第23話 四つ葉のクローバー。
「ああ、えー…モニカ?」
「何でしょう、殿下」
指示書の清書をしていたモニカが、顔をあげる。
驚くことにモニカは…読める字になった。いや、普通の字になった。
毎晩練習してたもんなあ…。
「その…今朝、たまたま見たんだが…レオと散歩していたな?」
「え?はい。飼育係の方に許可は取りましたが?」
「あ、そうじゃなくて…ベルト…」
「ああ、」
モニカによると、自領で軍用犬として使っている犬は引退すると大体、その犬の担当だった人がもらい受けるのだそうだ。老後はのんびりと暮らすらしいが、大型犬は足腰が弱りやすい。散歩に行きたいが、いけなくなってしまう。
「それで、ベルトでほんのちょっと持ち上げて助けてあげると、まだまだ歩けるんです。散歩は楽しいですからね。」
なるほど。
「そうか。レオは母の犬なんだ。ありがとう。」
「いえ。係の人にも使い方を教えたので、レオ君もまだまだ散歩に行けますね」
「ベルト代もかかっただろう?僕が出すよ?」
「え?」
モニカが…僕をものすごくめんどくさいものを見るような顔で見る。
「結構です」
黙って見ていたラルフが、そっと視線を外す。
*****
モニカが勤務後にイルマに刺繡を習っているらしい。
(今度は何を始めるんだろう?)
そう思ったが、イルマに聞いても教えてもらえない。
「まあ、楽しみに待っていらっしゃいませ。モニカちゃん、なかなか上手ですよ?」
と言って笑っている。
「エリク君。11月はエリーアス殿下のお誕生会とかがあって忙しくなってしまいそうだから、少し早いけど、これ!お誕生日おめでとう!」
と、次にモニカと会った時に、貸していたハンカチと一緒に、お誕生日プレゼントをもらった。結構デカい包み。
「開けてみてもいい?」
「いいよ!」
にこにこしながら横でモニカが見守る中、そっと包み紙を開ける。
***
「なんですか?殿下、それ?」
イルマの代わりに僕を起こしに来たフリッツが、僕が抱きしめて寝ていたクッションを見て、複雑そうな顔をする。
そのクッションには、象を飲み込んだ大きな蛇のような…短い足はあるけど…。
そいつがにっこり笑っている。
長めの首には、幸せの象徴の四つ葉のクローバーが巻き付いている。
「…スヴェン湖の竜、だな。」
僕がそう言うと、フリッツが涙を流して大笑いした。失礼な奴だ。
僕とモニカにしかわからないことだ。
100年、幸せに暮らすんだ。




