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秘密の先の異世界で  作者: 橘可憐


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39/80

方針変更? 2


葵はもうこの世界を警戒して能力を隠すのは止める事にした。

考えてみたら目立ちたくないとか面倒くさいと言って折角瑠紺に貰った能力を普段使いしないのも馬鹿らしい。


関わりたく無ければきっぱりと断るか姿をくらますかすれば良いし、葵には実際にそれができる。

この世界に居たくない程追い詰められるような事があったらこの世界から撤退すればいい。

ジェードの屋敷の使用人に書いて貰った地図を頼りに、すれ違う人々の事など気にせず街道を爆速で走っていた。


「何だ今の?」


「人間だったよな」


「馬でも追い付かないんじゃないか」


「魔獣かなにかだったりして…」


そう言って驚く人々の声は当然葵に届く訳も無く、途中にあった集落も無視して走っていた。

途中で街道から少し外れた場所で休憩しながら隠蔽を掛ければ良かったかとも考えたが、それだと返って危ないかと思い直した。

誰に遠慮する事無くこの異世界ではやりたいようにやると開き直った葵に今は怖いものは無かった。


「今日はこの辺にしておこう」


夜になり辺りが暗くなっても葵は体力的にまだ十分に走れたが、無理をしないと決めていたので街道から外れ人目に付かない場所に転移紋を設置し現実世界へ戻った。

そして次の日は少し早めに異世界へと転移し領都へ向けて移動を再開させる。

すると驚いた事に一時間も走らずして目的の領都であろう大きな街が見え始める。


少し小高くなった丘の葵の居る位置から見下ろすと、その大きさはトルンバの五倍以上はありそうだ。

それに石造りや木造の多層階建ての建物が密集していて人口の多さも伺える。

トルンバの町が長閑な純日本風だったのに比べ、どこか知らない外国へ来たような雑多な雰囲気が葵の探検心を擽った。


「二日もかかんなかったじゃん」


思っていた以上に早い到着に少し複雑な気分になりながら、これじゃジェードと偶然にでも会うのは難しいだろうと思っていた。


「そうだ解体しちゃわないと…」


トルンバの解体屋で解体は自分でやると大見えを切った事もあるが、素材の買取だけなら解体屋に頼らなくても商業ギルドに持ち込めばできるんじゃないかと葵は考えていた。

だから領都ラジャンバに入る前にアイテムボックスに入れた魔物をすべて解体してしまおうと決め、人目に付かないように近くにあった森の中に入り錬金術師のスキルである≪解体≫で次々と魔物を解体する。


「ロック鳥は3000万リットは確定でしょう~♡ だとしたらソウルドレイクはいくらになるのかな。ムフフ、ワイバーンも楽しみだよね~」


葵は鼻歌交じりで皮算用をしながらどんどんとテンションを上げて、魔物を解体してはアイテムボックスに収納して行く。


「おい、こんな所で何をしている?」


近づいて来る気配にも気づいていたし取り囲まれたのも知っていたが、葵は動じることなく≪解体≫を続けていた。


「見れば分かるでしょう、魔物の解体よ。用があるならちょっと待って、後少しで終わるから」


「…おまえ、俺が誰か分からないのか?」


葵の態度に明らかに怒気を孕んだ問いが投げかけられる。


「知る訳ないじゃん」


名乗りもしない偉そうな態度の男がどこの誰かなど葵にはまったく興味が無かった。


「失礼な奴だな」


「コイツどうする?」


「痛い目を見れば態度を改めるだろう」


偉そうな男の取り巻きが何やら下卑た笑みを浮かべウザい事を言い始めたが、葵は無視して≪解体≫を続ける。


「……その俺を小馬鹿にした態度を今すぐに改めないと後悔するぞ!」


偉そうな男の態度がさらに偉そうになり、大声を出したかと思うと腰に刺した剣を抜いた。


「ラスト!!」


葵はすべての魔物の≪解体≫を済ませ立ち上がると男達は驚いたのか一瞬怯む。


「あんた達こそここへ何しに来たのか知らないけど私は助ける気は無いから」


葵は警告だけしてそこから全速力で走りだした。勿論今は≪隠蔽≫スキルを使った。


この森に入ってから感じていた魔物の気配の多さは少し異常だった。

あんなに大きな街の傍だというのにトルンバの近くにあった森の比ではない多さだ。

そんな場所で大声出して騒いでいれば当然魔物が集まりだす。


アイツらが勝手に呼び寄せたんだ。葵には全く責任はないし助ける義理も無い。

まぁ、最後の葵の大声はおまけのようなものだ。

奴らの居る場所へ魔物が集まる気配を確認してから葵は溜息を吐き≪隠蔽≫を解除して森を出る。


「はぁ…。この街も碌な奴がいないのか……」


多分奴らは冒険者だろう。

そして葵を女一人だと軽く見ての行動だったのは明らかだった。

葵は人通りの多くなった街道を歩きながらこの領都もあまり期待できないなと考えていた。


ラジャンバの街は中央にある城壁のような石壁に囲まれた地区とその周りに無造作に広がった地区とがあって、城壁の中の様子は窺えなかったが街に入ってすぐの場所は雑多で賑やかだった。


石壁内の地区に入るには身分証の提示が必要らしいが、柵も仕切りも何もないこの場所はその必要も無いらしい。

葵は街に入っても街道から続く道をそのまま進んでいた。


まずは商業ギルドを探し素材の買取交渉をするのが第一の目的だ。

その後現金を手に入れてからゆっくり街を見て廻ろうと予定を立てる。

多分トルンバの商業ギルドより大きい筈だから大通りを歩いていれば嫌でも目に付く筈。

葵はそう考えて街の中をズンズンと歩く。


そして近づくにつれ迫力を増す石壁の高さに感動していると、石壁内へと入れる門の前に目的の商業ギルドの看板を見つけた。

思った通りトルンバの町にある商業ギルドの四倍はあろうかという広さの敷地内に三階建ての建物だ。

両開きの大きな入り口ドアは開け放たれていて結構な人の出入りがあった。


中に入ると窓の数が少ないのか少し薄暗い雰囲気で、現代日本の役場を思わせる途中途中に仕切りの付いた長いカウンターにずらりと椅子が並んでいるのが目に入る。

多分受付などをするのだろう。

そして個室らしき部屋も壁際に並ぶようにしてあるのは商談でもする場所だろうか。

葵は空いているカウンターに近づき職員に声を掛ける。


「すみません、魔物などの素材の買い取りってして貰えるんですか?」


「商業ギルドのご利用は初めてですね。ご説明しますのでお座りください」


トルンバの解体屋職員とは違う丁寧な対応に葵は少しホッとして言われた通りに椅子に座る。


「買取を永続的になさるのでしたら商業ギルドの会員になるのをお勧めします」


職員の説明によると買取は常時行っているが会員になるのとならないとでは基本の買取価格が変わって来るそうだ。

それに会員になれば担当者が決められ色々と融通も利くようになるらしい。


話しだけ聞いていると良い事尽くしのように思えたが、ギルド会員のランクによって年会費や手数料が変わると聞き葵は少し躊躇する。


(年会費や手数料を払ってまで買い取ってもらう程のものか? だいたい商売を考えている訳じゃないのに年会費はともかく手数料って何だよ…)


葵が思案しているとギルド職員が続ける。


「今回はどんな魔物の素材買取をお望みですか?」


「えっと、ロック鳥とソウルドレイクとワイバーンです。後できれば鉄や銅も買い取って欲しいのですが」


「!?……」


葵は表情も変えず黙り込んでしまった職員の顔を、何かマズい事でも言ったかと考え瞬きしながら見詰めた。


「絶対に会員になる事をお勧めします。優秀な職員を担当として紹介しますから是非!」


無表情から転じカウンターに身を乗り出し、葵の両手を強く握る職員の勢いに押され、葵はおもいっきり息を飲んだ。



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― 新着の感想 ―
少しはましな協力者が出来るといいですね
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