内側」で起きている濃厚な情愛は、一欠片も届かない。


 彼にとっては「聖なる静止」に見えるこの光景も、その実は、閉ざされた暗がりの中で、三人が互いの存在に溺れ、貪り合う、最高に贅沢で、そして「けしからん」密室劇だった。


「……ククク。……エルンスト、貴様の『概念としての仕事』とは、要するにこういうことか。……世界中を平和にして、その隙に自分だけ、美女たちとコタツで骨抜きになる……。……これほどの悪逆非道、魔王の私でも思いつかんわ!」


「……うるさいよ、魔王……。……君だって、後ろでニヤニヤしてないで、ちゃんと浮遊魔法で押してよ……。……僕たちは今、世界で一番『忙しい』んだから……」


 隠れ家の外では、国民たちが空に昇る「虹色の波動(溢れ出した情熱の魔力)」を見て、涙を流しながら祈りを捧げていた。

「おお……、エルンスト様が、我々のために究極の瞑想に入られた……!」

「なんと慈愛に満ちた輝きだ……。……きっと今、彼は天界の神々と、世界の平和を語り合っているに違いない!」


 そんな世間の誤解をよそに、ミノムシの中では、エルンストが二人の女に挟まれ、幸せな葛藤に身を焼かれていた。

「……あー、もう……。……いいよ。……明日のことなんて、誰も考えなくていい。……僕が起きない限り、世界は平和なんだから……。……だから今は、君たちの熱だけを感じさせて……」


 伝説の魔導師は、世界を救った報酬として、「全人類に崇められながら、誰にも邪魔されずに、愛する者たちと密室で溶け合う」という、究極の不労所得パラダイスを手に入れた。


 彼らが次に目を覚ますのが、数百年後か、あるいは永遠に来ない明日なのか。

 それを知る者は、この隠れ家には一人もいなかった。

  

   完。おやすみなさい、良い夢を。


 ぶっちゃけお詫び

最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました!

……ここで一つ、重大な白状をします。

「R15タグを付けていたこと、最終回まで完全に忘れていました」

慌てて最後に「毛布の中の熱気」を盛ってみましたが、時すでに遅し。

本作のR15とは、「大人がミノムシ姿で連結して廊下を滑走する」という、子供には到底理解できないシュールさのことでした。

1人でも「なんだこれw」と楽しんでいただけたなら、私のノルマは達成です。

星評価、そしてたくさんのアクセス、本当にありがとうございました!

皆様も、良い二度寝を。

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