3 夏休みのご褒美
翌日のことである。夏休みはもう少しで終わりを告げることになる。あと二日。そういえば、始業式は高校と中学一緒の日だ。これはただの偶然と言うことなのだが、何かで決めたに違いない。それでも、何とも言えないのだが……。
そんな時だった。妹の友達が家に訪ねてきた。妹は今までの学校へ行っているので遠い。それなのに、友達はここまで来るとはすごいもんだ。
俺は休憩をしようと、一階まで降りてきたら、その場にはとてもかわいらしい友達が来ていた。水奈の友達だろうと一発でわかった。制服が中学のだからだ。
この子の名前は友崎舞夏という。髪はポニーテールであり、体はすんなりしていて、胸はまあまあでかい。
――中三にもなればこんなもんになるか。水奈も同じくらいあるしな。
本物を見たことがない俺はあまり言えないことだ。とりあえず、挨拶をしてリビングのドアを開けた。
リビングのソファーでもくつろいでいると、水奈が入ってきて一言いう。
「何寝っころがっているのよ」
「いいじゃねぇか。俺の自由だろ」
「まあ、そうね。和孝の部屋は何もないものね」
最近ひどい言い方を覚えたのか、本性なのか知らないが、俺に冷たい。しょうがないことだろうと思っているが。
俺はリビングで録画番組を見ながら、あくびをしていた。
「なんか眠いな」
そのまま寝そうになったとき、思い出した。
――そういえば、出かけるとか言っていたような。今日の二時だったような気がするな。
妹は詳しいことを言っていなかったが、もうそろそろ支度した方がいいだろうと思い、時計を見てみると正午を回っていた。でも、眠気にはかけてはしなかった。
少し寝てしまった後のことである。起きたばかりで寝ぼけていた俺は時計を見てみると、一時四十分だった。
――やべぇ――。すぐに支度しなくちゃいけないな。
俺は急いで階段を上り、部屋に着いた。でも、その時には息が上がっていた。運動をしていない証拠が出てしまった。
何も支度をしていなかったせいで、支度に時間がかかってしまった。階段を降りていくと、そこには水奈が靴に履き替えて玄関で待っていた。俺はとっさに謝罪をする。
「ごめん。またせちゃったな。兄のくせにな」
「いいよ、全然。まだ時間になってないし、それに電車で行くから時間が調べてあるよ。確か、二時十分があるから早く行こう」
「了解。じゃあ、自転車ですっ飛ばしていく?」
「自転車じゃあいかない。歩きで行くの」
「でも、時間かかるぞ」
「いいの。そんなにはいそいでないから」
「わかった。行こうか」
「うん」
水奈は、しっかりものであった。俺よりもすることが早いし、気が利くというか。それに代わって、俺はダメな兄だと自覚をした。ただのガリ勉野郎であることも分かりつつ、ほかのことについてはすべてダメな男だと思い、彼女が絶対にできないような人であることもこのとき水奈のおかげでわかった。
考え事をしていると、家から最寄駅の荒川都市駅についていた。この駅には東武都市線と東備伊勢崎線がとっている。東武伊勢崎線は東武スカイツリーラインに名称を変えての運行だが、東武都市線は伊勢崎線とは別にできた秋葉原駅が終点の電車だ。そのうち、秋葉原が今までよりも人が増えたときに行きやすいように作られたということを聞いたことがある。それに、秋葉原だけではなく、そのほかにもつなげる方針だが、いつになるかはわからないらしい。
俺はすぐさま乗ろうと切符を買っている間、水奈はまったく違うことをしていた。ただ、待っているだけだ。俺はふっと思った。
――あいつ買わないでどうする気なのだろう。何かあるのかな。定期とか。
水奈は改札の前に行き、いきなり財布を取り出した。その財布を改札機いかざすと、音が鳴る。俺には何をしたのかはわからないが、何かがあるのだろう。気になったので、ホームに入った時に問いかけてみた。
「ねぇ、さっき財布かざしていたけど、何をしていたんだ?」
「お兄ちゃん知らないの? 私がかざしていたのはね、chuikaだよ。それはねJR東日本がつくったらしくて、東武鉄道にも使えるようにしたんだって」
「そうだったのか、で、それってどうやって使うの?」
妹は俺の目を見て、クスクス笑い始めた。何かおかしいことでもいったのだろうか。
「もしかして、お兄ちゃんは機械オンチなの。 それはね電子マネーって言ってね、お金を入れておけるの。だからいちいち切符を買わなくても乗れるんだよ」
「そうだったのか。本当に俺は勉強しかできない男だから、全然ダメ。昔はよく知っていたんだけど、最近はどうも苦手でね」
「ああ、もうそろそろ電車がきちゃうからホームに行くよ」
「了解で~す」
俺と水奈は階段を一段とばしで駆け下りる。この駅は地下にある。
東武都市線は地下鉄として開通したため、ホームが地下にある。だが、秋葉原駅は改築をして地上駅になった。唯一この荒川都市駅が地下にホームがあるという状況である。
そんなことを思っているうちに電車が来ていた。もうそろそろ出発の合図がなっている。俺と水奈は駆け込み乗車をしてみた。すると、その車両には大勢に人であった。 俺と水奈はなんとか乗れてホッとしていたその時だった。何かを忘れているような予感がした。俺はバックの中や持ち物を確認した時に、スマホだけがなかった。
――忘れたものが、スマホとか俺ってこういう場合はバカ丸出しだよ。とにかく、妹に何かあったら電話貸してと言わなければ……。
俺は心の中で決心した。
「なあ、水奈。俺さ、スマホ忘れちゃったから電話したいときに貸してくれないかな?」
「いいよって、可愛い妹の携帯に何かするのでしょう。もしかして連絡先をむしとるとか……」
「誰がするか――――。そんな兄がいたらみてみたいもんだわァ――――」
「その兄は、ここにいるよ。自覚してないの?」
「俺を変態扱いにするんじゃないよ。まったく。」
なんだか、周りから変な視線が飛び込んでくる。立っている状態なのに、周りの視線が痛い。
「ほら、こんな可愛い妹に手を出さない方が珍しいみたいに見られているよ」
「だれがだぁ――――。お前が誤解するようなことをいうからだろ」
「何の話かな」
「とぼけるな」
水奈が余計なことをしたので、ちょっとした声で誤解をといていた。
「違いますから、ただの言い合いです。お騒がせして、申し訳ございませんでした」
恥ずかしい思いをする俺であった。何かと大変だ。
そんなことをしているうちに秋葉原駅に到着した。広いホームから改札をくくり、アニメスト秋葉原がある北口に行くのであった。
――それにしても、何で俺を困らせるんだろう。
ため息が出るだけであった。大変な妹ができてしまったのかもしれない。
少し歩いていると、アニメストの前まで来ていた。コスプレを着ている人がいたりと、俺とは全くの別世界にいるようで仕方がない。でも、その時水奈が言った言葉と言うのが、ちょっとしたことである。
「早く、中で着替えるんだよ。そして、面白いことをしよう」




