第21話 温かな光
「〝オリーヴの森〟二店舗目開店おめでとうございます!」
ティナが笑顔で言うと、ポーラが嬉しそうに「ありがとう」と答えた。
調理用や裁縫用魔道具の専門店として売り場を明るく保っていた本店とは違って、ランプの魔道具専門店である二店舗目の店内はやや暗く、売り物のランプがあちこちで温かな光を放っている。
天上に吊り下げられた照明からガラスのランプシェードが複雑な幾何学模様の光と影を落とすその下で、客からお祝いの言葉をかけられて答えるポーラの笑顔はさっぱりとして見える。
冒険者ギルドの会議室でモーリスの未来が決定したあのあと、ティナはポーラの依頼を受けてモーリスを魔力石が採掘される鉱山へと送っていった。
道中、逃げ出さないように見張っていたが、自分のいいように操れると見下して復縁を迫ったポーラに逆に完膚なきまでに叩きのめされたモーリスは抵抗する気力も体力もなくなってしまったようだ。
とても大人しく採掘現場の監督へと身柄を引き渡されていった。
それでも未練がましく「毎日手紙を書く」とか、「ポーラに愛してると伝えてくれ」とか言っていたけれど。
そういえば手紙で拉致宣言していたモーリスが言っていたポーラとの『思い出の場所』とは、どこだったのだろうか。
最悪の贈り物と一緒にポーラが高火力の魔道バーナーで燃やした手紙に書かれていた言葉を思い出したが、まあ今さら戻ってきてポーラをどうにかする力はモーリスにはもうない。
現場監督に引きずられながら飯場へと消えていったモーリスの姿を思い出していると、ポーラがティナの顔を見てぽそりと呟いた。
「まだ死んではいないみたいだよ」
「へえ」
ちゃんと居場所と行動を監視できているようで何よりだ。
ティナが微笑むと、ポーラもにっこりと笑って肩をすくめた。
「ところで、レオちゃんは来てないの?」
「入口に花が置いてあったでしょう? 午前中にあの花を持ってきてくれたよ」
「ああ! あの真っ赤で豪華なやつ?」
二人ともそれ以上は〝まだ死んでいない誰か〟については何も言わず、話題はレオが贈ったという真っ赤なバラとアンスリウムで作られたフラワースタンドに移っていく。
「花をもらって嬉しいかどうかは、まさしく関係性によるってしみじみと思ったわ」
ポーラの言葉にティナは深くうなずいた。
元夫に真っ赤なバラの花束をもらったが、今日この店の入り口に飾ってあったフラワースタンドのバラほど美しいとは思えなかった。
「てぃー! プリシラ、これにする!」
とことこと歩いてきたプリシラが、小さな手に抱えてきたのは星の形のランプだ。
大人にとってはミニランプだが、幼児であるプリシラには少し大きい。
今日はプリシラとその母親であるフェリシアとリラと一緒に、ポーラの開店祝いに来ていたのだ。
そしてプリシラには、何でも好きなランプをひとつ買ってあげると約束している。
「おほししゃま~! キラキラ!」
宝物を見つけたかのように両手で星のランプを持って、ティナへ得意げに見せてくるプリシラは今日も天使のようにかわいい。
「そのランプなら、色違いでピンク色に光るものもあるよ」
膝に両手をついてプリシラの視線まで屈んで微笑むポーラへ、プリシラが「だあれ?」と不思議そうに首を傾げた。
「このお店のオーナーさんだよ」
「おーなーしゃん?」
「このお店を作った人だよ。プリたんの選んだお星さまをここに連れてきてくれた人」
ティナがそう説明すると、プリシラがパッと顔を輝かせてポーラを見た。
「おーなーしゃん! おみせキラキラ、きれいね! おひめしゃまのおへやみたい!」
もっちりした頬をリンゴみたいに真っ赤にして言うプリシラに、ポーラがふっと息をのんで笑った。
「……っそうでしょう、ランプ綺麗だよね。夢みたいにキラキラしてるでしょう? オーナーさんはね、そういうキラキラを、みんなに見てもらいたくて、このお店を作ったんだよ」
夢を叶えるために頑張ったんだよ。
そう言ってプリシラの頬と星形のランプを愛おしそうに見るポーラの笑顔が、この店のどんなランプの輝きよりも美しいとティナは思った。
end.
ポーラ良かったね!と思った方は、★をキラキラと輝かせてお祝いしてくださると嬉しいです!




