1 妹の存在
松井水奈は俺に対してとても親切であった。妹という存在ができてうれしいとは思えない。飯島和孝である俺は思った。
水奈は髪はロングで、パッチリとした目にすんなりとした体、美少女だ。何を着ても似合いそうだ。
水奈は俺の顔を見て、お辞儀をしながら挨拶をした。
「こんにちは、お兄ちゃん。私は水奈です。今まであったことがなかったので、驚きです。優しいお兄ちゃんの所で住めるなんて私ラッキーなのです」
「そうか。よろしくな。それにしちゃ、可愛いな」
「そんな、全然可愛くありませんよ」
水奈の顔は赤面していた。俺は少し無神経だったのかもしれないが、言葉として出てしまう。誰だってそうだろう。
――いけない。カワイイなんて思っちゃダメだ。妹に恋をして、今後のプランが台無しだ。
俺はこんなことを思いながら、妹と話すことになった。
「ねぇ、親戚の家ではどんな生活をしていたの?」
「それはですねぇ。一人で過ごしていました。たいへん辛かったです。私はお兄ちゃんが欲しかったのですから。そんなことで、ここまで過ごしてきました。その時に、私はお兄ちゃんが欲しいと言ったのです。そうしたら私から見てお母さんは、『あなたにはお兄ちゃんはいるのよ』と言うので、あってみたいと思い、ここまできました」
水奈はお兄ちゃんができて嬉しい顔をしている。それだけほしかったのだろうと察しがつく。
「そうか、大変だったね。俺みたいな性格はどうかな? 合わなかったりするかな」
水奈は頭をかしげながらいった。
「う~ん、そうですね。いいと思います。私はどんなお兄ちゃんでもいいのですよ。たった一人のお兄ちゃんですから」
俺はなんていい子だなんて思ってしまった。あまりにも考え方が大人のような感じがした。
「そうか。俺のことをそんなことに思ってくれるなんてな。それにしても、同じ学校によかったのにな」
「そうですね。私も同じ年くらいがよかったです」
「でも、妹じゃなくなるじゃないか? 完全に問題だと思うけど」
問題なことを言った水奈は恥ずかしそうな顔をしていた。俺も胸キュンしてしまいそうだ。
「ですよね。そんなことがあったらいいなと思っただけです」
「そうなんだ。冗談と言うわけね」
「はい!」
笑顔が素敵な水奈だが、今後はどのように変わるのかわからない。今の状況では……。
リビングで勉強していた。その場所では、ダイニングテーブルとソファーがあり、ほかにはでかい五十型の液晶テレビがある。俺らが語っているのは、ダイニングテーブルである。最初は玄関からやってきたのだが、立ちながら話すのも大変だから座ったまでだ。
それにしても惚れそうだ。今の状況では、家の中が試練になっていくかもしれない。決めたことが守れないかもしれない。今までとの環境とは違い、妹ができるということはある意味、大変になるだろう。俺の生活が一変することになる。今までの一人っ子での静かな生活ではなくなってしまうということになる。これは所がないことだろう。
今までのように勉強ができないわけだが、一人いるだけでも変わってくる。大変な毎日に変更されていくことになる。大変だが、しょうがないことだろう。
とりあえず、妹の水奈には二階で過ごしてもらうことになる。
「それじゃあ、とりあえず自分の荷物をちゃんと整理しろよ」
「わかりました。それと、私の育ったことについて少し言っておきます。私は性格がひどいと思いますが、よろしくお願いしますよ」
「了解。そんなことは気にしないでいいからな。今日から家族となるんだから」
「そうですね。私が家族と認められる存在のかは知りませんが、認めてもらえるのならよかったです」
なんか、意外とマイナス思考な気がした。何年間過ごしていないからと言うのは関係ない。今の時間を過ごせばいいだけなのだから。
「お前は家族としての存在になったんだ。甘えてもいいんだからな。俺と母を頼れよ」
「わかりました。そうします」
と言って、水奈は二階へと向かう階段を上って行った。そのうち、足音が聞こえなくなった。これから大変でもある生活が始まる。それでも、今の俺は知らない。だから、のんびりとリビングで勉強をしているだけであった。