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六章『Re:決着』6-1

 ――あの高レートデスゲームが終わってから、二週間が経過した。


 ゾンビになっても日常生活はたいして変わらない。

 相も変わらず大学へ通い、クソ面倒な講義を受け、最低限の出席日数と点数を取りに行く日々だ。


 変わったといえば、せいぜい出かける前にファブリーズをしゅっしゅする手間が増えたくらいか。

 特に暑い日は匂いやすいから、欠かさず携帯するようになった。そのせいで出費がかさんでいる次第だ。

 デスゲームでは役に立っても、日常生活では役に立たないゾンビの身体なのでしたとさ。


 でもまあ、ゾンビは関係なく変化した日常もある。

 今は大学からの帰り。俺は近くの駅で時間を潰していた。


 何を隠そう、俺は今からデートに行くのである。デートと言っていいのかは分からないが、でもまぁそんな感じなのである。うん。

 まあでも、まだ待ち合わせの時間よりはちょっと早いか。

 さてはて。どこで時間を潰したものか……


「おーい、一斗いちとー!」


 特徴的な茶髪と赤メッシュを揺らして駆け寄ってくる制服姿の女の子。白華はっかだ。


「おう。早かったな」

「えへへ。一斗に会いたくて急いで来ちゃった」

「お、おう」


 人目も憚らず、ぎゅっと俺の片腕に抱き着く白華。

 最近ずっとこの調子なのだが、やっぱり慣れないものだな。俺がモテてるのが異常。

 関係性の変化で、一番の変化はこれかもしれない。まあ、他にもあるわけだが。それよりなにより――


「でも、三限終わりの俺と同じ時間で来るのは早すぎるだろ。高校生はきっちり六限目まであるだろうし」

「えー、そんな事どうでもいいじゃん」

「白華。お前、またサボったのか」

「あははは」


 白華は誤魔化すように笑う。この不良ギャルめ。あとで痛い目見ろ。俺が乗り越えた苦痛を、他人が横道からスルーしてるのを見ると腹立たしい限りだな。お前も苦しめ。

 と、老害のようなことを考えながらも、肩を並べて一緒に駅前を歩く。


 まあ、別に白華のことが嫌いなわけじゃないからな。それに、俺に会いたくてサボったのなら責めにくいし、めっちゃすこだし。


「で、今日はどこ行くんだ?」

「バッティングセンター」

「またかよ…… 偶には別のところがいいんだが」

「えー、いいじゃん」


 甘えたような声。この声で俺は毎度毎度篭絡されているわけだから女の子は恐ろしい。

 いや、行先はあんまり女の子っぽくないんだけどね。


「今日はカフェとかにしよう。最近はいっぱい運動したからカロリーを摂取しないといけないだろ」

「女の子を太らせようとするなんて…… デブになったら、一斗が責任取ってよね」


 ぷくーっと頬を膨らませて俺を見やる白華。お前は大丈夫だろ。適切な場所に脂肪がつくみたいだから。

 それにほら。俺は死亡してるから責任取れないし。脂肪だけに。


「まあ、あれだ。あいつだって来るんだから、毎日同じ場所ってのもな」

「えー、別に反対はしないと思うけどー?」

「そうかもしれんが、あいつだっていっつも観戦ばっかりだろ?」

「それは……、確かにそうかも……」


 でもまあ、あいつは好きで観戦しているわけなのだが。主に白華の身体を。

 別の意味で楽しんでいるのは間違いない。しかし、単に俺が飽きて来たので、今日はバッティングセンター以外がいいのである。


「そうですねー。私としても、今日は女子っぽい場所がいいかもです」


 ふと、聞き慣れた声が聞こえてきた。


 声のした方に視線を向けると、そこには白華と異なる制服を纏った女の子が。

 セミロングの赤毛に、優しそうな笑みを携えた女子高生。

 身近な存在だが、見慣れない姿の彼女。

 そんな彼女が小さく手を振って、再び俺たちに声を掛けてきた。


「やっほー、一斗くん! 白華ちゃん!」

 いつもの明るい声が俺の鼓膜を震わせた。以前と違うのは聞こえ方くらいだ。



 ――さて、そろそろ空白の記憶を埋めないといけないのだろう。

 あのデスゲームの続きを。今日に至るまでの時間を。


   ◇


【そうですか。……では、返事をしますね】


 引き金に掛かった人差し指が緊張で震える。

 その緊張は、俺のものなのか、はたまた加子かこのものなのか。それは分からない。

 だけど、どちらにせよ返事はくれるんだ。なら、どうでもいいか。

 目を瞑り、その瞬間を待つ。


 ――やがて、銃声が響き渡った。


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