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番外編~ある夫人の回想・前編

前書き知らない間に、いつの間にかユニークアクセスが10,000越えてました。

偏に、ご覧いただいている皆々様のおかげでございます。

書いている本人が一番(いや、誰も何も言わないからさ)「タイトル詐欺だよね」とか「キーワード合ってないよね?」とか思っていますが、まあそんな事もある感じで。

だからと言うわけでは全く無く、別件の「そう言えば、悪役令嬢は書いたけど婚約破棄はまだ書いてないよね?」と思い立った話を触りだけ書こうかなあと思ってネタバレ状態。しかも完全の婚約破棄シーン書いてないと言うテイタラク。

ついでに、「この」とか「あの」とか「別の」とかがやたら出て来ると言う固有名詞排除キャンペーン実施中……あ、「神国」は略名です。帝国とどっちにするか迷いました。

 雪深い、そこはそう言う所だった。

 山が間近にあり、見渡す限り広大な土地。

 それが、彼女の「ある家」の収める「領土」だった。

 以前、彼女の「居た家」は、ここまで大きな土地では無かった……当然だろう、たかだか「普通の伯爵家」では広大な土地など収める事は出来ない。


◇◆◇


 かつて、この国には周辺諸国と戦争をしていた。

 正確に言うのならば、始まりは何年も前に起こした周辺の戦争が拡大した余波……要するに、とばっちりだ。

 「ある国」の懇意にしている「別の国」から王族達が留学してくる程に繋がりがあったと言うのに、留学生だった王子が留学先で強制帰国。その後、どう言った経緯を経たのか一般には知られていないが彼女は知っている。

 この国とつながりのある「ある国」では、何年か十数年に一度の割合で恋愛における揉め事が起きるのだ。大体は内々で終わる事も少なくはないし、未来ある若者達の微笑ましい黒歴史として各国に盛大に知らされる事もあるので「若い頃はそんな事もあったねえ」で終わる程度の微笑ましい出来事で終わるのが通常だ。

 ただ、少し前……彼女が物心ついた頃からキナ臭い話が出ていた。

 一人の娘を巡って、上流階級と呼ばれる地位の人やそれに準じる人達が執着心を持ち始めていたと言うのだ。

 これは後から彼女も聞いた事だから、恐らくは中級以下の貴族には秘匿される様に言明されていたのだろう。その中心となった娘とやらは貴族でも無ければ上流階級と何一つ関わる事もない、単なる娘だったそうだ。

 平民であると思われる娘が、その場にあった理由は一つしかない。

 その国は学術国として名高く、その中でも本来ならば貴族と平民は分け隔てて教育される施設がある。しかし、類稀なる能力を持った者には将来を見越して国が援助金を出して上流階級と関わり合いを持たせ、最終的に国もしくは貴族あるいは研究機関で取り込むと言う機構(システム)が取られていた。

 これは、「ある国」では珍しい事ではないが他国から見れば危険性を考えて踏み切れない画期的なものだ。何故なら、その機構を導入してから「若い頃はそんな事もあったねえ」で済まされるが、貴族として年齢を考えると生死に関わる可能性が出て来る瑕疵(かし)となる事もあるのだ。場合によっては数十年前の「やんちゃな微笑ましい過去」が即死状態になる事もある。


 戦争が起きる事もある。


 その年の「ある国」は、当時そこにあった者からすれば「何から何までおかしい」とまで後に言われる程度におかしなもので、(くだん)の娘を中心として事件が横行しすぎていたと言う。

 確かに、平民であると思われる娘……当時は下級貴族であると思われていたそうだが、そんな娘が当時在籍していた自国の上位貴族や自他国の王族に囲まれて下にも置かぬ扱いをされれば他の中、下級貴族は元より上流貴族からとて反感は持つだろう。

 いかに「校内ではある程度の身分制度は黙認する」と言われていても、結局の所は「黙認」であって「身勝手な振る舞い」が許されるわけではない。しかも、娘は貴族としてろくな教育を受けて来なかった様で許されてもいないのに名前を呼び、自分から声をかけ、あまつさえ意見をすると言う。

 そんな状態に「面白い」と言って笑い、次第に執着心を持ち始めた子息達と言うのもまた、無礼な娘を同様に冷たい目で見られていた。そのまま放置した所で、いずれ卒業と言う名の成人をした(あかつき)にはそれまでと(てのひら)を返され、ろくな政治手腕を振るう事も出来なくなっただろう……残念ながら、その機会はどちらにしても無くなったが。


 子供達で集められた世界に問題が起きたと言う事が大人達の耳に入ったのは……悲しい事に、生徒を指導するべき校内の「大人」達は身分を笠に着た命令をされた為に随分と話が遅れてから知る事となった。

 校内は王国の縮図であり大陸の縮図であると言う事が大義名分とされていた事も、また理由の一つだろう。

 そんな事態になる事を止めるべく、恋愛と言う甘い毒に(けが)された子息達に対して動いたのは放置して置く事を許されぬ立場に居た御令嬢だった……中には婚約者だったり、幼馴染だったり、家同士の政治的商売的な繋がりのある、いずれも立派な家の令嬢達。

 だが、令嬢達の言葉は子息達の耳には届かなかった。


 話が大っぴらになったのは、とある伯爵家子息による侯爵家令嬢への婚約破棄の宣言だった。

 それは日頃は立場ある名家の子供達が在籍している為に閉ざされている、数少ない開かれた宴の日。

 (きら)びやかな飾り、笑顔の子供達の中で、突如として行われた断罪劇。

 まさしく、喜劇と言えるだろう。

 伯爵家子息は侯爵家令嬢が、その国の第二王女と結託して彼等の愛おしい娘に愚行(ぐこう)を仕掛けた実行犯だと言い放ち。そのまま婚約破棄を宣言した。

 ちなみに、当の侯爵家令嬢は侯爵家と言う立場にも関わらず「ぽやぽやした人」と言う言葉が最初に来る印象だと人々に言われる程の人物で、嫡子(ちゃくし)であると言うのに方々から将来を心配されまくる程に他人に対して悪意を持たないと太鼓判を押される人物である……ただし、食事さえ関わらなければ。

 定番の悪口に持ち物の破損、果ては仲間外れに至って全てが侯爵家令嬢のせいだと糾弾され、そこに待ったをかけたのはもう一人の人物、第二王女だった。

 物質的な証拠の開示、王室の威信(いしん)にかけて調査を約束し、侯爵家令嬢と伯爵家子息に連なる全ての娘の取り巻き達……ちなみに、そこには第二王女が降嫁(こうか)する事が決まっている侯爵家子息が居たのは(あわ)れむべき事ではあるが。取り巻きとは言っても、いかに侯爵家子息が望もうとも第二王女との婚姻は身分を失う覚悟が無ければ侯爵家を継ぐ事は出来ないので、噂によると「素敵な結婚」を夢見ていると言う娘との婚姻は決して望む事は出来ない。

 ちなみに、ここで言う侯爵家の子息と令嬢は別の家になる。


 ここで話が大きくなったのが、ある意味で戦争の始まりだったのだろう。

 友好国である隣国「別の国」の王子は、それまでは表立って娘の取り巻きとして動いてはいなかった。その為に他の取り巻きと異なり隔離されることも無かった(他国の王子である以上、見張りの数は増やされたかもしれない)が、子息達がいずれは己の所業が大人達によって知られ多かれ少なかれの罪状を元に罰を受けるだろう事が判っていただけ、彼の方が頭の回転が良かったと言う事なのだろう……問題は、第二王女の宣言の元で行われていた調査の最中に横やりを入れて娘を強引に拉致(らち)仕掛けたのは詰めが甘いと言う所だろう。

 現場の者達……護衛と言うより監視を命じられていた者達に「王の許可は得たので娘は連れて行く」と強引に連れ去ろうとした所。途中で事が露見(ろけん)、王族とは言え他国の者が勝手な行いをしたと言う事で問題は政治的に外交問題にまで発展した。

 ちなみに、当の娘は情報が正しければ隣国の王子には「いつでも貴方の側にありたい」と言っており。かと言って拉致の時には悪くないと言う顔で「いいえ、決してこの様な事をしてはいけないわ。私は……!」と言っていたそうだが、そこに何と言う言葉を続ける予定だったのかは今もって不明だ。大体は最後まで人の話を聞かないのが取り巻き達の特徴……と言う事で、立派に隣国の未来があった王子も取り巻き認定をされたのである。

 ただし、隣国も黙ってはいなかった。

 友好国だからこそ未来ある王族の若者を送り出したと言うのに、娼婦(しょうふ)(たぶら)かされたから問題の娘を寄越せと宣言したのである……善意(あるいは別の意味で手間が省けると言う意味では間違っていない行為かも知れないが、少なくとも娘は二度と帰らぬ存在になっただろうことは想像するまでもない)ではなく全くもってその通りだと、事情を知るすべての者達は(うなず)いた。納得した。そりゃそうだと一切の否定をしなかった。出来れば、とっとと持って行って欲しいとまで思ったが……流石にそこまでは実行させるわけにはいかない。国民である以上は保護対象なのが、王政法治国家の悲しい所である、どれだけ周辺に問題を起こしたと目されていても、限りなく黒に近い灰色である以上は「まだ」娘を引き渡すわけにはいかない、一番苦労したのは他国ではなく自国の令嬢達なのだから。と、やんわりと伝えて時間稼ぎをする事は成功した。

 しかし、この言葉に切れたのは第二王女の婚約者である侯爵家子息である。子息の家は隣国と取引のある政治的な外交を担っている家だったのが災いし、経済的な攻撃……「別の国」を相手に商品を降ろさない、降ろして欲しければ王子は返してやるから娘を諦めろと国を無視して勝手に言って来たのである。

 ちなみに、王子は何があったのか娘を諦めないと言いきってしまった。


 もはや、色々な意味で状況は混線していた。ついでに、小規模ながら戦争が勝手に始まっていた……どうやら、侯爵家子息の取り巻き仲間である宰相子息と財務大臣子息のツテを使って各地に兵士を派遣していたと言うのが後に発覚した。

 兵士達は子息とは言え貴族からの命令に逆らう事が出来なかった様だが、ここで騎士が出て来なかっただけマシだったと言うべきか……騎士爵位家子息も仲間扱いされていたが、立場的に出来ない事を盾にギリギリで騎士を守り通したと言う。

 もっとも、その行為はある意味で無駄に終わった。


◇◆◇


 この国では、戦争があった。

 正確には、巻き込まれた戦争だ。

 「ある国」と友好国であった「別の国」の戦争に巻き込まれ、「この国」にもどちらの兵士達も入り込んだ。

 当事者ではない国だからこそ、常に緊張感を強いられてきたのは「この国」の責任ではない。

 何故なら「この国」にとってはどちらの国も友好国だったのだ、だからこそ両国に手を貸さない事で治外法権を守り通した……「この国」と「ある国」が「神国」に「この国」の守護を願った事で何とか保たれた。

 「ある国」の第二王女はとても聡明(そうめい)で、こう言ったと記述では残されている。


『巻き込まれるだけの、長きに渡る友好国を戦火に収めるわけにはいかない。貴国とて(いず)れ戦争が終わった後に(とき)の声も上がらぬ後で気が付くだろう。自らの足元に荒らされ流される、自国他国と見分けの着かぬ赤く染め上げられた大地が。それが人々の命の(かて)となるまで、どれだけの時間と命が必要だと思う? 戦後の後始末を押し付ける様で、申し訳なく思っている。私の持てる力では、せいぜいがこの程度しか出来る事はない事を歯痒(はがゆ)く思う。

 なに。下の者達、我が夫となる筈だった者の愚行なれば、本来妻となる筈だった者が責任を負う事は王族の一人である事を加えても私の行うべき仕事に違いはない。

 なればこそ、私一人の身柄で巻き込まれた貴国を守り通せると言うのであれば……それは、私の掛け替えのない(ほまれ)となるだろう』


 第二王女の、自らの身柄と引き換えに「この国」を守り通したと言う話は賛否両論がある。

 結果だけを見てみれば、神の名の下にある「神国」が守護についたお蔭で「ある国」も「別の国」も各々の国でのみ戦う事を強いられた。その為、「この国」にはそれほど戦争の爪痕は起きなかった筈だが全くないわけではない。

 公爵家は、一つしか残らなかった。それまでは三つはあったが、元々の公爵家は王家から離れて家を興した三代後に侯爵家へと格下げされる。公爵家は王位継承権があるからと言うのもあるが、三代後では継承権が低い事が理由だ。もっとも、そこへ更に王家から輿入れがあれば公爵家としての地位は保たれるが利権の集中を嫌って王族の輿入れは推奨される事は少ない。

 侯爵家は、三つまで残った。元は十幾つあったが戦火に巻き込まれた家が全くないわけでは無かった事、お家騒動が重なった事、ちなみに事の元凶の一人である子息の家と通じていた家は事が露見した時にも戦争は続いていたので「一家総出で前線の守護にあたる事」と王から命令を受けて果てた。理由の一つとしては、体育程度の運動経験しかない者が紛争地域に放り出されるものである。

 伯爵家以下の家も、僅かではあるが消え去った所があった。特に、娘の取り巻きとして動き戦争の引き金となった家と通じていた家に関しては一族郎党筆舌にし(がた)い事があったのだろう……少なくとも、被害らしい被害と言えば数十人程度で済んだと言えるだろう。巻き込まれた使用人はとばっちりも良いところだが、最後まで雇い主に従えたのだから文句はあっても聞く必要はない。逃げ出す事も訴える事も無かったのだから国家反逆罪としてまとめて色々と押し付ければ面倒は一度で済む。

 何しろ、巻き込まれた国なのに戦争被害があると言うことは自ら戦争に介入したと言うことなのだから……王家は関わる事を禁じていたと言うのに。

 ここまで「守護された国」である筈なのに被害が横行したのには「疑惑」が蔓延(まんえん)したと言うのもある。直接狙う事が出来ないのであれば、特に「別の国」にしてみれば搦手(からめて)で自分達の国に自分から仲間にして欲しいと言わせれば一気にカタが着くと思われた情報戦だった。

 「神国」は物理的な戦争に関しては兵士を派遣してくれたが、情報戦にまでは手が回らなかった事と。そこまで手を出せば内政干渉になってしまうと言うのもあったから、と言うのが表立った理由ではあるが実際には不明と言えるだろう。加えて、「この国」の中級以下の貴族を含めた平民には「ある国」の第二王女がその身と引き換えに「この国」の安全を保証させたあたりの話は知らされなかったので、ある意味においては当然と言うものだろう。

続きます。

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