表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/64

第二部五章『ゲームエンド』6-3


「で、他に質問があれば受け付けてやるけど?」


 俺が問うと、五十嵐はわなわなと震えて、言葉を紡ぎ出した。


「……ロッカーは、開けたのですか?」


 そう、五十嵐は鋭い視線で俺に問うた。

 何が入っているのかは知らないが、五十嵐にとってそれが最優先事項なのだろう。


「まだ開けてねぇな。その前に、することがあったからよ」

「それは……?」

「弔い合戦だ。ゾンビが弔いなんて妙な話だけどな」

「――……ッ!」


 俺が言うと、後ろの黒服が素早く五十嵐の前に立った。

 二人の黒服が、隙無くじっと俺を見つめる。


【一斗……!? あんた、どういうつもりなの?】


 だって、なんかムカつくだろ。

 お前は殺されて、その犯人は目の前で生きているんだ。

 そんなの、平然と許されていいはずが無い。


【そんなことしても、私が人間として生き返るわけじゃないでしょ!? ここに留まったのは、しっかりゲームが終わったことを示す為って言っていたはずよ!】


 まだロッカーは開けてねぇだろ。だから、ゲーム中だ。


【そうかもしれないけど! あんたが無意味に危険に晒されるだけじゃない! それに、私が死んだことに、一斗は無関係でしょ!?】


 ああ。確かに、その通りだな。

 美恋が殺されたことは、俺にとって関係の無いことだ。

 俺も元は普通の人間。感性だって、世間一般からそんなに離れていないだろう。

 何かの事件で他人が死んだニュースを見ても、翌日にはすっかり忘れて生活している。

 それと同じことかもしれない。

 だから、これが偽善で自己満足なのも理解してるよ。


【だったら……!】


 でもな。

 もう、俺にとって美恋は他人じゃねぇんだよ。

 仲間が殺されて、その仇が目の前にいるのに、無関心で居られるわけねぇだろ!!!!

 ムカつくやつをぶん殴る! ただそれだけだッ!


【い、一斗……】


 止めてくれるなよ、美恋。


「二対一でいい。次は油断しねぇからな……!」


 俺が言うと、二人の黒服が刀を抜いて俺の表情を窺う。


「では、お相手しましょう」

「火花様、下がっていてください」

「で、でも――!?」

「横槍は無用。ここは、我々の好きなようにさせてください」

「死して尚、四居様が火花様に危害を加えるようであれば、黙って見てはいられませんから」

「…………!」


 向こうも話はまとまったみたいだった。

 俺は一瞬、後方の加子と白華を見た。緊張した面持ちで黙って俺を見つめている。安全圏まで下がっていろとアイコンタクトを送ると、二人は静かに頷いた。


「一斗くん、無理しないで下さいね」

「そうだよ、一斗。あと、やり過ぎないようにね」

「おう、任せろ」


 そう言って、一歩前に出た俺は拳を構えた。

 黒服たちも抜刀した刀を、上段と下段でそれぞれ構える。


【一斗……】


 一触即発。ぴりぴりとした空気が周囲を支配する。

 さてと、やってやるか……!


「美恋を殺した罪、償わせてやるよ!!!!」

「来い! 化け物がッ!!!!」


 振り下ろされる刀。薙がれる刀身。そして、鉛の拳。

 それが交わろうとした瞬間だった。

 人影が俺たちの間に割って入ったのは。


「やめましょう。無用な血を流すべきではないです」


 と、火花がその身も顧みず俺と黒服の間に立った。

 ピタリと止まる刀と拳。

 そして、黒服が言葉を続けた。


「どうしても、お止めになるのですね?」

「はい、そうです。私は負けました。もう、ゲームは終わったのですよ」

「本当に、火花様はそれでよろしいのですか……?」


 困惑した黒服が問うと、五十嵐はそっと言葉を続ける。


「私と美恋先輩の関係は歪ですけど、その関係の正確なところは私たちにしか理解できませんよ。それとも、私の言うことが聞けませんか?」

「……御意に」


 黙って納刀する黒服。それを見て、渋々といった感じでもう一人の黒服も刀を収めるのだった。

 でもなぁ……


「おい、勝手なことをするな。こっちは上辺だけの謝罪なんて求めてねぇぞ?」

「いいえ、あなたが憤るのも筋違いです」

「お前、何言って……」

「美恋先輩は事故死です。我々が殺したわけではありません」

「は……?」


 な、なんだって……!? おい美恋、本当なのか?


【それは分からないわね。私の記憶からは無くなっているもの】


 こいつ、この場を収める為に、適当な話をでっち上げようとしているのか?

 それとも、本当に美恋は事故死だったのか……

 クソッ。美恋の記憶が無いんじゃ、判断のしようもねぇな。


「その話、根拠はあるのか?」

「そうですね…… ではまず、美恋先輩の死んだ日のことを話しましょうか」


 そうして、五十嵐は思い出すように言葉を紡ぎ続ける。


「そもそも美恋先輩が死んだあの場所で、どのようなデスゲームが行われていたか、あなたは知っていますよね? そのギミックも」

「ああ、嫌な記憶だったから、よく覚えてるよ。ネガティビティバイアスだっけ? 嫌なこと程、人の記憶に残りやすいらしいな。あそこでは“宝探しゲーム”が行われ、金の入ったアタッシュケースを不用意に動かすと爆発する仕掛けになっていた」


 お陰様で賞金はすべて吹っ飛んだ。そして、俺は美恋と出会った。

 忘れようにも忘れられない命運のデスゲームだ。


「その日、美恋先輩は“宝探しゲーム”の担当ディーラーをしていました。ですが何を思ったのか、あの爆発するアタッシュケース……、あれの火薬量を倍にする悪戯をしていたところ、美恋先輩は暴発に巻き込まれて死んでしまいました」

「いやまさか……」


 さすがに、そんなわけねぇだろ。なあ、美恋?


【……】


 おい、ホントなのか美恋? そんなバカなことしてやがったのか? 違うよな? 頼むから違うと言ってくれよ。俺が今までやってきたことを茶番にしないでくれ。


【……】


 何か言えよ。


【いや、正確には覚えていないのだけれど……、仮にそんなことをしていても私なら不思議じゃないわねって思って】


 ……いや、まだ可能性はあるはずだ。

 五十嵐が口から出まかせを言っている可能性が……!


「そ、そんなことで、俺が騙されるかよ! 美恋に何か恨みがあって殺したんじゃねぇのか!?」

「恨み、ですか…… 言い得て妙ですね。美恋先輩に恨みはたくさんあります」

「ほら! ほらな!」

「でも、よく考えてみてもらいたいです。美恋先輩は、あんな性格なんですよ? 何の恨みも無く、一緒の職場で生活出来ると思います?」

「え。あー、それは……、えーっと、うーん……?」

「ですよね?」

「そうだな」

【言いくるめられてるじゃない!?】


 それはお前が悪いだろ。俺だってフォローしたかったわ。

 でも、恨み辛みがあったことは五十嵐も認めているわけだし、やっぱり殺した動機にはなり得るんじゃないかと――


「それでも、私と美恋先輩は仲が良かった方だと思います」

「何だって?」

「はぁ…… もう諦めました。そのロッカー、開けてみてください」


 美恋のものと思わしきロッカーを指さす五十嵐。

 どうしたものかと思っていると、【そう言ってるんだし、早く開けてみなさいよ】と美恋が急かしてくる。


 俺は加子と白華を一瞥してから、ロッカーについた機械に虹彩、指紋、パスワードをスキャンした。

 すると、


「これは……!? ……ごちゃごちゃしてて汚ねぇな。ったく、整理しとけよな」

【う、うっさいわね!】


 ロッカー内は何かの資料や書類で溢れかえっていた。

 一見しただけでは、どれが重要な機密文書(?)なのか判断がつかない。俺はどれを見ればいいのん?


「はぁ…… まったく、美恋先輩は……」

「なあ、どれ見ればいいんだよ?」

「どこかに写真があるはずです。……でも、あんまりジロジロは見ないでほしいです」

「どういう意味だよ……」


 まあいいや。おい美恋、心当たりあるか?


【写真……? ええっと、書類意外だと、セパレーターの左側かしら? 記憶が薄いから分からないけど】


 ひだり、左…… これか?

 俺はそれっぽいサイズの紙束を発見して、それを手に取った。


「一斗くん、私にも見せてください」

「あ、私も気になるー」


 後ろからひょっこりと顔を覗かせてきた二人が、俺の手元を覗いてくる。

 ちょ、顔近けぇな。可愛いからやめろ。

 などと想いながら、俺は手に取った写真に視線を移す。


「な……ッ!?」

「おお!」

「ええー……」


 三者三様のリアクションがどよめいた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ