2 身近な家族
あれから時間が過ぎていた。勉強していた俺は今まで静かだったので、相当集中していたようだ。あまり時間が過ぎた感じがしなかったのだ。そんなときであった。二階から大きな物音がした。
――何騒いでいるんだ。何かやっているのか?
気になった俺は勉強道具を整え、リビングを出て目の前にある階段をゆっくりと登っていくのである。階段から何歩か歩いたところにある水奈の部屋の目の前に来たわけだ。すると、仲から声が聞こえた。
「あ――――、棚が運べない」
水奈は困り晴れた声で、考えているようだ。その時の出来事であった。中から変なことが聞こえた。完全に驚いたときに出す声だ。
「お兄ちゃん、助けて――」
「どうした、水奈。何かあったのか?」
「それが……動けなくなっちゃったんだよ」
「わかった。今助けてあげるからな」
どうやら、水奈は棚の間に挟まれたらしく、動けなくなっていた。俺は、挟まった体を、抜くために、力ずくで動かす。
「いまから助けてやるからな」
「変なところを触らないでね」
「俺は女を襲う変態か」
「だってか弱い女の子を助けるのに何をするかわからないんだもの」
「お前が助けてとか言ったんだろうが――」
「どうしてもいいから助けて」
「どうでもいいってどういうことだ――」
「いいから助けて」
「わかった」
俺は棚を水奈に言われた場所に移す。そのうちしているときには、もう水奈は俺の後ろにいた。
――てか、もうタメ口ですか。今までの敬語の姿はどこにいったのやら。今まで、猫を被っていたみたいだな。
あることに気付いたのは、棚を運んでいるときであった。
――それより、こんなにでかい荷物何であるんだ。ここにある棚などを使えばいいのに……。
あまりのも持ってきているものが多く、疑問に思うことばかりだ。確かに、ベットなどは必要だが、狭い場所には合わないだろう。
俺は水奈が持っている家具の中で気になるものがあった。それは高級そうな勉強机だ。いかにも十万は軽く超えているだろう。これはまさに金持ちの家で住んでいたことを証明しているかのようだ。
水奈は狭いスキマから抜けることができ、ホッとしている。俺は服に目を向けると、恰好がワンピースだが、さっきの影響なのか知らないが、少し黒ずんでいる。その時であった。あるものがワンピースの中から見えた。中学生ながらふんわりとしていそうな胸が下着によって整っている。あまりにも刺激的な一面であった。
水奈は俺が見ているところに気が付いたのか、無駄なことでも手で隠している。
「私の下着見たでしょ。完全に胸に目がいってた」
「見てない。ただ、ワンピースが汚れちゃったなって」
「本当に? でも信用できない。顔が赤いよ。見てはいけないようなものを見たような顔をしているよ」
「何でそんな顔をしていると思うんだ。普通だろ。今の状況で」
「嘘言わないでよ。はっきりといってよ。見たのか、見てないのか」
「それは、見えたよ。整ったブラとかがな」
「それって完全に変態の目で見てますよね? ふざけるものいいかげんにしていただけるかしらね」
「どうもすいませんでした。あまりにも魅力的な胸に目が留まりました」
「なにそれ。本当に言っているの。わゎゎゎ私の胸がねぇ……」
何が悪かったのか、熱を出したように赤くなり、湯気が出ていた。そんなことよりも、下着なんて見てなかったので、色はわからない。
それにしても、話し方が最初とは違うので、本音と言うか正体を明かしたなって一人思っている。
それにしてもいっていることと全然違う形だ。顔は赤いくせに平気だと言い切るところはなんだか可愛いと思う。
俺は黙り込んでしまった妹に話しかける。
「わかった。お前が着替えている時などはノックしてから入る方にするよ。俺は見ないようにするから、そんなに顔を赤くするな」
「別に赤くないもん。はずかしくなんかないんだから」
「そうですか。はいはい、この話は終わりにしようか」
どうしても妹が無理をしているふうに見えるので、ここぐらい兄らしくするべきだという声が聞こえたからこのようにまとめたが、このまま続いていたらどこまで続くかなんてわからない。
俺はとりあえず仕事を済ませたので、戻ろうとした時に妹は悲しそうな顔をする。
「どうしたんだ。俺はしたに勉強道具があるから取りにいくぞ」
「ねぇ、お兄ちゃん。私に勉強を教えてね」
「わかったよ。お前が高校に受かるようにいつでも教えてやるからな」
「ありがとう」
水奈の強烈なほほえみは俺の心の中まで入ってきた。妹が出来るだけで全然違うことはわかるだろう。
それよりも俺には色々な試練が来ることを俺はまだわからない。それを知るのはもう少し先の話。
水奈の部屋を出て、リビングへと勉強道具を取りに行くために、階段を降りると、そこには母の姿があった。
「お母さん。お帰り」
「ただいま。そういえば水奈ちゃんがきているでしょ?」
「来てる。二階にいるよ」
「そう。あんたに妹がいるなんて予想もつかなかっただろう。だって内緒にしておいたからね」
「うん、全然予想はできなかった。だって、結構美少女なんだもの。俺は恋愛をしないと決めているけどあんなに綺麗じゃ、シスコンになっちゃうかも」
「可愛いと思わないで、妹として見てればいいじゃないの?」
「そうだな。じゃあ、俺は二階に行くから」
「わかったわよ」
ただのシスコンにならないように努力をすることが必要みたいだ。自分でシスコンとかいうのは初めてだ。あまりにも、恥ずかしいと思った瞬間であった。
俺は二階に向かうべく、さっき降りてきた階段を上り、水奈の隣の自分の部屋のドアを開ける。いきなり、水奈の声が自分の部屋まで聞こえていた。電話をしているようだ。
『あのね、今日ね、お兄ちゃんにやっとあえたんだよ。今まで会いたかった人に会えた。本当に良かったよ』
俺の部屋は静かなので、かすかに妹が電話で話しているのが聞こえるが、何の話をしているのかまでは特定はできなかった。
勉強へと取り掛かろうとすると、ドアがノックされた。俺は妹だと思ったが、それは服を持ってきた母であった。
母は俺が水奈が来たと思っているのだろうとアイコンタクトしてきた。やはり家族と言うのは意外とばれてしまうものだと思い知らされる。
――俺は母には勝てねぇ。母には隠し事してもすぐにバレそうだから隠すのはやめたほうがいいな。
自分の心の中に念を押す。あまりにも危険なことが起こりそうだと予測できたからだ。
俺の部屋に来て、母はタンスの中に服を入れてから俺の目の前で話す。
「頑張りなさいよ」
刺激的な言葉であった。俺はその時、母の言葉を理解することができなかった。勉強を頑張れなのか、妹の世話を頑張れなのかどちらのことだから全然予想がつかなかった。でも、時間がたつにつれて、両方のことを頑張れという意味だと悟った。
俺は参考書を開き、勉強を再開した。無駄なことを考えてしまうが、気にしないように集中する。
今は夏休みで八月の下旬だ。とても暑いが頭をフル回転させて勉強に取り組む。そして、五時になり、内容がちょうどよかったので、区切りとして勉強を終わりにした。
勉強が終わり、くつろいでいるのではないかと思ったのか、誰かがドアをノックしている。
俺は『どうせ、水奈だろう』と思い、入室の許可を出した。
「あのさ、明日って土曜日だよね? 私と遊びに行かない?」
「なぜ? 別に友達と行けはいいじゃないか。俺となんか行く理由なんかないだろ?」
「でも~、お兄ちゃんとで・か・け・た・い・の」
一瞬、目の前が輝いていたように感じた。俺の錯覚なのか、水奈がとてもかわいい思うとに見えてしまった。これを本人の前で言えば、何かが起こるだろう。
「何でだよ。俺は用などないのだけど」
「いいじゃないの。私はただ、久しぶりのお兄ちゃんと一緒に遊びたいだけなの」
「マジで、それよりも、俺は昔にあった記憶解かないのだけど、まあ、孤独だったというだけなのだけどな」
なぜか、黙ってしまった。何かまずいことでも言ったのでしょうか? 黙ってしまったので、どうもできない。
――ある意味、俺って情けないな。女との会話が成り立たないとか。自分が哀れに感じてしまったのだ。
それよりも聞きたいことがあった。
「そういえば、お前って好きな人がいるの?」
「オォ――――――」
妹はいきなり噴出した。何かすごいことも出行ったのか。
「どうなんだよ。おい」
「そ……それは、いるけど――」
「誰なんだ?」
「誰って、決まってるじゃない。お……」
「それだけじゃわからないぞ」
俺は問い詰めすぎたのか、水奈に逆切れされた。
「何で、そんなことを聞くのよ。いいじゃない」
「そうですか。それはごめんあそばせ」
「完全に棒読みになってるんですけど」
「そんなはずは。本当だ」
くだらない流れはさておいて、明日の予定について話した方がいいらしい。
「それでは、どこに行きたいのでしょうか?」
「それはねぇ。秋葉原」
「そうですか、じゃあ、ちゃんとお金を持っていかないといけないな。使いそうだし」
「そんなには使いません」
またもや少し、不機嫌にさせてしまったようだ。女の扱いは難しい。そう確信した瞬間であった。
「それじゃあ、明日の午前中に行くことにしよう」
「だね。私も賛成」
「ちゃんと支度して。電車で行くからな」
「了解です」
水奈は喜んで、俺の部屋を出ていき、自分の部屋に戻った。明日、どんなことがあるのか。俺はまだ知らない。でも、寒気がした。何もないことを願いつつ、勉強道具を片付けてからくつろぐのであった。




